VFはストライドを伸ばし、ふくらはぎの疲労を軽減する【ブリガムヤング大学の研究より】
VFがすごいシューズであるというのは疑いようがない事実であるが、それは実際のレースという現場でも、研究というアカデミックな場においても、どちらでも数字というデータが実証している。
レースでの数字に関しては先日のnoteで書いたので省略するとして、私なりに感じたVFを履いて走った時の感覚と論文で報告されている実験結果をもとに考察してみたい。
ストライドが伸び、ふくらはぎが疲れにくくなる
VFを履くことで実際に走りの何が変わるのだろうか。
① ストライドが伸びる
私はVF4%を1番最初に履いた時にすぐに「ストライドが伸びている」と感じた。もちろんVFネクスト%を最初に履いたときもそう感じた。
VFを履くことで「ストライドが伸びる」ことを、「足が長くなる」と表現をする人もいるぐらいである。
Twitterでアンケートをとったところ、379票中の66%が「ストライドの伸び」を実感している。ストライドが伸びたというよりかはピッチが速くなったという人もいるようだ。
② ふくらはぎ(下腿三頭筋)の疲労を軽減する
私は今まで、薄底のシューズで走りこんだり、スピードを出したりすると、必ずふくらはぎが疲労していた。しかし、同じような強度の練習をVFネクスト%でやってみたところ、ふくらはぎの疲労感がかなり軽減されていた。
アシックスのグライドライドも同じようにふくらはぎが疲れにくく感じるが、こちらはVFほどのスピードを出すシューズではないとはいえ、どちらのシューズも足首の屈曲角度を狭くする効果がある。
以下の動画(1994年日本選手権男子5000m)で3位に入った平塚潤先生と先日お話しする機会があったのでVFについて話をうかがった。
(こんな高水準な選手権の5000mはそうそうない)
1位:花田勝彦 13分34秒35
2位:高岡寿成 13分35秒48
3位:平塚潤 13分37秒35
4位:高尾憲司 13分38秒04
5位:早田俊幸 13分42秒07
6位:田尻裕一 13分42秒92
そこで平塚先生はやはり「ストライドが伸びる」と話していた。そして、長くトップレベルで走っていた彼は、「こんなシューズは今まで履いたことがなかった」とも付け加えた。
平塚先生は52歳のマラソン世界最高記録を目指して3月の東京マラソンに出場する。彼は長い間いろんなシューズを履いてきている人物であり、さらにはトップレベルでやってきた日本代表経験のある選手である。そのコメントはとても貴重である。
平塚先生も私も、このシューズを履くと「感覚のズレ」を感じている。
「これぐらいでいったら、これぐらいのタイムだろう」
そして、結果はだいたい想定していたよりも速いタイムが出るのである。
アメリカ・ブリガムヤング大の研究結果
私や平塚先生の感覚は果たして他のランナーにも当てはまるのだろうか?
VF4%の“4%”の数字が名付けられたのは、この製品のプロトをコロラド大のWouter Hoogkamer、Rodger Kramらが行った実験の結果に基づいている。この実験はナイキが資金提供し、2012年ロンドンオリンピック全米代表のShalaya Kippなどの選手が協力し、アディダスのアディオス、ナイキのストリークに対してVFプロトは平均で4%RE向上、という有名な実験である(研究論文はこちら)。
このコロラド大の論文は2017年のものであるが、2019年には同じくアメリカのブリガムヤング大(以下BYU)がVFの実験を行った(どちらの大学も全米学生長距離強豪校である)。
米国陸連の長距離種目の生物学分析を担当し、BYUの運動科学の教授でもあるイアン・ハンターが先導して行ったこの実験では、リオオリンピック男子マラソン6位のジャレード・ウォード(BYU出身)も参加した(研究論文はこちら)。
コロラド大の研究ではVFプロトを使用したのに対して、こちらの研究ではVF4%を使用。比較対象のシューズはコロラド大の研究と同じくアディオスとストリークが使用された。
被験者は19人、平均身長は180 cm、平均体重は66.5 kg。過去1年間で、19人の選手の10000mの記録は32分以内(ある一定以上のレベルにある)。被験者は、トレッドミルで3:45/kmペースで3足それぞれで走って酸素摂取量テストを行った。
VF4%を履いた時は、アディオスとストリークを履いた時と比較して、酸素摂取量がそれぞれ2.8%と1.9%減少した。
この代謝実験に加えて、バイオメカニクス的な視点からも実験を行なっている。ここでは東海大にも導入されて話題となった「フォースプレートテクノロジー」を搭載したトレッドミルと、3次元モーションキャプチャー(3次元動作解析)を使用して、3足をそれぞれ履いて実験を行なった。
3足間のパワー、接地時間、腰と膝の動きの振幅に違いはなかった。
VF4%はストライドが他の2足と比較して優位に伸び、上下動の幅と足首の屈曲角度にも差が見られた。これは、VF4%を履いて走ると、同じピッチでも長い滞空時間をもたらすことを示している。
このストライドの伸びは、被験者の努力度に関係するのではなく、VF4%を履いた時の足首の屈曲角度の減少と、シューズの反発性の高さによって引き起こされている。
VF4%を履くと、身長が増加し、ストライドが4%増加するが、ふくらはぎ(下腿三頭筋)の活動量は減少する。
また、VFの研究についてはコロラド大やブリガムヤング大だけでなく、日本の大学でも行われている。
こちらのNHKの記事の中では、順天堂大学でのVFの研究結果について書かれている。柳谷登志雄先任准教授は、VFが従来の靴よりもふくらはぎの活動量を5%ほど抑えられるという傾向を導き出した。
柳谷登志雄先任准教授
「カーボンの復元力を使うことで、筋肉がむだな力を発揮する必要がなくなるのかもしれない。(ふくらはぎの)活動が減るということは省エネとなり、力を出していないので、エネルギーが温存されてレースの後半に力を残しておける、取っておけるということにつながってくると思う」
このようなVFの研究は、フォースプレートが取り入れられた東海大でも行われている。今後その研究結果が公表されることを楽しみに待ちたい。
サポートをいただける方の存在はとても大きく、それがモチベーションになるので、もっと良い記事を書こうとポジティブになります。