シンガポールの仕入れ事情

果たして海外でどういうレベルの魚が使えるのか?
これは職人にとっては非常に大事な事。

実はシンガポールは銀座の名店と同じかそれ以上のレベルの状態で魚が手に入る。
北海道と九州の海産物にかけては豊洲の市場より確実に良い状態。

輸送時間は丸一日。
例えば、月曜日朝に豊洲から送った荷物が
火曜日の午前中にシンガポール届く。

今のところ豊洲→シンガポール便は週4回(今現在は2回に)
到着日が火、水、金、土曜日。

福岡と北海道からの便が2回(現在福岡は1回に)
到着が火、金曜日。

豊洲に集まる北海道や九州の海産物、Air便もあるが
多くが陸送→フェリー→陸送で1日ちょいかかる。

つまり、北海道や九州から豊洲に送る時間よりもシンガポールに送る時間の方が短い。
そして市場の人たちも、海外に出した方が値段がつきやすいためにそっちを優先したがるようになってきている。

さて。
仕入れ方法は大きく分けて3種類。

1 市場の問屋さん→日通さんなどの輸出業者→シンガポールのサプライヤー
2 市場の問屋さん→輸出業者→現地販売業者または輸出業者が兼業
3 日本の漁師さんから直接取引→輸出業者→輸出業者がそのまま販売

最近は市場で魚を集めてそれを輸出してくれる代行業者も増えてきたため、
良い意味での競争が生まれクオリティが上がってきた。

以前はボッタくりと分かっていても業者自体が少なかったので競合がおきず
そこに頼るしか無い状況だった。
それは新規開拓のルートを作るのが大変という証明でもある。


日本の市場の問屋さんというのはIT的にものすごく遅れていて、
いまだにFAXを使って注文を出さなければならないという時代に取り残されている問屋さんが意外に多い。築地から豊洲に移転する際にかなり変わったのだが、変わることを拒否する人は多い。

実際にはLineだったりFBだったりを上手に使う問屋さんが生き残って売り上げを上げている。


ただ、板前がいい魚を確保するのには
いまだに市場に行き、魚を見て、現金で払う。
これが最強である。

シンガポールにいる身では到底不可能なので、どうするか。

問屋に入る前、漁師さんと仲良くなるしかないのだ。
とはいえ、地方市場の漁協を通さないと魚は買えない。
つまり、地方の市場に行き直接ルートを作るのが至上命題となる。
作れたとしても、一つの港だけではリスキーすぎる。
海は荒れるものだし、魚が取れない時もある。
なので、日本全国の港に繋がりを作り、それを一手に集めて輸出できるルートが必要になる。

現在輸出可能な飛行場は
成田、新千歳(沖縄トランジット)、福岡、少々弱いが関空。
なので、日本全国のアイテムを最寄の空港に集めることになる。


シンガポール鮨来村は非常に運の良いことにこのルート作りに成功し、
他店との違いを明らかにした強みで現在も生き残れている。

日本全国の漁師さん、仲買さん、輸送業者さん。
皆さんの協力のおかげで我々鮨板前はようやく仕事ができる。

本当にありがたいことだ。

これから来る次の時代に備えて柔軟な脳味噌を維持したい。

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