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TAM約2,500億円の自転車市場、6年半で30億円以上の売上を作ったエイチーム 【cyma】のこれまでと急成長の理由を緩やかに考えてみた

めちゃくちゃ久しぶりにnoteに書けそうなネタがあったので、タイトルとサムネだけ作って下書きに眠らせてたんですが、いろんなことがひと段落したので、そろそろ重い腰を上げて書いて行こうと思います。

(下書きに入れて気が向いたときに書くってのを繰り返してたらタイミングよくGW直前に書き終わったのでGWに合わせて公開しました)

今日は、珍しく企業の事例をとりあげてみようと思います。このために調べたというよりかは、投資先の調達資料を一緒に作ってるときにたまたま調べたらめちゃくちゃ面白かったから、せっかくなら書いてみるかという感じです。

個人的にはめちゃくちゃ灯台下暗しで、cymaを運営しているエイチームという会社は僕が新卒採用で唯一一般的な就活をして内定をいただいていた会社でした。(これとは対照的な感じで内定をいただいたのが弊社)

cymaとは

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多分に仮説を含むので、「方向性的には、そんな感じかー」くらいに見ていただければと思います。

ローンチは、2013年12月で社内の新規事業コンテスト(A+)発の事業になります。実は、この他にも結婚式場検索サイトの「Hanayume」もA+発だったりします。

おそらくですが当時、自転車をオンラインで買えるサービスはある程度限られていて、あったとしても輸送中のねじ緩みなどの危険性を考え分解されて届く形式が多かったようです。そのためターゲットはある程度知識があり、分解組み立ての基本行動が存在するスポーツ系が中心だったんじゃないかと。

その中においてcyamは、ターゲットを変え、自転車に関するリテラシーが高くなく今までECで自転車を買うことのなかった層に狙いを定めます。(いわゆるママチャリなどと呼ばれるシティサイクル。おそらく既存の自転車屋さんの場合数が多くない上に、買って持って帰ることも難しい、しかも、子供の自転車ほど真剣に選ばないので、自転車屋さんにわざわざ行くことはめんどくさいって感じだったのかなと....しかも品揃えもたいして良くないので、結局見れずに買うってこともあったんじゃないかなと....)

で、そのターゲットに対してエイチームは、自社で自転車整備士さんを採用し、発送前にしっかり点検した自転車を完成品の状態で送り出して、お客さんの手元に届いたときにすぐ乗れる状態の自転車を届けるサービスを立ち上げたというわけです。

また、ただ自転車をを届けるだけでなく、その他にもやらなければならない防犯登録も済ませて送るなどECで買うことで発生しかねなかった面倒も併せて解決をしました(ちなみに、僕もcyamで折り畳み自転車を買ったのですが、愛知県で防犯登録されたものが届きました)

そもそも、なぜcymaを調べたのか

そもそも、なぜcymaを調べていたのかというと、cyamに興味があって調べたわけではなくTAMが小さくても大きく伸びた事業ってないのか?ってのが始まりでした。

割と起業家さんとVCの面談でちょいちょきく話な気がするんですが「いやー、市場規模小さいっすね」的なあれ。

つまり、市場が小さいんで、普通にシェアが取れるとかそれくらいだとスケールが物足りないのですっていうことなんだと思ってるんですが、まぁこれにはたぶんいろいろな反論があって、例えばニッチトップになればとかプレイヤーが少なければとかあると思うんですけど、それってもう、古い企業くらいじゃないとなくてゴリゴリの工業技術系メインな雰囲気あるじゃないですかっていう、しかも、そこに至るまでめちゃくちゃ大変で、時間もかかるじゃないですか、それVCのモデルに合わんのですっていうことなのかなと思うんですが、本当にそうなんか?ほかにないのか?もしあるならなんで小さいTAMで成功したんだ?ってのを説明する必要が出てきまして。

それで、TAM小さい市場はどこだ?すごい伸びてる(IPOできそうな規模感まで)イメージあるけどTAM小さそうなサービスってなんだ?ってので、市場規模一覧とかをわーっと眺めてたら自転車市場が思いのほか小さく、しかも、自転車市場なら、新卒で内定をくださっていたcymaがあるじゃないかと。しかも、僕が内定をもらってた頃でそれなりに伸びてたよな、今どうなんだ?ってことで調べてみたら相変わらずすごかったというわけです。

TAMの小さな自転車市場

実は、自転車の小売価格ベースでの市場規模って調べた限り出てなくて、卸売ベースでの市場規模が見つかったので、自転車大手、株式会社あさひの原価率を参考に小売の市場規模を仮説的に算定しました。

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ちょっと画像が見にくかったらすみません。2019年で2,589億円の市場です。しかも、めちゃいい(参考として)のは、市場トレンドが下降トレンドなんですよね。多分この1-2年はコロナ影響で持ち直してると思うんですが。

TAMが小さいうえに市場規模が下降トレンドになってる市場とか、それだけ聞いたらVCはたぶん嫌うんだろうと思うんですよ....(お前一応VCだろって話はさておき)

ケースを知るって意味においてはすごくいいケースだと思うんですよね。

それでも急成長したcyma

「TAMが小さくて、しかも下降トレンドなのに急成長したのはすごいけど、上場企業じゃん。引っ越し侍で稼いでるじゃん。2016にはヴァルキリーコネクトも出るじゃん。金めっちゃかけたんでしょ?」って声がどっかからしてきそうだなってことで、ローンチから今に至るまでのセグメント損益ベースでの赤字額たちをグラフ化して、さらに各タイミングでどんな投資を行っていたのか「ターゲット検証及び拡大」「提供価値」「認知拡大」「スケール/オペレーション」の4つに分けてまとめてみました。

ちなみに、そんな情報どこからってのについては、会社公式の各種決算資料、プレスリリースに加え、cymaの立ち上げチームが当時運用していたブログを発見したので、その情報をもとに記載してるのでほぼほぼ間違いない情報だと思います。

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四半期赤字がFY14Q2~FY20Q2までなので、そこまでのセグメント損失をすべて足し合わせると、10億1500万円でした。もちろん会社が上場企業でキャッシュがあったからこそスムーズに行ったと思うんですが、とはいえ、そんな鬼のようにお金を突っ込みまくったかと言えば、そこまででもないなというのが所感でした。

もし、これが普通のスタートアップだったとして、TAM小さいし下降トレンドなので(それ以外にも設備投資の重さとか敬遠される理由はいろいろあるように思う)VCから調達することは難易度が高かったんじゃないかと思うのですが、なんのビジネスか伏せれば成長的には調達もあり得るものだっただろうと思ったりします。

投資のポイントとそれぞれに対して施策を打った時期は上にまとめた通りですが、もう少し具体的に何をしたかも別途まとめてるので、もしほしい方がいればTwitterとかでお声がけください。

まとめていって思ったこととしては、cyamについていえば、上場企業だから特別な戦い方してるかと言えば、ほぼほぼそんなことはないなという感じで、初期は普通に自転車をECで売ることに対して卸さんからNG食らったりしてるし、TV CMをめちゃくちゃ早く打ってるか(広告宣伝費鬼のようにかけてるか)と言えば、初のTV CMも四半期売上2億超えてからだし、確かに、既存事業の顧客情報生かした商品開発をしたタイミングもあるんですけど、それがリリースされてるのもTV CMと同じようなタイミングなんですよね。

で、顧客層を急拡大したかといえば、途中から確かに既存プレイヤーと提携してスポーツサイクルに参入するんですが、それもFY18の話だったりします。

おそらく大きくスタートアップと違ったのは採用の部分なんじゃないかと思います。よく先輩のVCさんに話を聞くと組織を作れるかどうかがかなり大きいといわれるんですが、cymaの場合は、組織は、エイチームの人たちなので、採用をめちゃくちゃ頑張らないといけないってことはなかったってとこかなと思います。

とはいえ、TAMが小さく下降していく中でもここまで成長したってのはやっぱすごくて、TAMが小さい中でもしっかり成長していくには何が大事だったのか勝手にかんがえてみました。

1.既存プレイヤーの商流を破壊しかねない売り方であること

2.技術や知見が必要で特殊な人材が必要なため簡単に参入できない

1は、既存プレイヤーの参入を阻止する壁になり、2は新規の参入を阻止する壁になるかなと思います。

それぞれ説明すると

1に関しては、既存プレイヤーとして意識するのは、もちろんサイクルベースあさひを運営する株式会社あさひになるわけですが、あさひは路面店を持っているので、cyamの完コピを出すと路面店の売上を奪うことになります。

他の業種でもあることですが、大きな売上を占める既存商流を敵に回す、殺す可能性のある売り方への参入はやはり少なくとも意思決定が遅れたりしてるケースがあるように感じます。。(特に自社チャネルではないチャネルで大きな売り上げを上げてるところほど、なかなか新しい売り方ができない印象があります。)

ちなみにcyam参入の9ヶ月程度前にあさひは、ネット注文・店舗受け取りは開始してます。

2に関しては、もちろん他社だって同じことをやればできたじゃんって話は十二分にあると思います。自転車整備士さんを採用して、自転車を整備保管するスペースを確保すればいいので、それ自体そこまで難易度の高いことかと言われればそうでもないような感じがします。(難度が高い国家資格者の確保ではないですし、場所の確保自体も極論お金があればなんとかなってしまう)

ただ、ここは、市場が小さいってのがむしろ良かったんじゃないかと思います。市場が大きく魅力的であれば、ある程度重ための投資であったとしても回収見込みが立ちやすいので、多くの企業が参入したかもしれませんが、自転車市場の場合、適度に専門性が高く、それなりに設備投資も必要になる、一方で、市場はそこまで大きくないので、多く参入したとしても複数社が勝ち残りそうな市場ではなさそう。つまり、投資しにくい。同じ金額つぎ込むなら別のいい市場があるんじゃないか?と、なり得たのではないかと思います。

「商材自体(自転車)のニーズは証明されていて、新しい売り方に取り組むことで明らかに既存よりも高い提供価値をお客さんに提供できる」ここまでは、ほぼ間違いなさそうだけど実現するためのHowにやや難易度の高さがあり、その実現にかけたコストを回収することを考えたときにリスクが高い(投資重め、市場小さい、複数社勝てる市場ではない)ので、普通であればやらない、だからこそ先に入ってやりきったcymaがここまで成長できたんじゃなかろうかと思います。

今回はTAMが小さくても成長する事業ってことでcymaについて書いてみました。また気が向いたら、何か書こうと思います。

今回はこれにて。。。。

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