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【weekly post】医薬品業界の傾向と課題をざっくり把握

久々にヘルスケア・メディカル領域に戻ってきました。

というのも、面白いデータ集をたまたまTwitterのTLで見つけまして、それを読んでみようといった感じです。

面白いデータ集というのが、日本製薬工業協会が出しているDATA BOOKでして、国内外の制約に関わるデータがまとめられて毎年出されている資料になります。ネット上で無料で見れますので、よろしければご覧ください。(サイト上だとバックナンバーが見当たらないのですが、「製薬協 データブック 20xx」でググると過去分も出てきます。)

ってわけで今回は、このDATA BOOKをもとに詳しくというよりかは、ざっくりと傾向や推移を見ることでなんとなく浮かび上がってくる課題みたいなものを見ていければと思います。(完全に初心者of初心者向けなので、その道の方は得るものが多分ないです....)

各パートごとにデータをグラフに落としたものを添付していますが、おそらく小さすぎて見えないと思うので、タップして拡大してご覧ください

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それでは、本題へ

そもそも製薬協とは.....

今回、このデータブックのめちゃくちゃお世話になるので、初めに製薬協とはなんぞやという話からできればと思います。

簡単に書いてしまえば、製薬企業によって作られた業界団体となってしまうんですが、研究開発志向型の製薬企業が参加している団体です

2021年4月1日現在で74社が加盟しており、

有名どころでは(適当に抜粋)

・アステラス製薬

・アストラゼネカ

・エーザイ(最近認知症で話題の)

・グラクソスミスクライン(個人的に点鼻薬でお世話になってます.....)

・第一三共

・ファイザー

・ブリストル・マイヤーズ・スクイブ

などなどが参加しています

取り組んでいる内容としては、

製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携など多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

とされています。

今回使うデータブックの他にも日本の薬事行政に関する取りまとめや産業理解につながるような資料等を公開しています。

国内医薬品市場推移

製薬協2021データブック

2021年なのですが、データは最新版が2017年になっています。

もう数年経って最新版が出た時にCovid-19の影響で市場がどう変化しているのかはとても気になるところです。

ここ数年は1.1兆円前後での推移となっています。

薬価は2年に1度改定があり上記のデータの頃は医療費ベースで-1.22%程度(薬剤費ベースでは-5%台後半)の改定率でした。また、この辺りから後発品への切り替えが進まない先発品の引き下げが始まっているようです。

2018年度の薬価制度の抜本改革で新薬に関する加算制度の見直しも起こり、その他にも2年に1回だった改定の間の年についても薬価改定を行うなど薬価の引き下げ圧力が高まっており、今後も日本のマーケットはマイナス成長になるのではとの予想も立っているようです。

医薬品企業の海外売上比率を国際比較

上記のような薬価改定の動きもあり国内だけでなく海外の市場でも売り上げを上げれるよう、海外比率の引き上げを目指す企業が増えており、国内の主要企業でも一部2015年と比べて生かしている企業はあるものの、7~20ポイント程度海外比率が上昇しています。

特に顕著に上がっている武田はアイルランドのシャイアー買収によって海外比率が急激に伸びています。

一方、2018年から2019年で大きく比率を下げている田辺三菱ですが、2017年にアメリカで出したALS治療薬が新規処方待機患者を一巡したことで減収したためでした。

製薬協2021データブック

ちなみに日本の製薬の他に欧米の主要製薬についても海外比率をグラフ化しました

アメリカはやはり市場が大きいこともあり、海外比率が全体的に高くない感じです。

医薬品市場の地域別シェアでは、若干古いですが2016年時点で北米が全体の49.0%を占めており、海外にわざわざ出ていかなくても大きなマーケットがあることがわかります。

一方、日本は8.3%、アフリカ・アジア・オーストラリアで16.4%、ヨーロッパで21.5%となっており遅かれ早かれ日欧は海外に出ていかなければという感じです。

この辺は、個別に欧米の製薬企業の置かれてる市場や課題を別途探ってみても面白そうだなと思います。

製薬協2021データブック

製薬協2021データブック

付加価値率推移と産業別比較(国内)

さて、ちょっと見る視点を変えて、業界別の付加価値率の推移を見てみましょう

製薬協2021データブック

見やすいようにと思って、目立つ赤にしてみたんですが思いのほか見えにくくなってしまっている気がするので、拡大してみてみてください。(場合によっては、PDFを共有しますので、TwitterにDMでもください。)

ある程度、比率は低下しているだろうと思っていたのですが、他の産業と比べてかなり大きく落ちていたのでここまでとは思いませんでした。

上記のグラフは、全産業のデータを入れたわけではなく、医薬以外は無作為に選んだものになります。ほぼほぼ全産業で改善していて、医薬と鉄鋼のみの悪化になっていたので、抽出したものが悪かったかと思い他のものも見てみたのですが、ほとんどの産業で改善となっていました。

次とその次の部分でまさに触れるところになりますが、創薬の難しい領域が引き続き残っており、コストをさらにかけてはいるものの、成果につながる率が悪化し、コストが膨らんでいるということだと思います。

まさにこの領域にスタートアップが入り込めないかなぁと個人的には思っています。

医薬品業界の研究開発費事情

ってわけで、初めに研究開発費の推移を見ていきます。

製薬協2021データブック

あまり直近だけ見てもイマイチかなと思ったので、2000年の数値も入れてみました。

2000年と比較すると研究開発費の増加がとてもはっきりわかって、当時の約2倍の研究開発費になっています。

2000年の日本国内における医薬品市場は全体で6兆6,850億円ほどで、冒頭に挙げた2017年の数値11兆150億円と比較すると市場規模自体は、17年までに64.8%程度増加したのに対し、研究開発費は96.4%増加しているので、これだけで言い切るにはやや弱いかもと思いますが、かつてに比べて研究開発の難易度が上がっていると言うことは可能なのかなと思っています。

製薬協2021データブック

この章の最後として日米の1社平均の研究開発費と純利益率の関係をグラフ化しています。

日本の数値について上のグラフの数値と比較するとえらい差があるじゃん!ってなると思うんですが、グラフごとに元データが違う関係でして、こちらについては大手企業のみにフォーカスしたものになります。

規模の差があるので、一概にどうこう言えないのですが、まず何より驚くのは純利益率の差です。

日本の場合、10%未満ですが、アメリカの場合だと悪くても10%を超えていて、直近に関しては24%と単純比較で2.5倍の純利益率となっています。

ちょっと今回の趣旨から外れるので、あまり詳しくは書かないのですが、2005年前後にアメリカ製薬企業の利益率低下を気にするようなレポートが出ていたりしてて、その中で研究開発費の高騰や後発医薬品の拡大、MA関連費用による利益率低下など書かれていて、その後明らかに利益率が改善してきているので、そのあたりは別途深掘って見ても面白そうだなと思っているので(いつか)やってみようと思います。

新薬開発フェーズ別到達率推移

本編としては最後になりますが、創薬におけるフェーズごとの到達率もグラフ化してみました。

製薬協2021データブック

随分前(僕が大学時代とかなので4-6年ほど前)に一度調べて、それ以降悪化してると聞いていたので数値をあまり見ていなかったのですが、今回グラフかしてみて面白いことに気づきました

上記はレンジで期間が切られていますが、数値はそのレンジの平均数値となっています。

臨床試験開始までの数値はやはり緩やかに悪化傾向にあり現状の技術を持っての創薬の限界ではないですけど、そのようなものをやや感じたりします。

一方で個人的に驚きだったのは承認取得のまでのトータルの確率は改善傾向にあるということです。

2005-2009年を見ると単純計算ですが、臨床試験を開始できても3つに1つしか承認に至らないという確率でしたが、2015-2019を見ると大体2つに1つというところまで改善されています。

要深掘りという感じですが、承認の部分の確率は上がってきているので、どちらかと言えば上流の【合成化合物>前臨床】の上流部分の圧迫を改善できるとより効率が良くなっていくんだろうと思います。(そのあたり取り組んでいる企業も海外中心にあるのでそのうちまとめてみたいと思います。)

まとめ

ちょっと長くなりすぎたので、さらっとまとめにしようと思います。

個人的にヘルスケア・メディカルに興味を持ったのは中学時代の経験をベースに大学時代に上場創薬企業の投資検討をしたのが最初でした。

割と家系的に心臓、血管系がそんなに強くなさそうで(祖父母の亡くなり方的に)しかも、死に対する漠然とした不安もあって、できることなら物理的に一生死ななくなればいいのにとか、何かあっても限りなく治る状態ができたらいいなと思い、大学時代に上場創薬企業への投資を考えていました。

その時に、大学に創薬パイプラインのまとまった本を買ってもらったり、個人的に色々なデータを調べる中で、創薬が難しくなっていることや、そもそも確率が高くないことを知って、そのあたり徐々にでも解決して行きたいなぁと思い今もこの仕事をしていたりします。

トレンド的には予防というのはわかっているのですが、とはいえ病気になる時はなってしまうってことを考えると、なってしまっても健康な状態に戻れるということはとても大事なんじゃないかと思っています。

なので、予防の文脈だけでなく、病気になってしまっても治せる、治らなかったとしても限りなく普通の状態に近い生活ができるといった領域は(特にその上流、薬で言えば薬そのものというよりはできれば、バリューチェーンの改善)引き続き自分も勉強しながら投資につなげられるようにしたいなと思っています。

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