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THE SECONDのギャロップとM-1のギャロップについて考えてみた

THE SECONDなめてた

THE SECONDが開催されると知ったとき、私はフジテレビがお笑い賞レースを持ってないから無理矢理変なもん作りやがったって懐疑的な目を向けていた。
M-1の出場制限が芸歴10年(開催された当時)なのも、10年経っても3回戦に出場できなかったら芸人以外の道を考えるのも、本人にとっても幸せだろうと、考案者の島田紳助さんが考えたからなのに、その1つの区切りとしてきっかけを提供する大会だったのに、その意向が全無視されてるじゃないか。
と考えていた。

だからこそ、THE SECONDを、金属バットの言葉を借りるなら、「地獄の戦い」「売れきらないおっさんが殴り合う大会」だと思っていた。


蓋を開ければ、そんな悲壮感全く漂っていなかった。

というか、良い大会過ぎた。
思ってもなかったセカンドチャンス。誤解を恐れずに言うと、負けてもいい大会。勝てばラッキー。宝くじのようなもの。
そんなお祭り感がとても良かった。年末のヒリヒリする人生を賭けたM-1も大好きだけど、初夏のお祭りのようなTHE SECONDが素敵だと思った。

きっとM-1は、基本的にお茶の間に初めて受け入れられる事も多い。そのため、スベってしまうとそのイメージがつきまとい続ける。そのため背水の陣なのだ。今宵、売れるか売れないかが決まるのだ。
対して、THE SECONDはここでウケようがスベろうが、今まで築いてきた実績は揺らぐ事が無い。というかもうスベるはずが無い。
そんな相違点もあるのだろう。

無冠の帝王のようなコンビ(金属バットや囲碁将棋)から、板の上のいぶし銀(テンダラーやギャロップ)、人知れず刀を研ぎ続けたお茶の間の人気者(三四郎やスピワゴ)、最強のダークヒーローのマシンガンズに、飛び道具を極め続けた超新塾。

とてつもなくバラエティに富んでいる。しかし、一貫してどのコンビ(1組はユニットか)も、漫才を愛し、誇りを持ち、結果を出すことへの執着とも言える強い気持ちを持っている。

三四郎なんてもう売れてるし良いじゃんって思ってたけど、しっかりお笑いファンにウケるような新ネタを練ってきて、なりふり構わず勝とうとしている姿を見ると、応援せざるを得なかった。

長くなるから全組について書かないけど、それぞれの組のプライドや今まで築きあげた実力を目の当たりにして、本当に全組応援したくなるような大会だった。


M-1グランプリのギャロップ

本題に入ろう。
2018年のM-1グランプリのギャロップの漫才。
アマプラで見返すと、流石だ。しかし、確かに面白いのは間違いないのだが、毛利さんの緊張が伝わってくる。これはラストイヤーで初のM-1ファイナリストといった背景があるんだろう。それこそ背水の陣。劇場で地肩を鍛えてきたお二方だから普段はお客さんの反応を見ながらやってられるのだとろうが、おそらく緊張と競技漫才という性質上、観客の方をあまり見ていないように見えた。

それに加えてネタ尺4分の中で、飽きずに聞ける構成だし、満遍なく笑いどころが散らばっているのだが、他の組に比べて盛り上がりに欠けるように見えた。トムブラウンから始まり、霜降りと和牛が優勝を争った年なのでなおさらそう見えたのかも。尻上がりに面白くなる伏線回収型かつ、爆発力があるネタが多かった。

さらに、史上最年少チャンピオンが誕生した年。最年長かつラストイヤーのギャロップはただでさえ後が無い印象を与えてしまっている上に、これ以上無い緊張が伝わってくる中で、おじさんとハゲの自虐ネタ。
上沼さんは「自虐ネタはウケない」と言っていたけど、というよりは本当にかわいそうになってしまう雰囲気の中での自虐ネタはウケない、ってことかなと今は思う。


THE SECONDのギャロップ

一言で言うととてもコメディアンだった。漫才師だった。

1本目のネタ。いわば名刺のようなハゲネタで丸々6分やりきっているのが、カッコ良かった。M-1で酷評されたハゲネタ、自虐ネタで、爆笑をさらっていったのが、やり返したのが本当に痛快だった。

まず、THE SECONDのギャロップはなにも可哀想じゃ無かったのだ。
これは大会の性質もある。今夜が最後のチャンスじゃ無い。売れればラッキーのボーナスステージ。それに加えて、漫才で食えてないマシンガンズが、初戦で暴れ回った影響で、なんというかおっさんの悲壮感が払拭されたのも大きいと思う。

通常劇場の出番は5分、または10分。10分尺だと5分ネタを2本する人もいる。劇場で漫才を磨き続けたギャロップにとって、4分の競技漫才より6分尺の寄席の方が合っていたのだろう。つかみでしっかり観客を捉えて、それと同時に会場を劇場に、自分のホームにしてしまったように見えた。全く観客を見れていなかったM-1とは違った。

そして構成も、6分で最後に向けて段々盛り上がっていく構成。3本目のネタは爆笑もしたし、感嘆してしまった。もう、オチが読めるのに、毛利さんのツッコまないが表情でツッコんでいる部分でじわじわと笑いが溜められ、林さんのソースをなめる表情でも笑いが溜められ、最後の爆発を今か今かと待ってしまう展開。流石としか言いようが無い。これが巨人師匠の講評にもあった、もっと良いネタあるのに、が指すものだったのだろうか。

あと、2本目は言うこと無いくらい笑ったのですが、絶妙なあるあるネタが関西人なら皆大好きな、海原やすよともこ姉さんのネタを彷彿としましたね。私だけですかね。


誰が優勝しても良い大会

ほんとめちゃくちゃ良い大会だったので、競技漫才賞レースにならない程度に続いて欲しいなと思います。今回は第1回大会だけど、だからこそ本当に異種格闘技みたいで面白かったし、システムとしてあまり穴が見当たらないすごい大会だな。囲碁将さんのラジオの話を聞く限り、本当に芸人ファーストでやってくれてたみたいだし、良い大会ですよほんと。

毛利さんの優勝コメント、「これで劇場の出番増えるでしょ?」が本当に今回の大会の統括ですね。
テレビに出たいとか、人気になりたいとか、それ以上に漫才が好きで、漫才師としての称号が欲しい15年目以上のベテランの大会。

こんな純粋に観客を漫才で笑わせたら勝ちの大会、他にはないので是非来年もこの初夏のお祭りを楽しみたいなと思う。





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