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おいしいエッセイ

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おいしいお店を紹介。平野紗季子さんに憧れた“パクリスペクト”な文章たち。
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2022年3月の記事一覧

素敵な時間と出会いをありがとうございました #おくたま文庫

 好きだったブックカフェが一時閉店をしてしまいます。普段、SNSに自分の姿は載せませんが今回だけは特別に、自分がここにいた証として残します。5回目の訪問、今日がこの場所での営業最終日です。  到着したのは15時過ぎ。カフェが最も賑わう時間帯はここも例外ではありません。陳列された本を眺めながら席が空くのを待っていると、通されたのは店の一番奥。いつも日本酒を嗜むおじさんが座っていた場所です。最後に私が座ってしまうのはおじさんとソファに申し訳ない気もしつつ、おくたま文庫の感触を忘

春を探しに寿司屋へ行く #すし好 和 グランスタ丸の内店

 皆さんはどうやって季節を感じますか?春には花見をして、夏には海へ行き、秋には紅葉狩り、冬は雪で遊び。。。色々な楽しみ方がありますが、東京で季節を感じたいのなら寿司が一番だと思っています。トップに載せたのは白魚(左)と蛍烏賊(右)で、どちらも春を代表するネタのツートップです。  白魚は生のものを薬味と食べる場合と、桜の葉に載せて蒸したものを食べる場合の2パターンがありますが、どちらも旨いんです。それぞれ食感が異なり、生ならつるんと勢いよく、蒸せばほろっと儚い食感が感じられま

確実に美味しいものが食べられる #洋食GOTOO

 街中華をはじめとした「街〇〇」に行くと、年季の入り方やこじんまりと包み込まれる雰囲気につられて、何でも良い店だったと評価するきらいがある。それでも美味しいと感じているのならそれが正解だが、思い返せば微妙だったなと思う店も稀にある。何が言いたいかと言えば、私は「街〇〇」に対して甘く、他のお店と比べて公平な評価をできていない気がするのだ。  自分で言っておいてなんだが、そもそも「街〇〇」の定義も明確に付けていない。大手チェーン店に対比させた個人店かつ、こじんまりとしたアットホ

おまかせ全部レビュー #鮨はこざき

 さあ来ました。私が去年だけで10回お世話になった浦和の「鮨乃すけ」の箱崎親方が今年の1月にオープンした新店、「鮨はこざき」。真新しい店内は、「蛎殻町すぎた」と同じ内装屋さんが仕立てているんだとか。まずはおまかせで頼んだ日本酒「梵」とガリをつまみながら親方の仕事を眺めます。 ひざかけは持ち帰り可能  一品目に出てきたのはホワイトアスパラ。一品目から季節感を考慮した食材が出てきました。魚ではありませんが、食で季節を感じる点では鮨の大切な一部です。これから始まる食事に向け

回転寿司で1番好きかもしれない #魚べい

 トップの写真は魚べいの期間限定商品(3/19 訪問時)の「南まぐろ中とろ(80円)」。なぜこの写真を使ったかと言えば、ここに魚べいの理念が詰まっているように感じたから。寿司と言えばまぐろ。まぐろの中でも一番美味しいと言われているのが「クロマグロ」だが、なぜ魚べいは「ミナミマグロ」を使ったのか。他の要素と共に掘り下げていくことで何かが見えてくる気がする。  まずは入店。土曜日の夕方は家族客でごった返していたが、カウンター席なら1分も待たずに着席できた。回転のレーンは名残すら

コンビニのとろたくってどうなん? #セブンイレブン

 私は各社のとろたくを分析して記事にするほど好きなのだが、そんな私の目の前にセブンイレブンが挑戦状(?)を叩きつけた。「ねぎとろたくあん」、つまりは「とろたく」のことだが、個人的にタイムリーな話題すぎて、セブンの商品企画部は私の読者なのかと錯覚してしまう(大袈裟)。 ↑回転寿司のとろたくを名前で比較し、分析しています。 各社食べ比べの記事も執筆中なのでお楽しみに!  お値段230円(税込248.40円)は100円回転寿司で考えれば少し高いが、グルメ回転寿司と比べるとかなり

「無」が「ある」空間 #渓谷展望カフェ

 自然との境界線をなくし、あくまで自然の一部として人間を捉えるアジア的思想と文化。時代の経過と共に西洋化してきた日本の中で、原点に立ち返るための空間。何もないが、"むなしい"意味での「虚」や「空」ではなく、デトックス的な意味での有益な「無」がある。無音すらも心地良い。自然との一体化を表現するのは大きな窓ガラス。畳の上で冬は温かく、冬は涼しく室内から渓谷の色をストレスなく見渡せる場所はここくらいかもしれない。  この静寂を保つのは奥多摩の自然と完全予約制のカフェ。広間を貸し切

大手町てんぷらの選択肢 #博多天ぷら やまみ 大手町店

 オフィスビルの灰色で満たされた大手町も、地下では和食からエスニックまで多くの飲食店の活気で色づいている。それぞれが独立して建っているように見えて地下では繋がっていて、昼休憩の会社員は複雑な地下道を縫うように目当ての店を目指す。私は貴重な1時間を1秒も無駄にしないように、でも社会人の体は保つように小走りで店に向かう。  会社から通える距離でてんぷらを食べようとすると、思い浮かぶお店は2つ、金子半之助か博多天ぷらやまみ。半之助の天丼は以前に一度食べているので、今回はやまみに並

見逃していたファミレス #ロイヤルホスト 新宿店

 いつの間にか行かなくなったファミレス。大人になって身に着けた偏見と先入観がチェーン店を遠ざけていた。なぜ行こうと思ったかと言えば平野紗季子さんに影響されているわけだが、せっかくの機会なので訪問することにした。内容を知らずに行かないことを選択するのも勿体ない。  新宿店はガラス張りになっていて、モダンロイヤルを体現。気軽に入れるファミレスの域を超えず、特別感も与えてくれるファサードだった。  3月だが外はまだまだ寒い。身体が即効性の温かさを求めていたのでスープ系を探す。メ