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【映画感想】『マッドマックス フュリオサ』

あらすじ

2015年に公開され、日本でも熱狂的なファンを生んだジョージ・ミラー監督のノンストップカーアクション「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。同作に登場した女戦士フュリオサの若き日の物語を描く。
世界の崩壊から45年。暴君ディメンタス将軍の率いるバイカー軍団の手に落ち、故郷や家族、すべてを奪われたフュリオサは、ディメンタス将軍と鉄壁の要塞を牛耳るイモータン・ジョーが土地の覇権を争う、狂気に満ちた世界と対峙することになる。狂ったものだけが生き残れる過酷な世界で、フュリオサは復讐のため、そして故郷に帰るため、人生を懸けて修羅の道を歩む。

https://eiga.com/movie/98959/#google_vignette

感想

『アフター6ジャンクション2』の課題映画になったので、番組に送った感想メールを貼り付けています。

以下、作品の内容に触れています。

あまり事前情報を入れずに映画を鑑賞したい方は映画鑑賞後にご一読くださいませ。

『マッドマックス フュリオサ』IMAXレーザーGTとドルビーシネマで2回見てきました。

『怒りのデス・ロード』が、マックスとの出会いなどを経てフュリオサが戦士から英雄になる物語だとするならば、本作はフュリオサが少女から戦士になるまでの物語なのだと私は解釈しました。

『怒りのデス・ロード』はセリフではなくあらゆる意味での「アクション」で語る映画でしたが、本作『フュリオサ』はセリフが重要な映画になっていると思います。「行くあてのない密航者」と呼ばれる約15分のアクションは『怒りのデス・ロード』をも凌駕する超絶さですが、本作がアクションよりセリフを重視しているのは、後世にまで口承される神話のような世界観を演出する意図がジョージ・ミラー監督にあったからではないかと思います。

その白眉が、絶妙にキレの悪いフュリオサとディメンタスの最期の会話シーンです。よくよくディメンタスの話を聞いていると、フュリオサとディメンタスの原動力の源は、二人とも共通して「過去の悲劇に対する怒り・復讐」であることが示唆されます。このラストの二人の会話は「人間」と「戦士」は何が違うのかを問うものだと思います。私は二人の会話や行動から、荒廃した世界であっても「品性や高潔さを保つこと」が「生存本能のままに生きる動物としての人間」と「人間の尊厳を守るために戦う戦士」の違いなのだ、というメッセージを受け取りました。

「お前のやっていることは俺とそんなに変わらないし、俺を殺したところでなにも戻ってこないぞ」とディメンタスに指摘され、一瞬だけフュリオサは「たしかに・・・」という目を浮かべますが、斬新すぎる復讐をディメンタスに果たすことでフュリオサは「自分は誇り高き人間であり、単なる殺人マシンではない」を証明してみせます。野性的で品性の欠片もないが魅力的な悪役像をつくりあげたクリス・ヘムズワースは見事でしたし、反対に人間の高潔さを体現するアニャ・テイラー=ジョイの佇まいは美しく、とても素晴らしいものだったと思います。

本作が『怒りのデス・ロード』の直接的な前日譚だと考えると、フュリオサとイモータン・ジョーの確執がもっと描かれるものかと思っていましたし、そこが物足りないという批判の声も見かけます。しかし映画館から無心で自宅に直帰し、いきおい『怒りのデス・ロード』のブルーレイを再生してみると、高潔な戦士として成熟し、英雄として覚醒したフュリオサが全人類を代表してイモータン・ジョーを倒すことは必然だったと思えました。クライマックスで放つ「Remember me?」というセリフも、当時は個人間の確執から生まれたものと思っていましたが、『フュリオサ』を見たあとではフュリオサ個人の怒りというより、権力者から人権を蹂躙されてきたすべての弱き者たちの怒りを代弁するセリフとしてディープに響くセリフに変容しており、私は激しく落涙いたしました。

過去シリーズへのオマージュが楽しい作品でもありますが、単体作品としても超絶におもしろい作品でした。そして歴史的傑作『怒りのデス・ロード』の感動を補強する完璧な前日譚になっている。。。まさにジョージ・ミラーおそるべし!の作品だと思います。これを映画館に行かず配信を待つとか言っているヤツとは絶交だ!それくらい心が燃える一本でした。ありがとうジョージ・ミラー様!

あとがき

言い訳ではなく、絶対にたくさんのリスナーからメールが届くと思ったので番組内で読まれようと思って書いたというより、自分が思ったことを整理するために書いたという感覚でした。

『フュリオサ』をご覧になった方は共感していただけると思いますが、あまりの情報量と熱量がほとばしる映画なので、いろいろな視点から語ることができる作品ですよね。採用された方の「ディメンタスとフュリオサだけが時間経過に伴う容姿の変化を感じさせる」なんてなかなか鋭い指摘だと思いました。

そんな中で、今回私がメールを書くときに意識したのは「いかに削るか」でした。語りたいことが多すぎるこの作品の中で、一番感動したポイントを抜き出してその一点にフォーカスしようと決め、実際にはもっと長かった文章をかなり削っています。それでもいま読み返すと長いなと思うし、言いたいことがとっ散らかっているので、まだまだだなあと思います。

「メールが採用されたら嬉しいな」が3割、「せっかく映画を見たんだから言葉にして感想を残しておきたい」が3割、「自己満足ではない文章を書けるようになりたい」が4割、といったバランスは今後も続くかなと思います。


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