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ゴールデンカムイの実写化への「批判」に対して思うこと

2022年4月19日、ゴールデンカムイ29巻の発売とともに実写映画化が発表された。このことに関して朝からTwitter上では「マンガの実写化」に対する否定的な意見が続出しているように見受けられる。

確かに、これらの意見にも頷けるようなところは多々ある。特に「アイヌ文化へのリスペクト不足」や「原作軽視」が心配されるのは仕方のない面もあるとは充分に承知している。

しかし、私は以前の『大怪獣のあとしまつ』に関する記事でも述べた通り、「見ないで批判する」ことが最も恥ずべき行為だと思っている

まだ「実写化」が発表されただけ。俳優も監督も発表されていない段階で、このように批判的な声が高まっているのはあまり健全ではない。

せめてファーストトレーラーやビジュアルが公開されてからならばある程度頷ける意見ではあると思う。

園子温監督。『自殺サークル』は好き。

邦画界隈でいえば園子温監督をはじめとする一連の「性加害」に関する報道があったばかりだ。日本映画全体がバッシングされやすい状態であるというのは理解している。

邪推するに、この実写化を批判する人たちの中には、「そんなクソみたいな日本の映画業界」が「ゴールデンカムイという良作マンガを出汁」にして「信者から金を巻き上げる」という行為に対して、どこか「癪にさわる」のではないだろうか。

わかる。私にもそのような気持ちがないわけではない。
かつて『100日後に死ぬワニ』が電通に「食い物にされた」ように思えた時の気持ちが近似しているかもしれない。

実写映画化はクソになると言われるが、アニメ化してもクソになった例もある

だがやはり、何の情報も出ていない段階で「実写化」そのものを叩くのは下劣だ。「お気持ち」だけで作品を叩くのは、『月曜日のたわわ』の広告を「お気持ち」だけで叩くこととそれほど変わりのない行為のように私には思える。

当然のことだが映画というのは大勢の人が関わって制作される。その中には良かれ悪しかれ様々な信念を抱えた人が関係してくる。
「原作に対する愛があふれている」ような人もいれば、悲しいかな「金になる」というだけでそこに愛がない人も混ざるかもしれない。
そのような人に「自分の大好きな作品」に関わってほしくない、という感情は繰り返しになるが理解できるものだ。

我々には作品を「見ない権利」がある。嫌ならば見なければいい。自分向けの「実写化」ではないのだと割り切ることが大切な場合もあると私は思う。
本当に作品に対しての愛があるのならば、私は、広く認知され原作の売り上げ上昇が見込める、作者や出版社の懐「も」潤うであろう実写化には、損をする人はいないはずの実写化は喜ぶべきではないだろう。

たとえ実写化が「失敗」に終わろうと、原作に傷が付くことはない

実写化によって原作を手に取る人が増えることはあっても、原作の売り上げが落ちることなどあるだろうか?
原作ファンは「実写化? やれるもんなら、やってみな」くらいのカンジでどんと構えるべきだ。
(反例として、かつて高橋しんの『いいひと。』が実写ドラマの「改変」を理由に連載を終了したようなこともあるにはある)

ドラマ自体の評価はよく、SMAP草彅剛の出世作。私も幼稚園児の頃、父親がドラマをきっかけに単行本を全巻買ってきたことを覚えている。いつの間にか主人公たちより歳上になってしまった。死にたい。

私がこのような一連の「マンガ作品の実写化は叩いてもいいような風潮」に対して抵抗するのは、よくこういった話題の時に持ち上がってくる「マンガの実写化に成功例はない(少ない)」というのが明確に間違いだと知っているからだ
それは間違い! あるいは勘違い、思い込みである! と声を大にして言いたい。

”成功したマンガの実写化”は、存在する!!!

ワンピースの実写化もなんだかんだ楽しみ。今から私のことをガイモン役に起用してくれないかな

以下、「成功した」あるいは「失敗した」と思われる実写化作品を紹介したいと思う。

ここでの「成功した」というのは「私が個人的に一つの映像作品として楽しめたか」どうかだ。
もしこれが商業的にということであれば「超成功した」例として『ROOKIES』を挙げるが、私も馬鹿ではないので「そーゆーことじゃーない」ということくらいは理解している。

夢にときめけ! 明日にきらめけ!

是非、「マンガの実写化に成功例なんかない」というような人たちはこれから紹介する作品を鑑賞してみてほしい。
観てからの批判ならば当然のことながら私はなんの文句もいわない。

①失敗した実写化

私がこれまで観てきた中で一番失敗したマンガの実写化作品は『20世紀少年』だ。これは酷かった。私が中学生の時の全三部作という邦画史上最大規模といってもいい作品だ。

バンバン宣伝され、二部、三部の公開前に合わせてそれぞれ一つ前の部のいわゆるディレクターズカット版を地上波で流し集客をするくらい気合の入った映画だった。

あの頃の中高生はみんなCMで流れていた「けーんじくん、遊びましょう」という【ともだち】(物語上の敵役)のモノマネをしたものだ。

少ない小遣いを手に握り、最終章『ぼくらの旗』を公開日、映画館まで観に行ったのをよく覚えている。

事実上の主演は平愛梨。めちゃんこかわいい。僕のアモーレ。

私がこれまで劇場で見た作品の中で映画終了後、最も大きく拍手が上がった作品は『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)だ。これも公開日に見にいった。当時、正直Queenに関しては、なんかカップヌードルのCMに出てた人がいる、キムタクがアイスホッケーするドラマの主題歌のグループ、くらいの知識しかなかったが、鑑賞してその完成度の高さに驚き、ラストのライブエイドのシーンで号泣、日本の映画館でスタンディングオベーションなんてことが起きるというのはこの映画で知った。そういう思い出の作品だ。

その後、毎週金曜日はTOHOシネマズへ行き、少なくとも10回以上は映画館で見た

そして、その真逆が『20世紀少年』である。
最終章が終わった後のあの「シーン」とした感じ。あれは忘れられない。「ポカーン」と言い換えてもいい。「え、これで終わり? まじんこ?」と誰もが思ったものだ。

弁護の余地があるとすれば劇場版『20世紀少年』は非常に丁寧に原作を忠実に実写化しようと、そういう意思は(少なくとも十五歳の私には)感じることができた。

役者は原作のキャラと非常にイメージがあう人選だし、全24巻あるマンガの各エピソードを非常に細かい部分まで(二時間越えの映画を三本も使っているのだから当然とはいえ)再現しているのは確かだ。

その上、そもそも原作のラストも非常に賛否が分かれる、どころか否定的な意見の多い終わり方であるという弱点はある作品だから仕方ないとは言えるのかもしれない。

この映画が失敗した原因は
・原作の弱点まで含めて忠実に再現しすぎた点
・マンガだから納得できたところを、実写化してしまい納得しにくい形にしてしまった点

の二つにあると思う。

「何でもかんでも原作通りにすりゃあいいってもんじゃねえな」とこの作品を見るとそう思う。

マンガ『20世紀少年』に関しては、私は「人生で読み返した数の多いマンガ五つ」を上げろといわれたら絶対に上がるくらいには大好きな漫画ではある。終わり方に難があるのは認めるがもし未読の方がいたら読んでほしい。作者、浦沢直樹作品は非常に序盤から中盤、そしてクライマックスにかけての盛り上がりが上手い。おすすめだ。

②成功した実写化

近年の作品でよく成功したといわれるのが『銀魂』『岸辺露伴は動かない』であるのは承知しているが、『銀魂』は私が原作未読で、『岸辺露伴〜』はドラマの方を未見なのでここでは取り扱わない。

過去の作品でいえば『のだめカンタービレ』『JIN-仁-』『GTO』『花より男子』『ライアーゲーム』『野田ともうします』
映画だけに限っても『ピンポン』『ハチミツとクローバー』『アイアムアヒーロー』『テルマエ・ロマエ』『海街diary』『ちはやふる』などがある。

今更それら過去の作品を紹介したところで仕方ないので、ここ二、三年の作品で三つほど紹介したいと思う。

『殺さない彼と死なない彼女』(2019)

タイトルでパスしてたけど、タイトルから感じるような「嫌な感じ」は全くない良作

このタイトルに「メンタルがヘラってるような女子が見に行くんだろ!!」感を覚えたのでパスしていたが評判が良かったので見た思い出。
三組のペアの閉じた話が並行して進んでいく形式のストーリー。
原作にある『きゃぴ子』『君が代ちゃん』『殺さない彼と死なない彼女』という三章構成の短編四コマを一つの映画にまとめたといった構成。

DVDで鑑賞したが、正直、舐めていたので一度目は半分流し見ていた。
が、あまりの衝撃にすぐさま続けて二回鑑賞。
いわゆる「雰囲気映画」の要素は確かにあるが登場人物に魅力があり、各人に気持ちを寄り添えるだけの余地を感じられる非常に丁寧な作品という印象。

「刺激がある」ような作品ではないので好みは分かれると思うが、少なくとも「原作を蔑ろ」にしているような作品ではなく、原作の魅力を十二分に発揮した良作だと断言できる。

主役の桜井日奈子ちゃんの可愛さを楽しむため、という意味のアイドル映画だと思えば120点あげられる。

原作もおすすめ。この表紙の雰囲気で舐めると痛い目を見る。

『アルキメデスの大戦』(2019)

原作は『ドラゴン桜』の三田紀房。部屋の整理をしようと家にあった『ドラゴン桜』や『マネーの拳』といった三田作品を電子書籍化代行業者に送り付けたら、三田作品は電子書籍化を拒否しているということでそのまま処分されてしまった、という苦い思い出がある。

『アルキメデスの大戦』は若き天才数学者が無謀な超弩級戦艦の建造を山本五十六の命令で阻止しようとするが……、といった話だ。

監督・脚本は山崎貴監督。
みんな大好き『STAND BY ME ドラえもん』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』で有名だ!!

『〜ドラえもん』と『ドラゴンクエスト〜』は非常に悪名高いが、本作は「不思議なことに」手放しでおすすめできる一本だ。

数学のことはよく分からずとも菅田将暉演じる数学者が戦争を食い止めるためにさまざまな手を使って足掻く様は非常によく描けている。
戦争映画ではあるので後味がいいとはいえないが、ラスト、その悲壮感は近年の邦画では稀に見るようなグッとくるものがあった。

山崎貴監督作品の中で手放しに褒めることのできる唯一の作品といってもいいだろう。おすすめ。

『宮本から君へ』(2019)

非常に泥臭い映画だ。

どういう映画かと聞かれれば主演の池松壮亮がラガーマンのキンタマを潰す話。愛するため人のために敵のキンタマを潰すという男の映画だ。キンタマを潰すシーンは落涙を禁じ得ない。おすすめ。

尚、この映画は役者の一人が「シャブ漬け」だったということが判明したことにより内定していたはずの助成金が取り消される、という一件で話題になったことを覚えている人も多いだろう。

おすすめする三つの中では一番スカッとする映画だ。これは万人に勧められる。

番外『ゆるキャン△」

犬山あおい役(一番右)の箭内夢菜ちゃんが一番可愛いと思うの

かなりの成功作としてあげていい。この作品の何が良いかといわれれば、役者たちに「コスプレ」をさせなかったところだ。

『ニセコイ』や『暗殺教室』『掟上今日子の備忘録』『約束のネバーランド』等、キャラクターの奇抜な髪の色をそのまま踏襲しがちであるところ、原作ではピンクだったり青だったりする髪の色を避け、現実的なものにしている。非常に好感が持てる。

主演の福原遥女史は今度朝ドラヒロインをやるということで楽しみ。大原優乃ちゃんのYouTubeチャンネルも登録してます。

おすすめ。

番外『がっこうぐらし』

アニメ2期はいつ?

当たりや根性。批判前提で公開日にTOHOシネマズで鑑賞したが、これは悪くなかった。

B級ゾンビアイドル映画としては非常に頑張っている。『アイアムアヒーロー』のような超良作と比べれば一段も二段も格が下がることは否めないが、それなりには、楽しめる。

尚、よくネタにされる花壇に直接キャベツがなっている画像。あれはこの映画本編ではなく宣伝用の前日譚的なオリジナルムービーなので混同しないようにして欲しい。

③実写化して欲しいマンガ

最後に実写化して欲しいマンガをいくつかあげて筆をおこうと思う。今度『2』をやる『キングダム』も、公開前はそれほど期待しないで見に行ったが「まあまあ」の出来だったので『2』も公開日に足を運びたいとは思っている。
特に王騎役の大沢たかおの活躍と、麃公役のトヨエツがどんな感じで演じるのかが楽しみだ。

『マイホームヒーロー』

冴えない中年男が愛娘のために殺人を犯してしまう。それがきっかけで半グレ集団に狙われが、娘を守るために、妻と一緒に奮闘する。といったストーリー。

実写映画も評判の良い『ザ・ファブル』と同じヤンマガに連載されている作品だが、個人的にはファブルよりもこちらの方が面白いし、実写向きだと思う。

非常に良質のサスペンス。全3部構成ということで2021年末、その第二部が完結。まもなく第三部、最終章が始まる予定とのこと。
これは必読。連ドラになってほしい。

『Thisコミュニケーション』

異形の怪物に対して、傭兵の主人公が殺しても死なない強力な力を持った六人の少女を率いて戦う話。なのだがその実、主人公の傭兵が死なない少女たちを何度も何度も様々な方法で殺すのを繰り返す話。少女たちは死ねば再生するのだが、死ぬ前の一時間の記憶を失って再生するため、主人公が少女たちに知られたくないような「非道」を働きそれが目撃されてしまうたびにあの手この手で少女たちを殺していく様が「爽快」な作品。

是非とも役所広司主演でバッタバッタやてほしいと思う次第である。

原作もめちゃくちゃおすすめ。3巻まで読めば必ずハマることを約束する。

『太陽と月の鋼』

江戸時代を舞台にした異能バトルもの。身体に近づいた鉄が全て曲がってしまうという体質の主人公の元に、何か不思議な能力を持っているらしい嫁がやってきて、という話。

作者の代表作『累』も実写化としては一定以上成功してる。本作も非常に魅力的な作品であり、時代感も非常によく描かれていて実写化向きだ。

個人的には松浦だるま先生は現役の漫画家の中では屈指の画力だと思っている。『累』と合わせておすすめしたい一作。

『ゴダイゴダイゴ』

作者はあの有名なキャンピングカー横転動画の生き残りの一人

『タコピーの原罪』が連載終了した今、「ジャンプラ」の中で最も勢いがあるといっても過言ではない本作。

『スパイファミリー』『ダンダダン』『ゴダイゴダイゴ』の三本柱だ!!

巨大なおっさんが街に現れる怪獣と戦うという話。

『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』の次は『シン・ゴダイゴダイゴ』だろう。
おっさんが怪獣とプロレスする様子を是非とも大きなスクリーンで見たい。阿部寛やトヨエツ、堤真一らにプロレスしてほしい。

『五等分の花嫁』

これに関しては私は「こんなん実写化不可能だろう」と思っていた。なぜなら五つ子がヒロインという設定が実写化にはとてもハードルが高いように思えたからだ。

しかし、この懸念を払拭してくれた素晴らしい作品があるとのこと。

それは何を隠そう実写版『おそ松さん』である。

見事、六つ子が主人公という超ハードルが高い作品を実写化し切ったという。

まあ、これに関しては「お前みたいなキモオタがくんじゃねえよ」とSnow manファンに思われるのが怖くて劇場に足を運んでいないので出来は知らない。が、劇場が埋まるくらいには混んでいるらしいので面白いのであろう。

まとめ

多くの人が『ゴールデンカムイ』の実写化に不安を覚えるのはわかるし、仕方のないことだと納得はしている。

しかし、まだ監督や出演者も決まってない段階で叩くのはあまりにも早計だと断言する。

成功している実写化作品は山ほどある。工夫や見せ方で映像化困難と思える原作もうまく実写に落とし込むことはできるし、また仮に失敗したところで原作に泥を塗るということもない。『ドラゴンボール』や『鋼の錬金術師』の実写化が失敗したところで両作品自体に傷がついたとは言えないだろう。

我々には見ないという選択肢がある。

映像化によって作者や出版社が少しでも潤うのであれば、私は、たとえ自分の好きな作品が大嫌いな福田雄一監督の手によって実写化されようとも構わない!! それによって作品の価値が損なわれるとも思わない。

ただ黙って見ないか、あるいは、見てから文句をいうであろう。

もし『五等分の花嫁』が実写化しても、私は見に行きません。

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