見出し画像

かつて「最も破滅的な環境破壊」と呼ばれた酸性雨のその後

概要

酸性雨とは大気汚染によって雨が酸性となって降る現象のことです。19世紀にイギリスで初めて指摘されていましたが、1970年代後半に北欧などで森が枯れ銅像が溶ける等の現象が広がったため注目されました。各国が危機感を持ち各種対策がなされた結果、今でも一部の地域では被害が出てはいるものの終末的な損害は免れています。

酸性雨とは

雨は人間の活動がなくとも元々弱酸性です。これは大気中の二酸化炭素や火山活動により大気に放出された硫黄酸化物が溶け込んでいるためです。ただし、これに加えて化石燃料、特に石炭を燃やすと発生する硫黄酸化物が雨に溶け込むとさらに酸性化が進みます。このため、工業地帯ではpHが約2レベルの強い酸性の雨が観測されることもありました。(pH2の雨は想像したくないです。こんなの浴びたら余裕でハゲげる自信があります。)
これにより森林が枯死する現象、湖沼の生物が死ぬ現象、銅像をはじめとした建造物、文化財が溶けて被害を受ける状況となりました。

強い危機感と対策

1980年には米国でも酸性雨法が可決されました。1982年カナダの環境省はタイム誌に「酸性雨は、想像しうる限り、最も破滅的な環境破壊だ」と語りました。
多くの石炭火力発電所では脱硫装置が取り付けられました。脱硫装置が取り付けられた場合、排出される硫黄酸化物は95%減ります。これにより全体として硫黄酸化物の排出量は半減し、酸性雨も自然界に害を及ぼさない範囲で落ち着きました。

画像1

酸性雨問題特有の解決し易さ

酸性雨の問題は現状ほぼ克服できていると言えます。これには酸性雨問題特有の解決し易さがあり、地球温暖化等はもっともっと解決は難しいと断言できます。酸性雨の問題が解決し易かったポイントとしては
・pHが極端な値を示しやすい。
例えば通常pH5の雨水がpH2だったら異常だと思いますよね。一方で、これまでの平均気温29℃で今年30℃だったらどうでしょう。誤差やその年特有の問題を疑いますよね。気候変動に比べると「それは自然現象では?」との疑問を差しはさめない極端な値が出たのはかえって良かったのかもしれません。

・大気汚染原因となる排気の排出と雨のpHの間のタイムラグが短い。
大気中の温室効果ガスが大量に排出されるようになってすぐに雨に異常が起きました。しかし、温暖化は100年かけて蓄積した温室効果で平均気温1℃上昇です。前者の方が因果関係をすぐに明らかにし易く、脱硫装置の効果もすぐに現れたため導入も進みやすくなりました。

・汚染物質の除去が容易だった。
地球温暖化が二酸化炭素によると分かっても現実的に排出の除去は困難です。しかし、硫黄酸化物は脱硫装置で容易に除去ができました。これにより迅速に問題が解決しました。

まとめ

1980年代初頭に世界最悪の環境破壊だと考えられていた酸性雨は現在のところ被害がコントロールされていまる。振り返ると特有の解決し易さがあったが、人類が環境問題に向き合って解決した好例と言えます。
地球温暖化防止、海洋プラスチック汚染、6度目の大量絶滅等の問題は酸性雨とは比較にならないくらい難しい課題ではあるが実現不可能ではありません。なぜならば我々人類は酸性雨を解決した30~40年前とは比べ物にならないほど多くの人がこれらの問題に危機感を持ち、進化したテクノロジーを持っているからです。

昨日までの生活は多大なる地球の犠牲の上に成り立っています。
少しずつ、一歩ずつで構わないので、
今日、この時から持続可能な経済を目指しませんか。
あなたが変われば世界が変わる。

ホームページもよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?