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水資源と環境問題① SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」を解説します

SDGsの目標6は「安全な水とトイレを世界中に」です。日本にいると分かりにくいこの目標の背景を解説します。

水の惑星の循環

宇宙にはたくさんの星がありますが、水が液体で存在しているのは現在のところ地球しか見つかっていません。海の水は太陽の熱で温められて雲になり、雨や雪となって大地に降り注ぎます。雨や雪は大地を削り、地下に潜り、植物や動物を潤して全ての地上の生き物の命の源になります。使い終わった水、使いきれなかった水は川を通じて海に流れてまた雨の元となります。

人と水の関係

人間は食べなくても3週間以上生きていけますが、水を飲まないと3日ほどで死んでしまいます。ちなみに息をしないと数分で死んでしまうので、水は空気の次に人が生きていくのに欠かせない物質と言えます。人体の60%は水でできており、生命の維持には水は欠かすことができないためです。人間は一日に2~2.5Lの水を必要としていると言われています。

水の次に人間の生命維持に必要なのは食料ですが、食料生産には多量の水を使います。水は人間の命の源と言えます

また、人が健康で衛生的な生活をする上では水の利用は欠かすことができません。手洗いうがいはもちろん、それ以上に水洗トイレや風呂は人が病気や感染症を防ぐうえで重要です。発展途上国の中には水洗トイレが整備されておらず汚物の一部が井戸や上水に流れる場合があります。このような場合、胃腸炎、コレラ、腸チフスなどの感染症を引き起こす可能性があります。

水の用途は飲み水や洗濯や風呂の「生活用水」、田んぼや畑で植物を育てる「農業用水」、エネルギー、紙や鉄を作るのに使う「工業用水」に分けられます。日本での使用量は農業用水が66%、生活用水が19%、工業用水が15%となっています1)。日本のように食料が自給できないで工業が発展した国でも水利用のメインは農業用水となっています。

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地球の水問題

地球の水はほとんどが海水(97.5%)で、飲み水となる淡水はわずか2.5%しかありません。淡水の7割が氷河や永久凍土にある氷で、3割が地下水です。地上に水の形で存在して利用可能な淡水は全体のわずか0.01%と言われております。

しかし、この水の全てが利用できるわけではありません。誰もいないところに降った水、洪水などですぐに海に流れる水などは使えません。また、ヒ素などの有毒なミネラルが溶けている水は人類が利用できません。

加えて、他の多くの資源同様に水資源も降る量も、必要としている量も地域によって大きな偏りがあります。このため、現在以下のような問題が起きています2)。

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①安全な飲み水にアクセスできない人がいる
②衛生的なトイレが確保できない人が多くいる
③農業や工業の水不足(水危機、水ストレス)

加えて、使う水の量だけでなく使った水の問題として
④排水が川や海を汚染する
も非常に大きな環境問題となっております。

このうちの①と②は生活用水の話で、③と④は農業&工業用水にまつわる話になります。SDGsでは人々の健康と経済発展の基盤である①と②を併せて「安全な水とトイレを世界中に」としています。一方、環境破壊の問題はむしろ③、④がメインで、加えて近年では地球温暖化による高潮や洪水も広い意味での水の問題としてクローズアップされます。今回は①と②の問題を解説します。

①安全な飲み水にアクセスできない人がいる

前述の通り下水が整備されていない地域では汚物が水源を汚染する可能性があります。また、土中に元々存在するヒ素の毒が水に溶け出てしまっている水源の場合、利用できません。また、たとえ安全な水があったとしてもそれが家から遠く離れた川だったとしたらどうでしょうか。多くの時間を水くみに費やす必要があります。

安全な飲料水にアクセスすることができる人の数は1990年には76%、2015年には91%に増加しました。2017年現在世界の71%が清潔で「オンデマンド」で利用できる飲料水にアクセスできます3)。

水へのアクセス

上図は飲み水にアクセスできる人の割合を示した地図です4)。飲み水へのアクセスは経済発展と相関係数が高いことが分かります。飲み水にアクセスできない場合には、食料以上に欠かすことのできない存在である水くみに多くの時間を割かれてしまうために、子供の教育や労働に十分な時間を割くことができず経済発展ができません。このため、これらの地域を経済発展させるためには水へのアクセスの改善が望まれております。

国連は水道代は世帯収入の3%未満であるべきで、水源は家から1000m以内であるべきで、水の収集にかける時間は30分未満が望ましいと言っています2)。

②衛生的なトイレが確保できない人も多くいる

トイレは、人々の健康を保ち、感染症の拡大を予防し、尊厳をもった暮らしをする上で、重要な役割を果たしています。2017年時点、世界では42億人が安全に管理された衛生施設(トイレ)を使用できません。このうち、6億7,300万人は、家や近所に利用できるトイレがなく、道端や草むらなどの屋外で用を足す、屋外排泄をしています5)。

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」

飲み水へのアクセスとトイレへのアクセスについて解決策は分かり切っており、対策をすれば高い費用対効果が見込まれます。WHOの調査によると、衛生の改善に投資された1ドルは5.5ドルの経済リターンに変換されます。特に貧しい子供たちとそれらを恵まれないコミュニティに高い利益をもたらすと言われています。

以上のような背景からSDGs目標6に「安全な水とトイレを世界中に」が設定されています。

水にまつわる問題の残り2つ
③湖や地下水などを再生する量以上に消費している
④排水が川や海を汚染する
については別途書きたいと思います。

まとめ

水は空気の次に生命維持に不可欠なものです。水の次に人体が必要とする食料は多量の水を使って設定されます。安全な飲み水やトイレにアクセスできない場合、教育や健康の理由から経済発展を大きく妨げます。このためSDGsでは17の目標の一つに「安全な水とトイレを世界中に」を掲げています。

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1)https://www.mlit.go.jp/common/000120857.pdf
2)https://www.un.org/en/sections/issues-depth/water/
3)https://en.wikipedia.org/wiki/Drinking_water
4)http://www.waterforum.jp/jp/resources/pages/global_water_issues.php
5)https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act01_03_sanitation.html



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