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森のないイースター島は人類の未来か?モアイ像の謎に魅せられて学ぶ環境問題

モアイ像があるイースター島はユネスコ世界遺産に登録されている有名な観光地です。イースター島には森林はなく、代わりにあちらこちらにモアイ像があります。世界でここだけしかない風景です。この島は世界中の多くの研究者と一般市民を惹きつけて止みません。それは神秘的なモアイ像があるからではなく、人類と環境破壊、文明とその崩壊、現在地球上で起きていることの全てを先取りした島だからです。

モアイ像の謎

イースター島は最も近い有人島が2000km以上離れている絶海の孤島です。約160Km2と大きくはない、マグマの噴出でできた火山島です。ここに初めてヨーロッパ人がたどり着いたのは1722年のイースターの日であったことからイースター島と名づけられました。銃で武装したヨーロッパ人に対して島民は投石で対抗したと言われています。しかし、ヨーロッパ人は島に入って驚愕します。巨大なモアイ像が建っていたからです。モアイ像は最大で大きさ20m、重さ90tにも達するからです。どうしてこのようなソリや十分な強度のロープはもちろん、高い木すらない島でこのような像が建立できたのだろう。ここに宇宙人でも来たのか?と。さらに1860年代のヨーロッパ人がモアイ像は全て倒されていると記録しています。1700年代にいくつか報告された立ったモアイ像は幻だったのか。宇宙人はどうなったのか。謎が深まります。

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ポリネシア人の到着と文明の興隆

(所説ありますが)1200年くらいにポリネシアの少数の人がこの島にたどり着きます。イースター島は西のパプラニューギニアよりも東の南米に近い位置にありますが、DNA鑑定等から先住民ははるか西から渡って来たと考えられています。この島に初めて人が降り立った当時、島には高い木が生え、海には豊富な生き物がいて、陸には多くの野鳥がいました。住民となったポリネシア人たちは狩猟をし、キャッサバを育てたり養鶏を始めます。この島に到着した人たちは数家族だったと考えられますが、豊かな自然のもたらす恵みで島は栄えて人口は最大15000人以上が暮らしました。最盛期には独自の文字を操り巨大なモアイ像を建立したりとかなり高度な文明を持っていたようです。

ちなみに持ち上げることはおろか引きずることも困難なモアイ像の動かし方は下の動画のようだと推定されてます。カリフォルニア州立大学のカール・リポらは、3つのチームが3方向からロープを引っ張ることで、4.35トンあるモアイのレプリカに道を「歩かせる」ことが可能なことを実証したそうです1) 。てこの原理を上手に利用して歩いているように見えます。高度な技術とそれを育むを文明を有してたことがうかがえますね。

イースター島の悲劇

しかし、絶海の小さな孤島の中で過剰な人口を抱えたイースター島では資源が再生するスピードよりはるかに速いスピードで浪費してしまいます。
燃料や素材となる木材の乱獲により森林破壊が起きます。農業と森林破壊により火山島の脆弱な土壌は浸食されます。日本では気候条件から土壌の再生が早いのでピンと来ませんが、世界の大部分では土壌は一度流れてしまうと簡単には再生しません。イースター島が誕生したのは75万年前と言われております。島が数十万年かけて島が育んだ土壌とそこに育った森林を島民達はわずか数百年で消費してしまっていたのです。
土壌の浸食により農業生産は激減します。木材はなくなり船が造れないので豊富な漁業資源も利用できなくなります。食料は不足し、人口は2000~3000人程度まで減ってしまったと言われております。モアイ像は食料をめぐる戦いの中で倒されたと言われています。

画像3森林破壊によって木が無くなったイースター島

ヨーロッパ人がここに来る前に21種類の樹木と全ての野鳥は絶滅していました。島の大部分が森林破壊され3メートルより高い木はなかったと言われています。1722年ヨーロッパ人が初めてここを訪れたのは争いでモヤイ像が倒され始めた時です。内紛によりモアイ像は全て倒され、1800年代のヨーロッパ人の奴隷狩りとユーラシア大陸産の疫病で人口がさらに激減。文字を操れる人がいなくなり文明は完全に崩壊しました。以上は有名なジャレドダイヤモンド「文明の崩壊」を始めとした多くの書物で語られている通説です。

ラット

一方、近年の研究ではイースター島の環境破壊にラットが一役買ったという話が支持を広げています。イースター島には元々ラットが居ませんでしたが、食用として持ち込んだか密航者として船に乗り込んだか、ポリネシア人の上陸とともにラットも上陸しました。ラットはヤシの実を始めとする植物の種を食べるため、これらの植物の繁殖能力を大きく低下させていた可能性があります。人類は再生するより早く森林を浪費しただけでなく、外来種の持込で再生能力をも低下させていた。それがこの島の崩壊を早めたという説です。

イースター島の教訓

環境破壊により文明が崩壊したり、都市が打ち捨てられた例は世界中に点在します。その勃興と崩壊の原因については所説ありますが、

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↑カンボジアのアンコールワット

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↑マヤ文明のチチェンイッザ

これらの文明も大いに栄えましたが、皮肉なことに増えすぎた人口が森林や水を再生する量よりはるかに多く浪費したためにひっそりと滅んでいったと言われています。

太平洋における絶海に浮かぶ小さなイースター島で起きた環境破壊による悲劇。我々も大宇宙に浮かぶ小さな惑星に住み、森林、土壌、水、化石燃料、砂といった地球の大地が何千万年もかけてゆっくりと作られた限りある資源を再生するスピードよりはるかに速いスピードで利用して生活しています。

イースター島の悲劇は科学技術の無い過去の話でしょうか。
それとも科学技術を手にして
世界中の資源を掘りつくし、消費しつくし、廃棄しつくしている
我々の未来の地球の話なのでしょうか。

イースター島の悲劇を私たちの未来の話にしないためには私たちが今からどれだけ生活を変えられるかにかかっていると思います。持続可能な経済を目指して地球に優しい生活を目指しましょう。

最期まで読んで頂きありがとうございます。

1) https://wired.jp/2012/11/12/easter-island-moai/


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