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ブックストアデイズ ー本屋稼業はやめられないー

楽しかったなあ。と今でも思う。正直、辞めなきゃよかったと思うくらい大好きだった。働いている頃は、そりゃ毎日入荷してくる山のような書籍の大群にイライラしたり、頼んでもないものがガンガンくるのが、イラっ!の原因だった。そして、増えていくレジの時間、バカバカ休むサブスタッフの代打、ともかく忙しい。そして、いつも疲れていてイラついていた。わかっているよ、営業さんだって必死なわけで、いらっしゃって雑談したいよね、情報得たいよね、こんな私からでも何か訊き出したいよね、でも、時間がないんですよ。追われているのですよ。日々の雑用に。というか、そんなに真剣に取り組まなければよかったのかもしれない。今なら、ふとそう思う。

こんなことでいいのかなと思いながら、続けていたが、ある日、辞めることにした。続けるつもりではいたが、通勤が少し遠くなることに、少しづつ老いていくことに、体力も気力もなくなってきたことに、不安を感じたのだ。そうだ、人は永遠に同じ速度で生きていけるわけではない。そして、永遠に同じ場所で呼吸ができるわけではないのだ。そんなことが見えてきた時に、異動をつげられ、思い出した。新しい人間関係に入っていくのは、つらい。まして今までやっていたことを白紙にして、自分よりもうんと若いスタッフに気をつかいながら、働くことに恐怖を感じた。今までも、異動した先で、「なんで、こんな、、ここに置くのですか!」「あなたなんか、担当にならないでください。」とか、いろいろなことを言われた。まあ、私もそれなりにとろかったこともあるので、仕方ないかもしれない。

思い出すのはそういうことを言っていた意地悪な同僚達だ。そうだ、あの人達は、意地悪だったのだ。でも、もしかしたら、あの人達もそれなりにいろいろなことを抱えていて、いっぱいいっぱいだったのかもしれない。そして、きっと私よりもずっと疲れていたのだ。ふと国民健康保険料の請求を見て、こんなに払わなくてはいけないのかと思ったが、半分負担してくれた会社には本当に感謝しかない。でも、考えてみるとあんなにいい会社なのに、意地悪な人達は、本当にたくさんいたなあ。いや、疲れ切っている人達と言い換えるべきかもしれない。本当はいい人だってわかっているけれど、いろいろあるから、人生は。だからね。

とまあ、暗い話題はここまでとして、本屋は本当に楽しかった。私は、本を読むのが好きだ。純文学はそこまで読まないが、ミステリは大好き、絵本も大好き、料理書も大好き。図書館にはよく子供の頃から通った。テレビを観るのも好きだったが、頭が痛くなるほど昔からよく本を読んだ。その割には成績はよくはならなかったが、今でも本をよく読む。本は、いい。だから、就職の時、別の職種で仕事を探していたが、亡き父親が「本屋はいいぞ、○○はいいぞ。」と今まで働いていた本屋を薦めた時、「まあ、いいか。」と就職が決まらない自分は、ある意味、いい妥協をしたのだ。その選択は、今となっては、ベストだったと思う。私の人生の大半は、アメリカとこの本屋で埋めつくされている。そして、振り返るとベストな人生だった。

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