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第1回市民対話を開催しました

こんにちは、すさきのすづくり編集部です。
2024年7月4日木曜日、須崎市の図書館等複合施設の運営を考える第1回市民対話を開催しました。当日の日中最高気温は34℃。日が暮れてもうだるような暑さが残る中、37名の皆さんにご参加いただきました。

写真:短冊や七夕の飾り付けがついた笹。「家族みんなが幸せでありますように」「髪が生えるように」などのお願い事が書いてあります。
会場の交流ひろばすさきには、七夕飾りが飾られていました

大きな車座で対話

この市民対話は事前の申し込みが不要で、参加したい人が直接会場へ集まる形式をとっています。第1回ということもあり、どれくらい人が集まるかは未知数。プロジェクトメンバー一同、期待と不安が入り混じるような気持ちで当日を迎えました。

写真:椅子とテーブルが並んだスペース。奥には本棚があり、テーブルを囲む中高生が写っています。
普段は地域の人の憩いの場所になっている交流スペース

会場は会議室ではなくオープンな交流スペースを利用しました。参加者が輪になって対話できるように椅子をセッティング。開始時間が近づくにつれ続々と市民の皆さんが集まり、用意していた椅子が足りないくらいの盛況に! 予想を超える大きな車座で市民対話がスタートしました。

持続可能な“須崎流”の運営形態を探る

進行を務めたのはアカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)代表の岡本真さんです。図書館などの公共施設のプロデュースを全国で15年以上行っています。高知県では須崎市のほか、佐川町や四万十町の文化施設整備、高知こども図書館の経営支援にも関わっています。

写真:参加者に話をする岡本さん
argの岡本さん

「公共施設は少なくとも70年は使われます。今この場にいる人で、70年後を見届けられる人は少ないでしょう。この先の世代に負の遺産を残さないためにも、持続可能な運営形態を探っていきましょう」と岡本さんは始めます。

公立図書館の運営には、自治体が直営する方法のほか、民間の事業者に運営を委託する指定管理者制度を導入しているところもあります。しかし人口2万人を切った須崎市の実状を考えると、将来にわたって指定管理費を工面していくのは現実的とは言えません。また、行政の直営でまかなえる範囲にも限界があると予測できます。

そこで岡本さんは運営形態のプランを短期・中期・長期の3つに区切り、「開館後3年までの短期プランでは直営を基本としつつ、市民のみなさんと協働で施設を運営していけないだろうか」と提案します。

短期・中期・長期での運営形態プラン(案)。短期:2024年〜2028年の5年間。中期:2026年の開館時から3年の準備を経て、2029年〜2033年の5年間。長期:開館7年目からの準備を経て、2034年〜2040年まで。
2026年開館の場合の短期・中期・長期スケジュール

先進事例に学びながら

須崎市にとって最善な運営形態を探るにあたり、白紙の状態から自分たちだけで考えていても答えは出ません。全国の先進事例の文献調査を行い、必要に応じて訪問調査を進めています。

図書館とキッズスペース、そして大きな屋外ひろばをもつ施設の例として、新潟県新発田市の「イクネスしばた」や岐阜市の「ぎふメディアコスモス」の使われ方を写真を交えて紹介しました。

写真:開放的なこどもセンター。ソファやベビーサークルのようなものが見えます。
イクネスしばたのこどもセンター
写真:建物前の外構。キッチンカーが停まっています。
ぎふメディアコスモス前のひろば

また、市民協働の好事例として伊丹市立図書館ことば蔵の「交流フロア運営会議」を挙げ、市民発の企画と熱意が年間200回以上のイベント開催を支えていることを紹介しました。

写真:資料を手にメモをとる参加者。

欲しい機能を実現する仕組みを考えよう

ただし、どこかでうまくいっている方法をそのまま須崎に持ってきてもうまくいくとは限りません。「良い施設をつくることも大切ですが、それをどう利用するか、良い仕組みをつくって更新していくことも重要です」と岡本さんは話します。須崎市にとって必要な機能を実現する仕組みを検討するために、参加者の皆さんの想いや課題感を聞いていきました。

写真:参加者の話を聞く岡本さん。

「今の図書館は早くに閉まってしまうので、開館時間が長くなると良いな」という声に対しては、朝の6時から開館している例が紹介されました。その施設では1階に銀行が入っており、警備員の方が施設を開けて地域の住民が新聞を読みに訪れているそうです。また別の施設では、出勤前のコーヒーを飲みたいという声に応えて飲食店が入り、朝の7時から開館しているのだそう。それぞれの地域のニーズによって、それを実現する仕組みも異なることがわかります。

子育てをしている方からは「雨の日に遊びに行ける場所がなく困っている。図書館は静かにしなくてはいけないイメージがあって気になっている」という声が挙がりました。岡本さんは、ぎふメディアコスモスの「子どもの声は未来の声」のメッセージを紹介し、キッズスペースを計画している須崎市でも大切にしたい考え方として伝えました。

写真:椅子に座った3人の女性の足元。

地震津波対策に関しては、東日本大震災の現場を見てきた経験から、脅威を正しくとらえて行動することの重要性を強調しました。

「地域の民具が閉園した保育園に保管されたままになっている。新施設で郷土民具として展示できないだろうか」という声に対しては、瀬戸内市立図書館の例が紹介されました。瀬戸内市では、民具を飾るだけでなく、認知症ケアの回想法に利用しています。地域の文化財と風習の伝承を、市民活動とからめて行なっている好事例です。

地域回想法…「回想法」とは、懐かしい思い出などの回想をすることにより、高齢者の脳が活性化され、認知症予防や認知症の進行を遅らせる効果があるとされる心理療法のひとつ。「地域回想法」は、回想法を地域で取り組み、高齢者の介護予防だけでなく、世代間交流や地域づくりなどにもつなげようとするもの。

瀬戸内市立図書館サービス計画2018
写真:参加者の手元
写真:会場の全体像。たくさんの参加者がスクリーンを囲むように座っています。

時間いっぱいまでさまざまな意見が飛び交い、第1回の市民対話は終了しました。市民対話は何かを決める場ではなく、お互いの考えを聞き合い、参加者みんなで話し合う場です。開始時よりほぐれた表情になっている方や、終了後も参加者同士で話し合う方たちの姿が印象的でした。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。今回は参加できなかった方も、ぜひお気軽に次回以降の機会にご参加ください。次回の開催日時は未定ですが、決まり次第こちらのnoteでお知らせします。
また皆さんとお話できるのを楽しみにしています!

写真:輪になって立ち話をする6人の後ろ姿
終了後に次回のアイデア出しをする竹内教育長とメンバー

写真:壁に貼った市民対話のポスター

今回の市民対話で使用した資料を以下に公開します。
 ※市民対話で考え方を説明するための資料です。今後の方針等を確約するものではありません。

先進事例視察のレポートはnoteでも公開しています。これからも随時更新していきますので、お楽しみに。