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Vol.2:原田知世【パヴァーヌ】一流の音楽作家たちが大切に作った大傑作。アイドルのレコードなのに物哀しい匂い。

テレビドラマ「セーラー服と機関銃」からずっと好きだった「唯一のアイドル原田知世」

中学高校なんて、誰かしらアイドルがいるもんだろうけど。透明な下敷きに写真をいれたり、ポスターや切り抜きを貼ったり、似顔絵を描いたり。歌番組をブラウン管も溶けろ!とばかり凝視したり。
僕にとってのアイドルは原田知世さん。ま、ポスター貼ったりはしなかったけどね。
アイドルって多分、外から見るほど「異性愛のはじまり」とか「性の目覚め」じゃない気がする。女の子たちがいまNewJeansに熱狂したりしてるのみると。
推しの文化とか言われる前から「アイドルとリスナー」というのは不思議な関係性だったよね。
歌番組での掛け声文化もいまやKPOPに引き継がれている。
僕もテレビドラマ「セーラー服と機関銃」の主題歌「嘘のような本当のはなし」からのシングルレコードは買っていた。
来生たかお&えつこソングライティングティームの素晴らしい楽曲、しかも歌の不安定な原田さんには酷な転調の嵐だったりした曲もあった。

高校時分にパンクバンドをやっていたけど、「原田知世が好き」とかは言えなかった(笑)「アイドルのレコードとか作るのビニールの無駄」とか言ってたもんね(馬鹿だな)

Water side,Light sideと分けられたA、B面。CDでは味気ないことこの上ないだろう

Water sideと名付けられたA面はとくに静かで、水面に葉っぱが落ち、波紋が広がるような曲が多め。歌詞のプロデュースを康珍化さんがやってるので、歌世界が統一されている。
およそ「ハリのある声」「遠くまで届く声量」と無関係な原田さんの守備範囲にぴったりあわせた楽曲がそろってる。
作家がその実力で「偶像」を塑像しデコレートする。昔の(お金があったころの)日本のポップス界にはそれがあったと思う。
作家はある意味無責任に「作品だけを作る」ことができる。
他のアイドルのレコードはあまり聞かなかったし、持っていないけど某秋元康の「聞き手に合わせた世界を作る」手法ではなく、ここじゃないどこかへ聞く人を連れて行ってくれる品位が康珍化さんからは感じられる。

カノン進行が心地よい「水枕羽枕」、静かすぎて緊張する「紅茶派」、太陽の暑さを感じる「ハンカチとサングラス」

作品も傑作揃いで、スポットライトを浴びる曲と、影になる曲、力作、リラックス…。強いチームはこうじゃなくちゃって思える曲構成。
特に大貫妙子の「紅茶派」はすごい圧(笑)
ストリングスからの壮大なアレンジ。ご本人でもやらないような映画のような。映画のワンシーンとよくいわれるけど、「映画まるごと」つまってる。
よくもまあ、こんなの歌わせるなぁ…。
原田さんの腹筋を使わない(?)歌が完璧にあっている。

このあとしばらくして「後藤次利の罠」にはまって凡作を出し続けるんだけど…

何を血迷ったかこのあと「ダンサブル」という異境に原田さんは連れて行かれ、ひどい目にあった。流石の僕もレコードを買ってすぐに売った(笑)
もう、おわったのかなーと思っていたらムーンライダースの鈴木慶一が瀕死の彼女を救ってくれ傑作「GARDEN」を生み出し、そのあとトーレヨハンソンで蘇ったんだけど、世の中はもうCDの時代。
愛聴してるけどここには書けない。

最近は洋楽のカバーやリラックスしたCDばかりをだしてるので聞かなくなったけど、Egg Shellとかeijaとかのヒリヒリする傑作が聴きたいな。
ま、それは若い人に任せたらいいのかもだけど。


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