【Cycling223 Ep3《「日本で最も美しい村」へ。松崎で日本の原風景を発見ポタリング》】SURUGA Cycle Journal Vol.149
駿河湾フェリーさんとのコラボ企画「Cycling223」。フェリー×自転車で、伊豆でしか味わえないグルメや素敵なスポットを四季折々の伊豆の風景とともにご紹介します。
今回の舞台は「花とロマンの里」と言われる松崎町。なまこ壁の建築物や駿河湾と富士山を望む原風景など、長年に渡って守られてきた美しい景観がある町です。歴史的な町並みや、松崎町ならではのグルメを堪能しながら、新たな発見に出会う旅に出発しましょう。
ナビゲーターは駿河湾フェリー職員の中野さん(左)とスルガ銀行のヒラタ(右)です。
まず最初に訪れたのは「道の駅 花の三聖苑(さんせいえん)伊豆松崎」。松崎町出身の偉人の業績を中心に、松崎の歴史、文化を紹介する複合施設です。
まずは松崎の歴史を紹介している「三聖会堂」へ。「三聖人」と呼ばれる3人の偉人、幕末の漢学者である土屋三余(つちや さんよ)、明治期の実業家として名を馳せた依田佐二平(よだ さじべい)、そして佐二平の弟で北海道十勝平野の開拓者である依田勉三(よだ べんぞう)に関する貴重な資料が所蔵されています。
その隣には、依田佐二平が明治に開校した公立小学校「大沢学舎」の建物が一般公開されています。
学校の趣を残したまま、アンティークな雰囲気が漂う建物。木の床や少し低い天井が印象的です。
2階に行くことができ、上がってみると教科書や卒業証書など、当時の資料が展示されていました。
建物の隣には依田佐二平の像があります。
ここで、さらに奥にパワースポットがあるという立て看板を発見しました。
「山神社(やまじんじゃ)」という神社で、木造のお社があります。
境内には子宝御神木や2つの力石がありました。
手前の丸い石は88.6kg、奥の細長い石は123.2kgで、昭和5~6年頃に「背負子背負い拝殿」の石段を上り下りするのに使われたのだそうです。
二人がかりで持ち上げてみようとするも…んー、ちょっと無理そう!
さて、続いては松崎町の春を彩る素敵な場所をご紹介しましょう。松崎を横断するように流れる那賀川(なかがわ)のそばにある約3万平方mの広大な農閑期の田んぼに、毎年「田んぼをつかった花畑」が広がります。
撮影日は3月下旬。姫金魚草、るりからくさ、アフリカキンセンカなどが見頃を迎えていました。
松崎町の花の名所として、毎年2月中旬~4月にかけて花畑の中を散策することができます。時期によって6種類のお花が見頃を迎えます。
そして、花畑の中に大勢人がいるなぁ…と思ったら、これはその名も「リアルかかし」!
リアリティがあって「あれは人?」「あれ、かかし?」と遠目に見ると迷ってしまうほど。
中に紛れて記念撮影してみるのも楽しいです!
(2023年度のリアルかかしは3月18日~4月16日で展示終了しました。)
5月には花畑で無料の花摘みも開催され、多くの方で賑わいを見せます。松崎の春を存分に楽しみにいらしてください。
その他にも、那賀川の河川敷には約6kmにわたって桜並木が続いています。満開の時期にはぜひ訪れたいものです。
次のスポットに行く途中、近くにある「桜田公園」にて、日向ぼっこするカモさんに出会いました。
こうした小さな発見に出会えるのもポタリングのいいところですね。のんびりと日にあたる姿に癒されてしまいました。
さて、松崎に来たら一度は味わっていただきたいのが、「梅月園」さんのお菓子です。
松崎町はさくら葉の生産が日本一!国産さくら葉の全国シェアの約7割を占めています。1931(昭和6)年創業の老舗菓子店である梅月園さんは、素材にさくら葉を使うことにこだわっています。
昔ながらの「さくら葉餅」は自慢のさくら葉2枚でお餅がくるまれ、程よい塩味とあんこの優しい甘みがよく合います。
“桜餅”ではなく、さくら葉餅。桜の葉がメインなのが松崎ならではです。
さくら葉を使用したピンク色の生地でクリームと大粒のあずきをロールした「桜ロールケーキ」は和洋折衷でありながら桜の深い味わいが楽しめて、さらに見た目も可愛らしいです!
那賀川の桜並木を見ながら、さくら葉のスイーツを楽しむのはいかがでしょうか。春の訪れを感じる素敵な時間です。
もぐもぐタイムが続きますが、これぞポタリングの醍醐味です。続いてやってきたのは「アサイミート」さんです!
1933(昭和8)年創業、地元に愛されるお肉屋さんです。ショーケースいっぱいの揚げ物たち!その場で揚げてもらえる「揚げ物タイム」があり、揚げたてが買えるのがうれしいところ。
人気なのは、揚げたてが買える「川のりコロッケ」!日本でも収穫できる場所の少ない、松崎特産の「川のり」をふんだんに使用しています。
しかも、コロッケとサイズがピッタリのパンが一緒に販売されていました。これは…サンドしたくなるやつ!
ホクホクのじゃがいもと香り豊かな川のりがベストマッチ!サクサクの衣に中身がギッシリ詰まっていて食べ応え十分です。食卓のおかずにも、ちょっとしたおやつにもぴったりです。
「揚げ物タイム」は午前と午後で時間が決まっていますので、お求めの際は要チェックです。
さて、続いては松崎町の風情を感じる「なまこ壁通り」にやって来ました。
なまこ壁とは、壁面に四角い平瓦を並べて張り、その継ぎ目を漆喰でかまぼこ型に盛り上げる壁塗りの様式のこと。盛り上がった部分が海鼠(なまこ)に似ていることから名付けられました。
江戸時代に防火、防風を目的として普及したものですが、こうしてみると日本らしい町並みの風景を作り上げていますよね。ここは近藤平三郎の生家で、江戸末期に建築されたものです。
なまこ壁通りを抜けて、今度は「伊那下(いなしも)神社」に向かいます。
境内に足を踏み入れて、まず最初に目に入るのが、さまざまな動物の木彫りの精霊たち。
これらは宮司さんがチェーンソーアートで制作されたもので、なんと全部手作り!ここは「精霊の森」とも呼ばれています。
本殿の前には力強く枝を広げた樹齢約1000年の「親子いちょう」があります。落雷で裂け、双樹となったあとその裂け目からさらに稚樹が成長したことからそう呼ばれています。
双樹になったうちの「父いちょう」は、根の隙間の穴がハート型に見える…?!ということで、今ではフォトスポットになっています。赤い和傘で相合傘の写真が撮れます。
自然の神秘からアートにフォトスポット、境内を散策しただけで見所満載ですね。
ここから、宮司さんに宝物殿と拝殿を案内していただきました。
和歌や江戸時代の古本など、松崎町内の個人宅に眠っていた宝物が寄贈され、貴重な資料が数多く展示されています。文献や銅像など展示品の種類も年代もさまざま。まるで美術館のような空間です。
しかもこれらが無料で見学ができるというのですから驚きです。
さらに奥に進むと、拝殿の中に入ることができます。
まずは自らお清めを。
中から見ると拝殿奥に石造りの階段があり、その高所に本殿があります。洞窟のようになっていて、石段から先の空気が変わるのを感じました。
拝殿の外観は朱色が映えるお社ですが、外から見るのと中から見るのとでは印象がガラリと変わります。ぜひこちらでお参りください。
さらに、伊那下神社には駿河湾フェリー乗船記念の限定御朱印があります。乗船1か月以内はいただくことができますので、お参りの後、フェリーと自転車で伊豆に来た記念にいただいてみてはいかがでしょうか。
手前が通常の御朱印、奥が駿河湾フェリー乗船記念の限定御朱印です。実は西伊豆地域で宮司さんが常駐ふしている神社は伊那下神社だけで、御朱印をいただける神社は貴重です。
再び松崎町の歴史情緒あふれる町並みをポタリングしましょう。こちらは1910(明治43)年建築の「伊豆文邸」という建物で、かつては呉服商が営まれていました。
木造2階建ての母屋は、土間や帳場(勘定の支払いをする場所)に当時の面影が残り、また、なまこ壁造りの土蔵が2棟あります。現在は無料休憩所として利用されています。
伊豆文邸横の公園には、どなたでも入れる足湯がありました!
さっそく入ってみると…結構熱い!疲れた足を癒しに、ぜひお立ち寄りください。
さて、続いては「伊豆文邸」から自転車で2分のところにある「明治商家中瀬邸」を目指します。
那賀川にかかる「ときわ橋」を渡ります。こちらもなまこ壁が素敵ですね。
中瀬邸は1887(明治20)年に呉服問屋として財を成した豪商・依田直吉の邸宅(依田直吉呉服店)として建てられました。依田直吉呉服店の屋号が「中瀬」だったことから中瀬邸と呼ばれています。
1988(昭和63)年に母屋や土蔵など七棟からなる大邸宅を松崎町が買い取り、現在は母屋を民族資料館として一般公開しています。古民家の侘び寂びを感じながら、絵画などの芸術作品や昔使われていた道具が展示されているのを見て回りました。
建物の構造にも注目です。渡り廊下の天井が「船底天井」という変わった作りになっていました。底なのに天井って不思議。
建物正面にあるこの不思議な建築物は、昭和天皇のご成婚を記念して作られた「時計塔」。通常の文字盤にはない「13」があります。日常にはない特別な時間が流れているのかもしれません。
さて、今回の旅のラストは「雲見海岸」にやって来ました!
透明感がありマリンブルーが美しい海岸で、ダイビングスポットとしても有名です。
近くにある「渚の足湯」は、海を見ながら足湯を楽しめる絶景スポット。天気のいい日には富士山も見えます。この日もうっすらですが、雪化粧した富士山が見えました。
海岸から変わった岩を見ることができます。沖に見える大小2つの島は、その昔大洪水で流された牛が流れ着いたことから「牛着岩(うしつきいわ)」と呼ばれ、今でもしめ縄を張って港と船の安全を祈願しています。
その左隣にはスフィンクスのような形の「ライオン岩」があります。
ゆっくり沈んでいく夕陽から伸びた光が海に反射して綺麗ですね。絶景に心が癒されたところで、今回の旅を終えていきました。
駿河湾フェリーから自転車に乗り換えて、伊豆半島の伝統ある街並みに日本らしい原風景を望むサイクリングになりました。未来に残していきたい美しい景観に出会える松崎町にぜひ遊びに来てくださいね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?