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20年9月6日の展覧会、新しいサイケ

ひとり焼肉の専門店というところにはじめて入った。席はパーテーションで区切られ、目の前は壁。注文は卓上のiPadからで、テーブルの引き出しに箸、お手拭きが収まっている。店員と話すこともなく、ひとりでいることに徹底した設計になっていた。客はそれぞれストイックな職人のような顔で肉を焼いていた。

 新型ウイルスが蔓延しているなか、ひところはどこも休館となっていたが、消毒の徹底や来館時間の予約などの対策をして美術展が開き始めている。この日、春先からずっと行きたいと思っていたピーター・ドイグ展をやっと観ることができた。
 公式では「イギリスが誇る現代の『画家の中の画家』」と紹介されているけど、「なるほど、今っぽい」とおもった。作品の多くは、カラフルな色づかいで溶けるように描かれる広大な風景に、それと対照的に、生気がない幽霊のような人間が描き込まれる。この、あたたかいけど不気味な感じ—―これらの作品から、わたしの頭にアニマルコレクティブの音楽が流れてきた。このバンドは00年にデビューして以降、斬新なサイケデリックサウンドでポピュラー音楽に大きな影響を与えている。ドイグの作品の現代性って、このサイケデリック感にあって、それは、不条理な現実を忘れることができる鎮痛剤的(ドラック的)な明るさなんだとおもっている。

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