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なぜローリングはビーストを描いたのか?-『ファンタスティック・ビースト』の考察

こんにちは、すりみです。
実は今期、ハリーポッターの授業(小島先生の英米文芸表象論)を受けていました。経済学部に所属する私にとってはとても新鮮で楽しい授業でした。

最終レポートではファンタスティックビーストについて考察しました。他の受講生から嬉しい言葉をもらって大満足する一方で、違う意見も知りたいなと思い、ここに一部を残しておきたいと思います。(※ネタバレ注意です)
何か思ったことがあれば、コメントをくださるとありがたいです!

以下レポートなので、硬い語り口です。ご容赦ください。

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まず初めに、今回の題名含め内容の変更点から、ダンブルドアが今回も(ハリーポッターにおいてもファンタスティック・ビーストにおいても)イギリスを表していることは間違いないと考える。今回のファンタスティックビーストから初登場の怪獣たちはイギリス発祥のヴィーガニズムを表していると考える。イギリスは動物愛護の先進国として知られているが、主人公ニュートが動物を駆使して戦うところに先鋭的な動物愛護法や最も多いヴィーガン人口を持つ動物愛護先進国としてのイギリスをとてもうまく表現しされていると感じた。

次にこれを踏まえ今回悪役として描かれているグリンデルバルドのメタファーについて述べたい。グリンデルバルドは、アメリカ合衆国を表していると考える。かつてイギリスの支配下にあったアメリカであるが、アメリカに渡ったイギリス人がイギリスの政治に参加できなかったことを発端にイギリスから独立し独自の文化を作り上げた。グリンデルバルドもダンブルドア(英)と血を分けた兄弟以上の関係を持つものとして描かれ、魔法人の自由を謳いダンブルドアと決別する。

イギリスはアメリカに到底及ばない存在であるが、アメリカと対等でありたいという願いが、グリンデルバルドがダンブルドアに手を出すことができないと主張しているところに表現されていると考える。また、私が見た限りでは魔法のみで戦っているグリンデルバルドと動物と協力し戦うイギリスの力が拮抗する場面を描くことで、イギリスがアメリカ同等の力を持ち得ることを示したのではないかと考える。動物の扱い方から畜産大国アメリカと動物愛護国イギリスの対比も鮮やかに明示されているように感じる。加えて、グリンデルバルドのマイノリティに寛容な態度(魔法人と非魔法人間の結婚を認めたり、自分の弟を殺してしまった魔法界での嫌われ者リタを受け入れたりしたこと)がアメリカの多様性を認める態度と一致しており、その一方で、自分たち魔法人の非魔法人に対する優位性も主張しているところに、アメリカ国内の人種差別の現状がうまく投影されていると感じた。

ここで問題になるのは魔法省の存在であるが、「彼らは動物を容赦なく殺す」と述べられており、イギリスではない。彼らはグリンデルバルトにもイギリスにも肩入れしないが大きな攻撃に出ることもないことから、EUを示していると考える。イギリスと同様EUの国々も世界の中心国ではなく、アメリカに口出しできるほどの力はないと示しているのだと思った。また、イギリスとEU主要国の宗教の違いが、ダンブルドアと歩みを共にしない魔法省に反映されていると考える。今回多く登場するフランスの魔法省はカトリックの多い地域であり、EU諸国の多くがカトリックの国である。それに対しイギリスはプロテスタント、英国国教会がほとんどを占め、カトリックに対してリベラルであることが知られている。魔法省が魔法人と非魔法人との結婚を認めないところに保守的な存在であることが窺える。また、大勢で群れてグリンデルバルドに対抗するものの何も手出しができないことから、無力なEU諸国対強い国アメリカという対比がなされていると感じた。

最後に、作品を通じて現代社会を描写することはもちろんであるが、ローリングは、ファンタスティックビーストという題名からも分かるように、ヴィーガニズムを表現することで、イギリス国民のイメージを気難しい貴族的国民から実は不器用な心優しい国民へと転換させたかったのではないかと考える。最近私自身菜食を始めたのでその知識とイギリス人が排他的なコミュニケーションをとるわりに、ペットにはかなり心を許しているという本を読んだことがあり、それらから着想してこのレポートを書いた。

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このようなレポートを書きました。何も調べずに書いたので、グリンデルバルドが一般的にはナチスドイツをモチーフに描かれていると考えられていることを知らず、一般論と真っ向から対立してしまっているのですが、どうなのでしょうか?正しいかどうかはわからないけれど、人それぞれに異なる解釈ができるのはファンタジーのいいところだなと思います。
考察募集しています🌱

このレポートにはベジタリアンの視点が折り込まれています。視点をできるだけ排除すること、客観的であること、が求められる今日この頃ですが、個人の視点がその個人をユニークな存在にしてくれるということも忘れないでいたいなと思いました。自分の視点を大事にすることが、自分を大切にすることの第一歩なんじゃないかなとも思っています。今回のレポートの読み合いっこでは、自分が普通だと思っていることも他の人にとっては新鮮なことってたくさんあるんだなと気付きました。


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今回は授業で出したレポートそのものでした。今後もいろんな作品の考察をしていきたいと考えています。
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P.S.
ファンタビ1で出てくるビーストで一番好きなニフラーと、主人公ニュート、その相棒ボウトラックルを描きました。
色つけしない方が良かったかもと若干後悔。ささっと描いちゃうの楽しい。

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