【日本団地巡り】その③ ユーカリが丘
今回は、千葉県佐倉市にあるユーカリが丘に行ってきました。とっても住みやすそうな街で、好印象でした。
基本情報
・来訪日:2023/2/3
・場所:千葉県佐倉市
・アクセス:京成本線「ユーカリが丘」駅付近
・開発時期:1971年
・開発主体:株式会社山万
・規模:8,400戸、250ha
・人口:18,875人(2023年1月末)
・価格帯:新築一戸建て4,170万円~
・コンセプト:未来の見える街・ユーカリが丘
成り立ち
ユーカリが丘は、「山万」という企業が主体となって開発が開始されたニュータウンです。世代的には、千葉ニュータウン(1970年造成開始)や港北ニュータウン(1974年造成開始)あたりが近く、高度経済成長期の住宅需要の高まりを受けて計画されたものとして捉えることが出来そうです。現在では京成電鉄・ユーカリが丘駅が設けられていますが、この駅はユーカリが丘開業後の1982年に、請願駅として出来たものです。つまり、まず街を作って、後からアクセス路線を整備した、という経緯になっています。(もちろん、事前に見込みはあったのでしょうが。)
ちなみに、「ユーカリが丘」という名前は、「殺菌作用や空気の清浄作用があり、環境にやさしい」というユーカリを、街の象徴としたことに由来するようです。おしゃれですね。ちなみに、ユーカリの葉を人間が生で食べるとやばいらしいです。
このユーカリが丘が持つ特徴は、こちらのページにまとめられていますが、ここでは「成長管理型」と、「街づくり企業」というキーワードから整理してみようと思います。
「成長管理型」の街づくり
一般的に、宅地開発は「分譲撤退型」が主流です。要するに、「宅地を造成し、家を建てて、売るところまでがビジネス」という考え方です。前回訪れた「コモアしおつ」なども基本的には分譲撤退型です。
一方で、ユーカリが丘は、売ったら終わりではなく、長期的な街づくりを指向しています。具体的には「1年に販売するのは200戸だけ」という制限を設けて居住世代のバランスを保ったり、「ハッピーサイクルシステム」という、ライフステージに応じた住み替えを推奨する仕組みを取り入れたりすることで、常に街の成長を促しています。
この結果、同年代に出来たニュータウンが高齢化に苦しむのを尻目に、ユーカリが丘は着々と人口を増やしています。この少子化の中でも、子供の数も増えているようです。数々の賞を受賞し、地価も周辺地域より1、2割高くなっていることからも、この成長管理型の街づくりが上手く行っていることが読み取れます。バブル期なんて、売れば売るだけ売れる、という状態だったと思うのですが、そこを我慢して、長期的な視点を持ち続けたことから、今の成功があるのだと思います。目先の利益にすぐ飛びついてしまう私が見習うべき姿勢です。
「街づくり企業」
開発主体である山万は、家を建てるだけではなく、街を作っています。具体的には、ユーカリが丘にある「商業施設」「ホテル」「ボウリング場」「街路樹」「BBQ場」」「病院」「特別養護老人ホーム」「保育所」など、約245に渡る施設を山万が所有しています。「警備」もやっています。極めつけは、「鉄道」です。不動産会社が、鉄道までやっているのです。街のあらゆる設備を自分達で作っているのです。これもう、昔の「街ingメーカー」とか、「シムシティ」をやっているような感じだと思います。(なお、私はやったことないです。)
自分達で作っているので、それだけ自分達がやりたいことも実現できます。そのため、山万が開発した鉄道である「ユーカリが丘線」は、ユーカリが丘のすべての住居から徒歩10分以内でアクセスできるようになっています。「サービス充実のために業種を問わずに挑戦する」というポリシーを体現していると思います。なんでも前例のないものはやらない、という私の生き方を恥ずかしく感じます。
行ってみての感想
ユーカリが丘駅から北口を出てまず思ったのは、とにかく「広い」と思いました。プロムナードも広い、ビルも大きい、道路も広い、空も広い、という感じです、開放感がありました。
ざーっと歩いて反時計回りに一周してみました。良くも悪くも気になる点がないというか、調和しているな、と感じました。起伏もあまりないですし、違和感を感じるような施設もなく、目を引くような何かもありません。まあ、住む場所としてはそれが望ましいのだと思います。記事にするようなことをあまり見つけられなかったので、とりあえず写真を並べたてます。
今後の展望
これまでは順調な歩みを見せてきているように思えるユーカリが丘の今後はどうなっていくのでしょうか。その構想は、こちらのページにまとめられていました。
計画の軸としては、「北口再開発」と「ゾーニング」でしょうか。
北口再開発
ユーカリが丘駅の北地区に、オフィス・商業・レジデンス・多目的施設などの建設を計画しています。この背景には、高齢化への課題意識があるようです。施設を集積させることで、高齢者にとっての利便性を保つとともに、昼間人口の増加も企図しているようです。
なお、この北口再開発においては、山万から都市計画提案を佐倉市に対して提出し、佐倉市にて審査の上、都市計画を変更しているようです。初めて知りましたが、都市計画法の中で「都市計画提案制度」というものが定められており、地権者が自治体に対して都市計画の決定や変更を提案できるようになっているんですね。上述のユーカリが丘駅北口再開発が、まさにその手続きを踏んでいるようです。(参照先)
ゾーニング
ユーカリが丘のエリアを「福祉の街エリア」「次世代交通拠点整備エリア」「地域産業振興エリア」「観光街並み誘導エリア」の4つを軸にゾーニングし、新たな魅力の創出を図るようです。こちらも、前者2つが特に高齢化に対する施策、後者2つが人口減少という社会状況に対する施策だと読み取れます。
なお、自治体である佐倉市の都市計画マスタープランの中でも、ユーカリが丘に対する構想は触れられていますが、山万が言っていること以上のことは特に出てきていませんでした。やはり山万が主導していく、ということになろうかと思います。
「高齢化」と「人口減少」
全国共通の話となりますが、昨今の街づくりにクリティカルな影響を及ぼす社会状況は、高齢化と人口減少です。これまで順調に成長を続けているユーカリが丘ですが、この2点は、ユーカリが丘も今後避けては通れません。山万および佐倉市どちらも強く意識していることはここまで紹介した資料からも読み取れます。
社会が変化する中で、ユーカリが丘はこれまでと同様、時代に合わせて変化する、という意味での一貫性をもって対応していくことになりそうです。生き物のように姿を変えるユーカリが丘の今後を楽しみにしたいと思います。
居住地を考える上での学び
・街の成長に最もコミットしているのは誰か。もしかしたら、首長が選挙のたびに代わる自治体よりも、街の成長にコミットする民間企業の方が長期的な目線での責任を持てるのかもしれない。
・都市計画提案制度が活用されていることは、住民・民間企業と自治体の連携が密接に取れていることの証左となるかもしれない。
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