【日本団地巡り】その② パストラルびゅう桂台
前回のコモアしおつ編に続く第2弾となる団地巡り、今回はその3駅隣の猿橋駅からアクセスできる「パストラルびゅう桂台」について書きます。
前回のコモアしおつ編はこちら。
基本情報
・来訪日:2023/1/8
・場所:山梨県大月市
・アクセス:JR中央本線猿橋駅から徒歩4分+エレベーター1分
・開発時期:バブル崩壊期(1997年販売開始)
・開発主体:JR東日本、清水建設
・規模 650区画
・人口:約1,350人(2015年)
・価格帯:440万円(1区画)~720万円(1区画)
・コンセプト:豊かな緑に包まれる。ONとOFFが自然と切りかわる心地のよい暮らしを叶える街(HPより)
成り立ち
計画時
パストラルびゅう桂台の歴史は、ネットで調べてみてもあまり情報が出てきません。となると、大月市の図書館あたりに赴いて調べるのが筋だとは思うのですが、なかなか時間も取れないので、今回は以下のインタビュー記事をインプットにしてみることにします。事業主である清水建設とJR東日本の方が対談をしています。
インタビューの中で、パストラルびゅう桂台の位置付けが垣間見えるのは以下の部分です。
ここからすると、まずは都心で働く人をターゲットにしていることが分かります。その上で、自然環境という付加価値を武器に、アウトドア趣向の人に訴求しよう、というのがコンセプトのようです。コモアしおつと似たような感じですかね。土地柄としても、山を切り開いて新規に宅地を造成しています。
計画の頓挫:土砂災害警戒区域指定
「当初は最大994区画の開発を予定していた」とwikiに記載がありますが、2023年現時点での計画は650区画の計画に縮小されています。この要因としてあげられるのが、2001年に施行された「土砂災害防止法」による、土砂災害警戒区域への指定です。山を切り拓いて開発された桂台地区は、急傾斜地の崩壊と土石流の警戒区域に指定されたことで新規の住宅開発が難しくなり、計画を縮小せざるを得なくなりました。これが街の計画上はマイナスの影響を及ぼしたことは間違いないと思いますが、「土砂災害防止法」は、まさに山沿いの新興住宅において土石流の被害が出た6.29豪雨が契機になった(Wikipedliaより)ようなので、この法律による警戒区域への指定により住民の命は守られた、という見方が適切だと思います。
行ってみての感想
長いトンネルを抜けるとそこにはエレベーター
パストラルびゅう桂台は山の上にあるということで、駅からのアクセスが問題になります。コモアしおつは、駅から長大エスカレーターと斜行エレベーターを走らせることでこの問題を解決しましたが、パストラルびゅう桂台は地下通路+エレベーターでこの問題を解決しています。シンプルというか、真っ当な発想だとは思います。地下通路は結構長いですが、明るさが確保されている上に防犯カメラが随所に配置されており、安全に配慮されていそうです。なお、基本的には住民用で、住民は毎月4,500円の管理費を払っているようです。部外者がこのエレベーターを利用することは基本的には歓迎されないと思います。
なお、かつては「シャトル桂台」というモノレールがこの役割を担っていたようです。モノレールと言いつつ、建築基準法上は斜行エレベーターだったみたいです。故障が相次いだので、2001年の運行開始から5年ほどで運転を休止し、現在のエレベーターに引き継がれたようです。(wikipediaより)
ということは、1997年の販売開始から、シャトル桂台の運行開始の2001年までの4年間は、猿橋駅からひたすら上り坂の道路をせこせこ登っていたのでしょうか。また、シャトル桂台が運休した2006年から、エレベーターの運用開始の2011年までの5年も同じです。一体どうしていたのでしょうか。代替バスとかを走らせたのでしょうか。また調べてみます。
街並みは?
街並みは、やっぱり綺麗です。あまり古さは感じません。まあ、まだ販売から26年くらいなので、そうですよね。子どもが鬼ごっこをしていたり、若い世代もいるし、廃れているという感じはしません。基本的にどの家にも庭があり、薪が積まれているお宅も数多くありました。アウトドア趣向の人が多いという話に説得力があります。
ただ、道を進むとすぐに、未開発の空き地が出てきます。いわば"崖"という感じです。
空き地は荒れているわけでもないのですが、期待された状態ではない、ということが強く感じられ、寂しさがあります。いつもこの空き地の景色を見るのはどういう気持ちなのか…と思ってしまいます。
あとは、奥に行くと「山梨県立やまびこ支援学校」があります。場所も景色も、とにかく「隔離」されているように思います。人里からは離れたゆったりした暮らしを想定して開拓された土地が、「人里から離れた」という1点はそのままに、福祉施設の建設に利用されている印象を受けます。いま、新しく福祉施設を作ろうとすると、住民からの同意を得られにくい状況にあることは想像に難くありません。ましてや、相模原障害者施設殺傷事件が起きた津久井やまゆり園は、この大月市から地理的にも遠くない場所です。とは言え、これだけ隔離された場所に福祉施設を配置することは、社会的包摂という概念とは対極にあり、街づくりとして正しい姿なのか、という疑問は抱いてしまいます。近隣住民と交流するようなイベントも特に見つけられませんでした。(ネット上に情報がないだけかもしれません。)
そして何より気になるのは、やはり商店が一切ないことです。これは住む上では致命的ではないでしょうか。最寄りのコンビニは猿橋駅前のセブンイレブンで、スーパーに至っては約3km離れています。一般的に、コンビニの商圏は3,000人と言われているらしいので、コンビニを誘致するには足りない、ということなのでしょう。しかし、利便性としては不便なのではないか、と思います。体調悪い時とか、どうするんでしょうか。みんな一人暮らしではないから、何とかなるんですかね。
今後の展望は?
パストラルびゅう桂台の今後について垣間見える資料として、大月市が制定している「おおつき創生都市計画マスタープラン」の第三編に「桂台に関する都市計画の検討」という資料があります。この中で、桂台地区の将来の方向性は、以下の通りまとめらています。
住宅地としての機能は保ちつつ、未利用地については福祉施設を誘致します、ということですね。上記で触れたやまびこ支援学校は、まさにこの誘致の一環で作られています。これに対する住民の意見をまとめた部分を以下に抜粋します。
ここからは私の主観ですが、住民は「何もないよりは福祉施設を誘致してもらった方が良いが、本当は商業施設やアウトドア施設が望ましい」と考えているように読み取れます。
今後も住民と折衝を重ねながら街づくりをしていくものと思いますが、前途洋々とはいかない、という状況に思えました。
居住地を考える上での学び
・まだ法整備がなされていないような災害がないか、その災害が発生するリスクある場所か、は出来るだけ考えるべき。
・計画通りいかないものなので、計画通りいかなかったケースでも耐えられるかを想定するべき。(商店がない、とか)
長々と書きましたが、もし読んでくださった方がいれば、ありがとうございました。
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