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「令和では形式張った時間を生きてちゃだめですよ」と話す堂本剛は最高でした。ENDRECHERI at 横浜アリーナ

令和元年。大型連休を終えて以降はお祭りムードも穏やかになりましたが。令和最初の月末は、昨年アルバム『平成』をリリースした折坂悠太のワンマンライブを東京キネマ倶楽部で観てきました。言うまでもなく、最高でした。「僕はこの国の未来をまったく楽観視はしていないわけですけど。それぞれの持ち場でがんばりましょう。その先に特異点みたいなものがあるのかもしれない。よい令和にしましょう」ということを、平成元年生まれの折坂くんはMCで話していた。そんなことを聞きつつ、はたと思い出したのは、自分が令和最初のライブとして観たENDRECHERI(エンドリケリー)。そうです、あの誰もが知る国民的ポップデュオである、ジャニーズ事務所を代表するグループであるあのKinki Kidsの堂本剛くんがやっている本格的ファンクミュージックのプロジェクト。平成の終わり頃にジャニーズ好きの友人から声をかけていただき、「え!それは行ってみたい!」と即答し、5月8日の横浜アリーナ公演に行ってきたのだった。

 私がKinki Kidsのコンサートを観たのは確か1997年?か98年の東京宝塚劇場での公演のみで(当時高校1年生とかです)、そこから20年の時を経てENDRECHERIを全く予備知識なく(=音源を何も聴かず)観に行ったわけだが、ほとんど誰もが日本では体験したことのないレベルのファンクネスをまさかの横浜アリーナという会場規模のワンマン公演で炸裂させていて、正直、腰抜かしました。昨年サマーソニックにENDRECHERIは出演していたそうで、既にフェスも経験済みとはいえ、まあサマソニもよいけど、これはもう、朝霧JAMに出てください!って思いました。入場規制とか気にせず、みんなで朝霧の夜に延々と観たいやつですよ。

 この日のENDRECHERIは横浜アリーナの大きいステージをフルに活用して、ステージ上にはなんと16人。アンコールなんか、ひとりずつ回していくわけで計30分のファンク大セッションですよ。で、トータルなんと2時間40分。大満足、おなかいっぱい!でもまた観たい!!ってすぐになってしまう堂本力があった。それが何よりすごいと思ったわけです。というか、こんだけKinki Kidsやジャニーズということからは想像しづらいほどの音楽をやっていても、結局あの誰もが知る堂本剛の歌声だからこそ、信じられないほどの安定感、安心感がある。スティーヴ・エトウさんがメンバーにいて、レジ袋のパフォーマンスしてるのとか最高でした。横浜アリーナなのに!めっちゃ贅沢だな、なんだこれ?!みたいな。そして、剛くんは心から音を楽しんでるし、何より楽器もうまい。途中、三味線でも弾いているのかと思うようなギターソロとかもありまして、凄腕ミュージシャン従えつつ、やっぱりジャニーズ事務所に所属する“堂本力”みたいなもの(?)で完全にファンを魅了してました。そんなことを考えつつ会場の様子含めものすごく興味深く楽しんでいたら、途中、1997年頃のフジテレビの番組『LOVE LOVE あいしてる』のなかでKinkiのおふたりがギターを始めた「カムカムギターキッズ」のコーナーで剛くんが初めて曲を作ってきた時の画が突然ぶわーっと思い出されて急に感慨深くなったりもして。ギターを始めた頃の剛くんのあの没入感は変わらずにここまで深まってきちゃってたのだな、ともよくわかりました。三つ子の魂、百まで。あの頃TOKIOも大好きだった(ファンクラブに入っていた)し、コーナーに長瀬くんがゲストに来たりしていたな、後見人は吉田拓郎さんと坂崎幸之助さんという豪華さだったなとか。結局、Kinkiの歌う素晴らしき歌謡曲やLOVE LOVE〜堂本兄弟でのバンドメンバー(バンマスは武部さんですし)音楽的英才教育の賜物が堂本剛のこの形ってことやんな……と。そこから20年以上ワープして、こうして剛くんの紡いできた路の先で再び巡り合うことができて光栄でした。ENDRECHERIは、誰もあの時には想像もしえなかった方向に発展し、かなり誰も観たことのない凄まじさを携えつつある……という感じだけれども。とはいえ、こんな公演をアリーナでワンマンでできてしまうのは、ジャニーズとしての基礎力と応用力あってのことでしかないわけで。ちなみに会場の音がめちゃくちゃいい感じだったのも印象的でした。

「この日のENDRECHERIのライブで唯一ものすごく欠けていたものがあるとするなら、それは私の手元にあるべきアルコール類だけだったな……」と終演後にツイートしてしまったりもしましたが(途中で売りに来てほしいと何度思ったことか。。笑 )ジャニーズの公演はお酒類は販売無しというルールに則っていたようです。でもよく考えたら、むしろあれをアルコールも無しに熱狂できている彼のファンはある意味めちゃくちゃにラディカルである、とも気づく。ていうかほとんどみんなKinki Kidsのファンに見えるのに、これこんな前のめりで踊って楽しんでんの?!という。

「新曲で、ハッピーバースデーイ トゥユー♩ っていうフレーズがあんねんけど、それで会場のみんなでリズムに合わせて席に座ってみてください」みたいな展開になり、「to you」の部分を剛くんがその場で自由に拍子を指示するから、それに合わせ全員が高速スクワットかのごとく席に座ったり立ったりするという謎のドS、JBみたいな場面があったのだが(すみません、うまく言葉で説明できない笑)それも一見するとただのスーパーアイドル堂本剛のお戯れのようにも見えるが、変拍子のリズムをみんなの身体に叩き込む時間ともいえて、剛くん確信犯やなあと関心しつくしてしまった。

2017年に耳の病気を発症しなかなか思い通りにライブなどはできていないなかでの久々のコンサートがこの日だったということで、「今日はね、おもいつきでいろいろやってますけど。みんなに会うだけの日です。」とか、のっけから緩いMCをかまし、本調子ではないんですよ感を出しつつも、あれはお客さんも自分も肩肘張らずに自由にファンクを楽しませるための口上に過ぎなかったのだな、と最後には思った。

「いや〜 令和になりましたけどね。令和では形式張った時間軸を生きてちゃだめです」とか、最終的には「今日はほとんど決め事を作らずにやってみましたけど。変わったライブになったのでは、と。みなさんがファンクを勉強すればするほど、変なライブがみれるようになります。自由の中にルールがある、という音楽なので」というようなことを話していた剛くん。

怒涛の160分を経て会場外に出てきたら、西の空にボワっと浮かぶ三日月が見えて、なんだか縁起がいいなあと思った。奈良の奇人に楽しませてもらったなあ、と。なんか音楽の神様と繋がっている感じのする人だからだろうか。昨年の4月に観た小沢健二の「春の空気に虹をかけ」で体験した熱狂みたいなものを思い出した。あの時は、東京国際フォーラムがまるで大きな教会のように感じられてゴスペル感がみなぎっていたのだけど。今回のはまた別の種類の神様だったな。

こいつあ春から縁起がいいや、という気分で充ち満ちた夜でした。

 こんだけのことを、まずは既存のファン層にとことん教育をして一緒に楽しみつつ浸透させ、地固めしてきてるのがそもそもすごすぎる。自分の既存の支持母体を地固めした上で、ジャニーズ外にも少しずつその噂が流れ始めている、というような状態が今、といった印象だったような。つまりENDRECHERIは、「ジャニーズ“なのに”あんなファンクやっててすごい」ではなく、「ジャニーズ“だから”あんなファンクすらも届けられるようになってきているのだ」ということだと思う。そこに関しては剛くん、相当頭を使いながら、自分がここまで積み上げてきた信用と才能も駆使しながら、いろいろな枠を徐々に崩していこうとしているなということがよくわかった。(し、実際そいうことは言葉にせずともいろいろと企んでいる様子が、発売になっていた『音楽と人』での堂本剛インタビューを読んでみるとさらによく理解できて楽しみになってしまった。)

 そりゃあサマソニに出演すれば、まあフェスに来るような音楽好きたちが「え〜!剛、おもしろいじゃん!音楽ファンにもっと届けてほしい」とか言う要素は十分すぎるほどに携えているけど、それを凌駕できるくらいの圧倒的な数の支持母体を、そもそもKinki Kidsは持っているわけですから。

 勝手に突っ走る形でやるんじゃなくて、ちょっとずつ壁を切り崩して行っている剛くんが、非常に興味深い。だてにトップアイドル20年以上やっていませんて。

 「週末にブンブブーンだけ観て安心していた自分、ほんとすみませんでした!!反省します!!」と思いました。そしてこうなってくると光一くんの「EndlessSHOCK」だって体験しておかねば、という気分になってしまうし、ENDRECHERIの音源を購入しようとしたはずなのに、KinkiKidsの往年の名曲も一緒に振り返ったりしているうちに、しばらく観ていなかったEアルバム以降とかも気になってしまうし、あのスーパーデュオの沼は深そうだなとかなり戦慄しておりまして。

 …と、折坂悠太くんのライブを観た後になぜか、ENDRECHERIで感じたこういうことを書き留めておきたくなってしまいました。歌って、音楽って、何よりファンと演者という対向関係でなく、会場全体で熱くなるって、すごいですよね、ということを思った。そんな感じです。

 6月からはENDRECHERIはホール公演が始まるそうです。絶対ワンマンが面白いので、ちょっとでも興味ある方で行く機会を得た場合には体験されることを心から、お勧めします。(大丈夫です、楽しさのクオリティは世紀のスーパーアイドル・堂本剛氏によって担保されていますので。やっぱジャニーズはすごい。)私もまたいつか観たいなあ。

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