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「インセプション」はハリウッド版「カメ止め」

「インセプション」がハリウッド版「カメラを止めるな!」であることは論を俟たない。

どちらも公開時は着想の奇抜さや劇中のギミック面が話題になったが、その本質はモノ作りに関しての映画であり、人に夢を見せる仕事=クリエイターたちの奮闘を描いたドタバタお仕事映画だからだ。

この記事では「カメ止め」風モノ作り映画として見た場合の「インセプション」のストーリーを騙っていく。


夢を見ることを止めるな! インセプション大作戦!

~あらすじ~

ディカプリオ演じるコブはやり手の映像ディレクター。
劇中に十重二十重のギミックを凝らす作風で、一流のハッタリストとしての評判を欲しいままにしていた彼に、謎の富豪ケン・ワタナベからの制作依頼が。

クライアントの希望は、とある大企業の二世社長にブッ刺さる感動巨編。
坊ちゃんの人生変えちゃうくらいの映像体験を!と無茶振りされるも、
莫大な報酬をチラつかされ、毎日仕事漬けで子供の待つ家庭に帰れない生活にうんざりしていたコブはこれを引き受ける。

敏腕ADのアーサーと共に、気鋭のアートディレクターアリアドネやカメレオン俳優のイームス、照明兼スタントドライバーのユスフといった一流のスタッフ陣を揃え、制作会議に花咲かせる一同。

途中、アリアドネから『今回は雇われ仕事なのに監督のカラーが出過ぎでは』という指摘が入るも、コブはこれをスルー。
彼は同業者だった妻に離別されて以来、彼女への妄執が作品にも色濃く滲み出るのを抑えきれず、企画本来のコンセプトを台無しにしてしまうことが度々あった。
約一名の不安をよそに、制作は着々と進行していく。

かくして二世の乗る飛行機内でのサプライズ上映会が決行されるのだが、
事前のリサーチ不足がたたって予定された段取りは早々に破綻。
生放送ならぬ生上映故の現場アクシデントも重なり、作品は第1幕から早くもグダグダの様相を呈する。

裏方はじめスポンサーのケン・ワタナベまで動員した現場スタッフの奮闘により、天地返し状態でグチャグチャだった作品は第2幕、第3幕と徐々に立て直されていくのだが、ここに来て懸念されていたコブの悪しき作家性が暴発。
彼の元妻にクリソツな女優が現場に乱入し、台本外のクソアクトを連発したのだ。

心のモルパンチを抑えきれない

暴走した監督のエゴに乗っ取られ、しっちゃかめっちゃかになった作品を前に、本来の観客たる二世は睡魔の誘いに屈する
もはやこれまでと全てを吹き飛ばす爆破オチの準備に入るコブに、豪腕女傑プロデューサーと化したアリアドネが喝を入れて軌道修正に乗り出す。

彼女の土壇場でのアドリブが功を奏したこともあり、コブのハタ迷惑な作家性はひとまず軟着陸に成功。
覚醒した二世への観客サービスも上々で、見事にエンタメとテーマ性が両立したところに畳みかけるような爆発とハンス・ジマーつるべ打ちのクライマックスで万雷の拍手に包まれる機内。
『僕も何か新しいモノ作りがしたい』とご満悦な二世と、このままずっとここで作品を見ていたいと宣うケン・ワタナベを引きずりながら、良質な仕事を見届けた後の心地よい充足感で満たされたコブたちは無言で家路につくのであった。

かつて仕事に夢中になるあまり家庭を去った元妻とは対照的に、子供たちの前へと帰還を果たしたコブ。
リビングのテーブルでは、コブが仕事場で愛用していた銀のコマが回り続けていたが、もはや彼がそれを顧みることはなかった。。。<FIN>




こう書くとなんだかコブとアリアドネの凸凹バディムービーみたいな。
実際はブロマンス寄りなのに。

そもそも今更こんな記事を載せたのは、今夏に「カメ止め」仏版リメイクの「キャメ止め」が公開されたからで。
それにしたって鮮度を欠いてるのは書いてるやつがゾンビだもの。
そりゃ腐ってる。
イムアサいいよね

劇場を出て帰宅しても何かが心に残る(=インセプションする)モノ作りは大変だが素晴らしいね。


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