先輩
ちょうどこんな夕暮れ時に、
彼を呼び出した。
そう、告白に至るまでのヒストリーを記憶整理がてら書こう。
今回は彼との"出会い"を書く。
(ちょっと真面目且つ長い内容になっている)
出会いは私が高校一年生、入部先に彼がいた。
同じ部活と言えど、違うパート、そして彼は部長。
ちょっと前まで中学生だった女子部員からすると、
落ち着いていて、大人びた雰囲気の二つ上の先輩なんてものは、
"クールな先輩像"そのものだった。
女子部員の大半は彼をカッコいい憧れの先輩として慕っていた。
もちろん、私もそのうちの一人…ではなかった。(?!)
と言うのも、
当時の私は三回も告白する程(全振られ)、
好きだった子のことを引きずったまま高校に入学したものだったから、
興味を持つことが無かった。
部活動でも挨拶をする程度の関わりだったので、
惹かれる要素以前に、彼を知るきっかけも無かった。
高校三年生の部活動なんて夏頃には引退するんだから、
ことさら関わりもなく彼は卒業していった。
ただそんな薄い関わりの中でも、
唯一、彼に対して心が反応した記憶があった。
卒業式後の部内送別会での記憶。
卒業される先輩方が一人ひとり、みんなの前に立って、
部活動での想いを語る一幕。
先輩方の想い、残る私たちへのメッセージに、
誰しもが涙し、別れのひと時を惜しんだ。
最後に部長である彼がみんなの前に立って、
いつものように落ち着いた声色で話し始めた。
どんな時も冷静沈着で、仲間がふざけていたらピシャッと叱ることができる彼だから、
ここでも淡々と想いを語っていた。
みんなも同じように感じていたであろうその彼の声が、
次第に震え、潤んだ響きになった。
その場にいたほとんどが、ハッとしたんじゃないだろうか。
常に落ち着いて、みんなをまとめてきたクールな彼が、
人知れず責任を負い、耐えてきたことに。
彼の右に偏った立ち方、窓に逸らされた目線、
所在なさげに握る両手、
窓から射す日に照らされる彼の涙、
教室の温度、みんなのすすり泣く音が
今も鮮明に残っている。
付き合っている今だから、その古い記憶が鮮明になったのかは分からないが、
その場面だけ映像として頭の中に残っている。
ーーーもっと泣けたら良かったのにね。
その時の彼を寂しく、感じた。
きっとあれが私にとって初めて彼を心に感じた出会いだった。
男子高校生姿の彼の泣き顔を今も思い出せる私は、
間違いなく世界で一番の幸せもの(変態)である。
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