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eが無理数であることの証明

連日の雨の報道に嫌気がさす今日この頃。いつもどおり二匹の猫が談笑しています。

ミケ:あつ~~~~~~~!!!!!

マロ:どうしたの?そんな大声出して。

ミケ:いやめっちゃ蒸し暑くない!最近雨ばっかでなんかジメジメするし。

マロ:まあでも梅雨だしねー。

ミケ:だとしてもだよ~。なんか梅雨にがてだな。

マロ:じゃあさ、気分転換に数学しない?

ミケ:お~いいね。でも僕さいきんは暑さであんまり勉強できてないんだよね。

マロ:ぼくも提案しておきながら結び目理論はまだ勉強途中なんだよねー。

ミケ:えー、じゃあどうするの?手元に数学の本もないから積分の問題も出せないし。

マロ:問題か…。そうだ、ちょっと素朴な問題を考えてみない?

ミケ:素朴な問題?

マロ:そう、例えば$${e}$$が無理数の証明とか!超越数の証明はちょっと難しそうだけど、無理数だったらいけそうじゃない?

ミケ:おー、確かに面白そう…!でも僕たちにできるかな?

マロ:それはやってみたらわかる!とりあえずやってみようよ。

ミケ:当たって砕けろの精神だね!!よーし頑張るぞ!

マロ:おー!

どうやら今日は$${e}$$が無理数であることの証明について考えてみるようです。


証明するとはいったものの、いきなりだとどうすればいいかわかんないよね。とりあえず$${e}$$よりも簡単な数について証明してみようかな。

かんたんな無理数…ぱっと浮かぶのが$${\sqrt{2}}$$だし、$${\sqrt{2}}$$について示してみようかな。

まず、無理数が何なのかの定義を確認しよう!定義があいまいなままだと証明のしようがないしね。

無理数(むりすう、 英: irrational number)とは、有理数ではない実数、つまり整数の比(英: ratio)(分数)で表すことのできない実数のことである。実数は非可算で有理数は可算個であるから、無理数は非可算個あり、ほとんど全ての実数は無理数である。

Wikipedia

ふむふむ、整数の比で表せない実数のことを無理数というんだね。逆に言えば無理数じゃない数はすべて整数の比で表すことができると。

$${\sqrt{2}}$$が整数の比で表せない、を直接証明するのは難しいし、ここは背理法を使うのが賢明だね。つまり、$${\displaystyle \sqrt{2}=\frac{p}{q}}$$と置いて、矛盾を見つけていけばいいんだね。

証明

$${\sqrt{2}}$$を有理数と仮定する。このとき$${p,q}$$を自然数として、$${\displaystyle \sqrt{2}=\frac{p}{q}}$$と表せる。ただしこの右辺の分数は既約分数である。

さて、両辺を二乗すれば$${\displaystyle 2=\frac{p^2}{q^2}\leftrightarrow p^2 = 2q^2}$$であるから、$${p^2}$$は2の倍数である。ここで$${p}$$は自然数であるから、$${p}$$自身も2の倍数でなければならない。

したがって、$${p=2m}$$と書くことができる。これを先ほどの式に代入すれば、$${\displaystyle 2q^2=p^2=(2m)^2=4m^2 \leftrightarrow q^2=2m^2 }$$となり、$${q^2}$$も2の倍数だとわかる。

$${p}$$とまったく同様にして、$${q}$$自身が2の倍数であることが示されるが、これにより$${p,q}$$が共通の因数$${2}$$を持つことになってしまう。

これは、$${\displaystyle \frac{p}{q}}$$が既約分数であるという仮定に反するので、$${\sqrt{2}}$$は無理数である。$${\square}$$


補足として、$${p^2}$$が偶数なら$${p}$$が偶数であることを示すよ。これもそのままじゃ示しずらいから対偶をとることにしようか。

示したい命題の対偶命題は「$${p}$$が奇数なら$${p^2}$$が奇数」だね。

ところで$${p=2m+1}$$と表せるから、$${p^2=(2m+1)^2=4m^2+4m+1=2(2m^2+2m)+1}$$とできるね。

よって、対偶命題が示されたから元の命題も示せた!


それじゃあ本命の$${e}$$が無理数であることを証明しようか。これもやっぱ背理法で示すのが良さそうだね。でも$${e}$$を有理数で置いたとしてどうすればいいんだろ?

さっきの場合は$${\sqrt{2}}$$の性質に「二乗したら$${2}$$になる」ってのがあったからうまく示せたんだよね。じゃあ同じように$${e}$$の性質をうまく使えばいいのかな。

そもそも$${e}$$の定義はいろいろあるけど(もちろんすべて同値)、どれを使うのが一番いいかな?

うーん、とりあえずここでは一番扱いやすい$${\displaystyle e=\sum \frac{1}{n!}}$$を定義に採用しようかな。

となるとすぐわかることが$${e>2}$$だよね。これには$${n=2}$$まで級数を計算すればいいね。

第n部分和を$${\displaystyle S_n=\sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}}$$と置くと、この数列は明らかに単調増加だから、いい感じに上から抑えられるといいんだけど。

ちょっと天下り的だけど、$${\displaystyle \frac{1}{k!}<\frac{3}{2^k}}$$が$${k=0,1,2,\cdots}$$では常に成り立つことから、

$${\displaystyle \sum \frac{1}{n!}<\sum \frac{3}{2^n}=3}$$

が成り立つよね。つまり、$${e}$$は$${2 < e < 3}$$を満たすことが分かったね。これをうまく使って証明してみようか。

証明

$${e}$$を有理数と仮定すると、互いに素な自然数$${p,q}$$を用いて$${\displaystyle e=\frac{p}{q}}$$と書ける。

一方テイラーの定理より関数$${e^x}$$は

$${\displaystyle e^x = \sum_{k=0}^n \frac{x^k}{k!}+\frac{e^{\theta x}}{(n+1)!}x^{n+1}\quad (0<\theta<1)}$$

と書けるから、$${e}$$自体は

$${\displaystyle e= \sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}+\frac{e^{\theta}}{(n+1)!}\quad (0<\theta<1)}$$

と書ける。ここで$${n=q}$$とすれば、

$${\displaystyle e= \sum_{k=0}^q \frac{1}{k!}+\frac{e^{\theta}}{(q+1)!}\quad (0<\theta<1)}$$

と書くことができる。この式で両辺に$${q!}$$をかければ

$${\displaystyle q! e=\sum_{k=0}^q \frac{q!}{k!}+\frac{e^\theta}{q+1}}$$

よって、

$${\displaystyle q! e-\sum_{k=0}^q \frac{q!}{k!}=\frac{e^\theta}{q+1}>0}$$

ここで左辺は明らかに整数であるから、当然右辺も整数となる。したがって先ほど述べた$${e}$$の性質より

$${\displaystyle 1\leq\frac{e^\theta}{q+1}<\frac{3}{q+1}}$$

両辺分母を払えば、$${q+1 < e^{\theta} < 3}$$だから、$${q=1}$$で確定する。($${q>0}$$に注意.)すなわち$${\displaystyle e=\frac{p}{1}=p}$$となり、$${e}$$は整数(自然数)となる。

しかし、$${e}$$の性質より$${2< e <3}$$であることに矛盾する。したがって$${e}$$は無理数である。$${\square}$$


おおおー!なんか証明できたね!!

個人的にはテイラーの定理を使うのが一番の勘所な気がするね。でも$${e}$$の級数表示から考えれば割と自然な導出なのかな?

それにしても、こんなにきれいに示せるなんてすごいね。ちょっと感動しちゃった。背理法のいい練習にもなったのもいいね。



証明に取り組み始めてからおよそ2時間。ようやく証明が完了し、ほっと一息つく二匹です。

ミケ:ふおお~~~。証明完了だ!!

マロ:つかれたーーー!!

ミケ:$${e}$$って結構身近な数だけど、無理数の証明がこんなに大変だとは思わなかったよ。

マロ:でもいい暇つぶしになったんじゃない?

ミケ:だね、なんかちょっとしたパズル解いてたみたいなきぶん。

ミケ:いい頭の体操になったし楽しかった!

マロ:おおーー!じゃあ次は超越数であることを証明してみようよ。

ミケ:え~~~。それはちょっとまた今度にさせて…。

マロ:さすがにちょっと疲れたか(笑)

ミケ:とりあえず今週の分のネタもできたし今日はあとは寝る!

マロ:おー。ぼくもねようかな。

そういうと二匹は丸くなって、飼い主さんが返ってくるまでの少しの時間をゆっくり過ごしました。


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                            ーミケ

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