積分の計算問題のコツ#1
ミケ:今回からは積分の計算問題を解くときに僕が意識していること、コツなどを紹介していくよ。
ミケ:もちろん僕もすべての計算問題が解けるわけじゃないから、これだけやってればOKってわけじゃないけど、ある程度の問題はなんとか解けるようになると思うよ!
☆の見方について
コツの紹介に入る前に、☆の見方について説明していくよ。
☆ :今すぐにできる。とても簡単。
☆☆ :すこし演習が必要。コツを掴めばできる。
☆☆☆ :難しい。ある程度の問題の慣れが必要。
※あくまでミケの独断です。
基本的にこの三つに分けて紹介していくよ。慣れないうちは☆1つから意識していくといいと思う!
それじゃあ今からさっそく紹介していくね。
積分のコツ
1.被積分関数と積分上限・下限に注目(☆)
定積分のテクニックだね。
実際に計算する前に被積分関数と積分上限・下限をよくみてみることで計算量を大幅に減らすことができることがあるよ。今から紹介するね!
$${\displaystyle \int_{-a}^a f(x)dx = \begin{cases} \displaystyle2\int_0^af(x)dx &(f(-x)=&f(x))\\0 &(f(-x)=-&f(x))\end{cases}}$$
これは積分範囲が[-a,a]のときに、被積分関数が偶関数だったら[0,a]に変換出来て、奇関数だったら定積分を0にできる"公式"だね。
定積分の意味を考えればこの式が成り立つのは直感的に明らかだけど、一応証明もしておくよ。
$${\displaystyle \int_{-a}^a f(x)dx =\int_0^a f(x)dx + \int_{-a}^0 f(x)dx=\int_{-a}^a f(x)dx =\int_0^a f(x)dx - \int_0^{-a} f(x)dx}$$
ここで最後の式の第二項に$${x\to-x}$$の置換をしてあげれば、
$${\displaystyle \int_0^a f(x)dx + \int_0^{a} f(-x)dx=\int_0^a f(x)+f(-x)dx}$$
あとは$${f}$$が偶関数なら被積分関数は$${2f}$$、奇関数なら$${0}$$となって証明すべき式を得るね。
このコツ(コツといっていいのかも怪しいけど(笑))のすごさはその手軽さにある!
積分範囲は見ればすぐに分かるし、偶関数か奇関数かの確認は多くの場合に積分自体を計算するより楽だよね。
ただ問題はこれが定積分のときしか通用しないってことだね。不定積分のときはあきらめて愚直に計算するしかない。
そういうところもあって基本的に定積分のほうが不定積分より計算のテクニックが多いんだ。
例題:
$${\displaystyle \int_{-1}^{1}2x^3+3x^2+xdx}$$
解答:
$${2x^3,x}$$は奇関数、$${3x^2}$$は偶関数だから
$${\displaystyle \int_0^13x^2dx=1}$$
2.半角の公式を使う(☆☆)
今度は定積分にも不定積分にもどちらにも使えるテクニックを紹介するよ。
それは三角関数の半角の公式が使えないかを積極的に考えてみることだよ。
三角関数の公式はもちろんすべて覚えていることに越したことはないけど、いきなりそれを全部覚えるのは大変だよね。
だからまずよく使われる$${\displaystyle\sin^2 x = \frac{1-\cos 2x}{2},\cos^2 x=\frac{1+\cos2x}{2}}$$を覚えておこう。
教科書とかではよく$${x=\frac{\theta}{2}}$$の形で書かれていると思うけど、実際に問題でその形で書かれていることはほとんどないんだ。だから$${x}$$の形で覚えておこう。
実はこの公式は基本的に三角関数の二乗を取るときに使われてるよ。一応右辺から左辺に変形するために使うこともあるけど、それは特殊な場合(例えば例題[2])だから今はあまり気にしなくていいよ。
例題:
$${\displaystyle[1]\int \sin^2xdx \quad[2]\int_0^\pi\sqrt{1+\cos x}dx\quad}$$
解答:
$${\displaystyle[1]\int \sin^2xdx=\int\frac{1-\cos 2x}{2}dx=\frac{1}{2}x-\frac{1}{4}\sin 2x+C}$$
$${\displaystyle[2]\int_0^\pi\sqrt{1+\cos x}dx=\int_0^\pi\sqrt{2\cos^2\frac{x}{2}}dx=\sqrt{2}\int_0^\pi\cos\frac{x}{2}dx=2\sqrt{2}}$$
3.被積分関数は基本個別に積分する(☆)
これも定積分・不定積分関係なく使えるコツだね。
被積分関数が何らかの和の形(例えばxについての多項式…とか)になっていた場合は、それぞれで積分を分けて個別に計算するのが基本だね。
これは因数分解された式などにも言うことができて、例えば$${(x+1)^2/x}$$の積分は分子を展開して分数を分けて積分するよ!
もちろん被積分関数が$${(x+2)^3}$$のときは置換積分するよ。これを意識するのは簡単に置換できないときとかがメインになると思うよ。
例題:
$${\displaystyle[1]\int\sqrt{x}(x+1)dx\quad [2]\int \frac{x^2+1}{x^2}dx\quad}$$
解答:
$${\displaystyle[1]\int\sqrt{x}(x+1)dx=\int x\sqrt{x}+\sqrt{x}dx=\int x\sqrt{x}dx+\int \sqrt{x}dx=\frac{2}{5}x^{\frac{5}{2}}+\frac{2}{3}x^{\frac{3}{2}}+C}$$
$${\displaystyle [2]\int \frac{x^2+1}{x^2}dx =\int 1+\frac{1}{x^2}dx=x-\frac{1}{x}+C }$$
演習問題
じゃあ今まで学んだコツを用いて次の問題を解いてみよう!
ー基本問題ー
$${\displaystyle [1]\int(\sin x\cos x)^2dx\quad[2]\int\frac{(x+1)^3}{x}dx\quad[3]\int_{-\frac{\pi}{6}}^\frac{\pi}{6}\cos^2x\tan xdx}$$
ー上級問題ー
$${\displaystyle [1]\int \frac{x}{(x-1)^3}dx\quad [2]\int_{-2}^{2}(x^3\cos\frac{x}{2}+\frac{1}{2})\sqrt{4-x^2}dx\quad [3]\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}(1+\sin x)^ndx\quad(n\in\mathbb{N})}$$
※[2]はYoutubeとかTwitter(X)で有名なので知っている人もいると思う!
解答
ー基本問題ー
[1]倍角の公式から$${(\sin x\cos x)^2=\frac{1}{4}\sin^22x}$$となるので半角の公式を用いて答えは、$${\frac{1}{32}(4x-\sin 4x)+C}$$
もちろん$${(\sin x\cos x)^2=\sin^2x\cos^2x=\frac{1}{4}(1-\cos^22x)=\frac{1}{4}(1-\frac{1}{2}(1+\cos 4x))}$$と変形して解いても大丈夫!むしろこっちのほうが(今回のブログ的には)正攻法だね。
[2]分子を展開して項別に積分して$${\frac{1}{6}x(2x^2+9x+18)+\log x+C}$$
[3]$${\cos^2(-x)\tan(-x)=-\cos^2x\tan x}$$だから被積分関数は奇関数。よって$${0}$$
ー上級編ー
[1]今回は項別に積分しようにも"分母"に三乗があるから展開して和の形にできないね。
そもそもこれは分母が$${(x-1)^3}$$という形だからうまくいかないんだね。これが$${x^3}$$とかだったら簡単に和の形にできるね。
じゃあどうすればいいか…。そう!置換してあげればいいんだね。自分の都合のいいように分母を変えちゃえばいいんだよ。
今回は$${x-1=t}$$の置換をしてあげればいいね。
すると被積分関数は$${\displaystyle\int \frac{x}{(x-1)^3}dx=\int\frac{t+1}{t^3}dx}$$となるからあとは項別に積分して$${\displaystyle \frac{1-2x}{2(x-1)^2}+C}$$となるね。
[2]一見難しそうな積分だけど、積分範囲が[2,-2]となっているからうまい具合に奇関数を見つけることができれば簡単に解けそうだね。
被積分関数を展開してあげると、
$${\displaystyle (x^3\cos\frac{x}{2}+\frac{1}{2})\sqrt{4-x^2}=x^3\cos\frac{x}{2}\sqrt{4-x^2}+\frac{1}{2}\sqrt{4-x^2}}$$
このとき第一項が奇関数だね!
ってことは第二項だけの積分、つまり$${\displaystyle\frac{1}{2}\int_{-2}^2\sqrt{4-x^2}dx}$$を求めればいいね。
この積分を普通に解くこともできるけど、今回は積分の意味に注目してあげると楽に計算できるよ。
$${y=\sqrt{4-x^2}}$$は半径2の半円を示していることに気づければこの積分は半径2の半円の面積を表していることになるね。
だから答えは$${\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\pi2^2=\pi}$$だね。
[3]これはなんか難しそうだね。n乗の形になっているから漸化式の形で解くのかな….って思っちゃだめだよ。
これは漸化式でもなんだもない、ただただ半角の公式とWallis積分の公式を使うだけの問題なんだ!
…ちなみに漸化式で解くととてもとても複雑な級数を解く羽目になるよ(←解く羽目になった人)。
本題に戻ると、これはただ単に半角の公式を使うだけの問題なんだったね。
とりあえず半角の公式が使えるように$${x\to\frac{\pi}{2}-x}$$の置換を行うと、
$${\displaystyle \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}(1+\sin x)^ndx=\int_0^\pi(1+\cos x)^ndx=2^{n}\int_0^\pi\cos^{2n}\frac{x}{2}dx}$$
あとはWallisの公式が使えるように$${\frac{x}{2}\to x }$$の置換をすると、
$${\displaystyle 2^{n}\int_0^\pi\cos^{2n}\frac{x}{2}dx=2^{n+1}\int_0^\frac{\pi}{2}\cos^{2n}xdx=\pi\cdot2^n\cdot\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}}$$
と求められるね!
終わりに
ミケ:今回は今から使える計算のコツを紹介してみたよ。
ミケ:微分と違って積分はただ公式を代入するだけじゃないから若干難しいよね。でも、今日紹介したコツを頭に入れるだけで全然難易度が変わると思う!
ミケ:これからもどんどん積分のコツ(ミケの独断)について書いていくからお楽しみに!
誤字脱字や間違いの指摘、質問や感想等は遠慮なくどうぞ!
ーミケー
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