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記号論理をちょっとだけ

もう二月も第三週に突入し、寒さがまだまだ残る今日この頃。二匹の猫がこたつの中でぬくぬくと過ごしていました。

ミケ:お久しぶりです!

マロ:突然どうしたの?

ミケ:いやー、前回の投稿から二週間ほど空いちゃっててさ。

マロ:確かに。お休みの通知すら忘れちゃうくらい忙しかったしね。

ミケ:ほんとに申し訳ない!

ーーー

マロ:…で、今日は何するの?

ミケ:実は最近イプシロンデルタを重点的に勉強してるんだよね。

マロ:イプシロンデルタってあの極限とかで出てくるやつ?

ミケ:そうそう!僕も内容を理解はしていたけど実際問題を解くのはあんまりできなくてさ…。この際勉強してみようかなって!

マロ:いいねー。じゃあ今回はそのイプシロンデルタをするの?

ミケ:いや、僕がまだ自分の中に落としきれてないからそこまではしないかな。

ミケ:でもイプシロンデルタでも使う記号論理についてちょっと僕のメモ代わりにでもしようかなって!

ミケ:おお~。それは楽しみだね。

今回は記号論理についてのお話です。


命題ってなに?

まず、記号論理やイプシロンデルタに限らずだけど、数学ではよく命題っていうのが出てくるよね。

この命題って出てくるのはいいんだけど、結局何なのかよくわかってないんだよね。

ということで試しにwikipediaで調べてみました!

命題(めいだい、(英語: proposition)とは、論理学において判断を言語で表したもので、真または偽という性質(真理値)をもつもの[1][注釈 1]。また数学で、真偽の判断の対象となる文章または式、定理[2]、問題のこと[3]西周による訳語の一つ[4][5]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%BD%E9%A1%8C

なるほどなるほど…。要は真偽の判断ができる「なにか」ってわけね。

だから例えば「すべての整数は奇数である」はの命題で、「偶数+偶数が偶数になる」はの命題になるってわけか。

論理演算子と否定演算子

数学の定理ってたいてい次の構造をしていることが多いよね。

$${(仮定)\Rightarrow(結論)}$$

例えば「微分可能 ならば 連続」みたいにね。このとき$${\Rightarrow}$$演算子は「微分可能」と「連続」という二つの命題を結合して新たな命題を作っているから論理演算子と呼ばれるよ。

論理演算子にはほかにも$${\land}$$の「かつ」とか$${\lor}$$の「または」があるよ。この二つはプログラミングとかでもよく出てくるからなじみ深い人も多いかな。

次に命題の否定について。これもプログラミングでよく出てくるよね。例えば命題「すべての素数は奇数」を否定すると「偶数の素数も存在する」になるよ。

命題の否定にはよく$${\lnot}$$記号を使われるよ。プログラミングで使う「!」とは違うんだね~。

命題の否定

二つの命題を$${p,q}$$とするとき、$${p\land q ,\quad p\lor q,\quad p\Rightarrow q}$$の否定をそれぞれ考えてみよう。

最初の二つは簡単だよね。二つの命題が論理的に同値であることを$${\equiv}$$で表すことにすれば、

$${\lnot(p\land q)\equiv\lnot p\lor \lnot q}$$
$${\lnot(p\lor q)\equiv \lnot p \land  \lnot q}$$

となるよね。これはド・モルガンの法則として知ってる人も多いんじゃないかな。

残るは$${p \Rightarrow q}$$の否定だけど…。これはどうしようか。何か前の二つと毛色が違くて難しいね…。

$${p\Rightarrow q}$$は「pならばq」で、その否定ってことは…「p(が成り立つ)だけどqじゃない」とかかな?

「pならばq」は「pが成り立つ。そうすればqも成り立つ」ってことだから、その否定のときに「pが成り立つ」という前提条件ごと否定されちゃいけないしね。

よって$${\lnot\left(p\Rightarrow q\right)\equiv p \land \lnot q}$$だね!

(補足)一応、真理値表で確かめてみよう。Tを真、Fを偽とすると、

$$
\begin{array}{|c|c|c|c||c|c|||c|}
p&q &p\Rightarrow q & \lnot(p\Rightarrow q) & \lnot q &p\land\lnot q & \lnot(p\Rightarrow q) \equiv p\land\lnot q \\\hline\hline
T & T & T & F & F & F & T \\\hline
T & F & F & T & T & T & T \\\hline
F & T & T & F & F & F & T \\\hline
F & F & T & F & T & F & \hspace{2.5mm}T    
\end{array}
$$

ちなみに、$${F \Rightarrow T}$$はTである。日常使う「ならば」との乖離が見られ、混乱するがそういうものと認めておく。(そうすると都合がいいのかも?)

限定記号

数学の本とかをパラパラとめくっているとよく∀と∃という記号を見かけるよね。これらは限定記号と呼ばれて、命題の対象が「一部」なのか「すべて」なのかを限定するために使われるよ!

例を挙げると、「石は硬い」だったら「すべての」石が硬いのか「ある特定の」石が硬いのかがわからないよね。

そこで、限定記号を使って対象を限定してあげるってわけさ。

∀はAllのAをひっくり返した記号で「すべての」とか「任意の」を表すよ。また、∃はExist(存在する)のEをひっくり返した記号で「あるーに対して」とか「あるーが存在して」を表すよ。

これを使って、「任意の素数は自然数である」を表すと

$${\forall p\in \mathbb{P} [p\in\mathbb{N}]\quad(\mathbb{P}\text{は素数全体})}$$

となるよ!また、「偶数である素数が存在する」を表すと

$${\exist p\in\mathbb{P}[p\in\mathbb{E}]\quad(\mathbb{E}\text{は偶数全体})}$$

となるよ!

じゃあ次にこれらの否定命題を考えてみよう!まずは∀から!

P(x)をxに関するある命題としたとき

$${\forall x\in X [P(x)]}$$

を否定すると…?

もともとは「すべてのxに対してP(x)」であるという命題だったね。「すべての」という表現に注目してみると、「どれか一つでもP(x)でないx」が存在してはいけないってことがわかるね。

こうするともうわかるんじゃないかな。$${\forall x\in X [P(x)]}$$を否定すると、「P(x)を満たさないxが(少なくとも一つ)存在する」だね。

これを限定記号を用いてかくと、

$${\lnot(\forall x\in X[P(x)])\equiv \exist x\in X[\lnot P(x)]}$$

じゃあ次に∃の否定命題も考えていこう!これも元の命題を限定記号を使って書けば

$${\exist x\in X[P(x)]}$$

となるね。これを否定するとどうなるんだろう?

これは∀のときと逆に考えればいいね。「P(x)を満たすxが(一つでも)存在する」の否定だから、「すべてのxがP(x)を満たさない」であればよいね。

限定記号を使って書くと

$${\lnot(\exist x\in X [P(x)] )\equiv \forall x\in X[\lnot P(x)]}$$

となるね!

最後に∀と∃を混ぜた命題について考えていこう!

これはε-N論法(ε-δ論法の数列版)がちょうどいい例になるんじゃないかな。

$${\displaystyle\lim_{n\to \infty}a_n =\alpha\leftrightarrow \forall\varepsilon>0,\exist N \in \mathbb{N},\forall n\in \mathbb{N}[n\geq N\Rightarrow |a_n-\alpha|<\varepsilon]}$$

今までのと急にレベルが変わったね(笑)これの意味するところはまた今度に取っておくことにして、ここでは限定記号に焦点を当てていくよ!

まず読み方だけど、これは普通に左から「任意のεに対し、あるNが存在し、(すべての自然数nに対して)[n≧Nなら ○○]」となるよ!

ここで注意しなきゃいけないのは$${\varepsilon}$$と$${N}$$の依存関係だよ。∀の後に∃が来た場合は、「この∃は∀に依存する」という意味になるんだ!

だから$${\forall \varepsilon >0,\exist N\in\N}$$っていうのは実質$${\forall \varepsilon >0,\exist N(\varepsilon) \in \N}$$を意味してるってことだね!

この依存関係を意識したら、次の二つの命題の意味が変わることに気づけるんじゃないかな。

$${\forall x,\exist y[P(x,y)]}$$

$${\exist y,\forall x[P(x,y)]}$$

前者は「すべてのxはあるyが存在してP(x,y)である」を意味して、後者は「あるyが存在してすべてのxに対してP(x,y)である」を意味するよ!

前者の場合は$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)\dots}$$といった具合にすべての$${x_1,x_2\dots}$$に$${y_1,y_2\dots}$$が存在するってことだね。

後者の場合は$${(x_1,y),(x_2,y)\dots}$$といった具合に、$${x_1,x_2\dots}$$が一人の$${y}$$に独占されているってことだね。

安易に∀と∃を入れ替えてはいけないってことがわかるね…。

まとめ

  • 命題は真偽の判断ができる文章・式・定理などのこと。

  • 命題を結合する$${\land(\text{かつ}),\lor(\text{または}),\Rightarrow(\text{ならば})}$$の論理演算子と、命題を否定する$${\lnot(\text{ではない})}$$がある。

  • $${\lnot(p\Rightarrow q)\equiv p \land \lnot q}$$

  • 命題の対象を限定する$${\forall(\text{すべての}),\exist(\text{ある-存在して})}$$といった限定記号がある。


おわりに

ミケ:…といった感じだね~。

マロ:おおー。面白かったー!

ミケ:それはよかった!

マロ:特に、「pならばq」の否定のところが面白かったかな。なんか意外って感じ!

ミケ:確かにあれ面白いよね~。

マロ:来週はマロの番か…。

ミケ:何かネタあるの?

マロ:ない!!!

ミケ:ないんだ(笑)

マロ:だからこの一週間中に何とか探す!

ミケ:おお、僕もできることあるなら手伝うよ!

マロ:ありがとうー。

二匹はその後も飼い主さんが返ってくるまで仲良くおしゃべりを続けました。


誤字脱字や間違い、質問等あったら遠慮なくどうぞ!
                           ーミケ

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