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積分の計算問題のコツ#3

街がだんだんキラキラし始めた今日この頃。二匹の猫がストーブの前でくつろいでいます。二週間ぶりの休息のようです。

マロ:ふぅ~。ようやくゆっくりできるね~。

ミケ:いつの間に二週間もたってたのか…。もう12月だし。

マロ:早いよね~。

ミケ:今日は何しようかな。

マロ:久しぶりでミケも積分がなまってると思うから、今日は積分すれば?

ミケ:いいね!!そうしよう!

ミケ:積分のコツをまとめながら僕も思い出していこうかな。

前回の記事はこちらです!


☆の見方について

コツの紹介に入る前に、☆の見方について説明していくよ。

☆    :今すぐにできる。とても簡単。
☆☆   :すこし演習が必要。コツを掴めばできる。
☆☆☆  :難しい。ある程度の問題の慣れが必要。

※あくまでミケの独断です。

基本的にこの三つに分けて紹介していくよ。慣れないうちは☆1つから意識していくといいと思う!

それじゃあ今からさっそく紹介していくね。


積分のコツ

6.逆関数の積分は部分積分(☆)

まずは不定積分・定積分に関係なく使える考え方から!被積分関数が$${f^{-1}(x)\quad(f(x)は微分可能)}$$で、直接原始関数が求められなさそうな場合には、とりあえず$${(x)'f^{-1}(x)}$$と考えて部分積分してみよう!

例題:

$${\displaystyle \int \cos^{-1}xdx}$$

解答:

$${\displaystyle \int \cos^{-1}xdx=x\cos^{-1}x-\int\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}dx}$$

ここで$${1-x^2=t\to -xdx = \frac{1}{2}dt}$$より

$${\displaystyle \int \cos^{-1}xdx=x\cos^{-1}x-\frac{1}{2}\int\frac{dt}{\sqrt{t}}=x\cos^{-1}x-\sqrt{t}+C=x\cos^{-1}x-\sqrt{1-x^2}+C}$$

と求まるね!

逆三角関数はそのまま直接積分するのは難しいけど、微分はできる!
今回の部分積分はそれを利用したって感じだね。

ちなみに$${\theta = \cos^{-1}x}$$と置換してもたぶんできると思うよ!

7.積分区間を分ける(☆☆)

次は定積分で使える考え方だよ!被積分関数に絶対値が入っていたりして、普通には積分できない場合ってあるよね?そういう時は積分区間をうまく分けることで計算できることがあるんだ!

試しに以下の問題を解いてみよう!

例題:

$${\displaystyle I=\int_0^\infty e^{-x}|\sin x|dx}$$



前回5.と同様にこれを初見で解ける人はなかなかいないと思う!もしこの絶対値がついていなかったらすぐに解けるんだけど…って人が大半かな?(もちろん僕も含めてね!)

それじゃあこういう時はどうすればいいんだろう。さっきも言った通り、積分区間を分割してみればいい!

そもそもこの積分ができない理由って、本来$${\sin x}$$の符号が変わる点において、(絶対値記号がついているので)微分不可能になってしまっているからなんだよね。

例えば$${x=\pi}$$のところで被積分関数は微分不可!

逆に言えばこの微分できない点、つまり本来符号が変わる点で区間を分割してしまえば、あとはただの積分の問題に帰着するよね?

簡単な例で考えてみよう。例えば、

$${\displaystyle\int_{-1}^1|x|dx}$$は、$${x=0}$$で符号が変わるから

$${\displaystyle\int_{-1}^1|x|dx=\int_{-1}^0(-x)dx+\int_0^1xdx=1}$$

と求められる!

じゃあ考え方がわかったところで改めて例題を解いてみよう!

例題:

$${\displaystyle \int_0^\infty e^{-x}|\sin x|dx}$$

解答:

被積分関数、というより$${\sin x}$$はπごとに符号が変わる。

つまり、積分区間を$${\pi}$$ごとに分割すればよい。分割されたk番目の積分を

$${\displaystyle I_k = \int_{k\pi}^{(k+1)\pi}e^{-x}|\sin x|dx\quad(k=0,1,2,\cdots)}$$

と置くと、kが偶数のとき$${\sin x >0 }$$、kが奇数のとき$${\sin x<0}$$なので、

$${\displaystyle I_k = (-1)^{k}\int_{k\pi}^{(k+1)\pi}e^{-x}\sin xdx\quad(k=0,1,2,\cdots)}$$

となる。あとは積分を解くと、

$${\displaystyle I_k = (-1)^{k}\int_{k\pi}^{(k+1)\pi}e^{-x}\sin xdx=(-1)^{k}\left[\frac{e^{-x}}{(-1)^2+1^2}(-\sin x-\cos x)\right]_{k\pi}^{(k+1)\pi}=\frac{(-1)^k}{2}(-e^{-(k+1)\pi}\cos((k+1)\pi)+e^{-k\pi}\cos(k\pi))}$$

式を整理すると、

$${\displaystyle I_k =\frac{(-1)^ke^{-k\pi}}{2}(-e^{-\pi}\cos((k+1)\pi)+\cos(k\pi))=\frac{(-1)^ke^{-k\pi}}{2}(e^{-\pi}\cos(k\pi)+\cos(k\pi))=\frac{(-1)^k\cos(k\pi)}{2}e^{-k\pi}(1+e^{-\pi})}$$

途中の式変形で加法定理を用いた。ここで、kが偶数でも奇数でも$${(-1)^k\cos(k\pi)=1}$$であるため、

$${\displaystyle I_k =\frac{(1+e^{-\pi})}{2}e^{-k\pi}}$$

求めたい積分$${I}$$はπ分割した積分の総和であるから、

$${\displaystyle I=\sum_{k=0}^{\infty}I_k=\frac{(1+e^{-\pi})}{2}\sum_{k=0}^{\infty}e^{-k\pi}=\frac{(1+e^{-\pi})}{2}\left(1+\sum_{k=1}^{\infty}e^{-k\pi}\right)}$$

あとは$${\lim_{k\to\infty}e^{-k\pi}=0}$$と等比数列の公式を用いて、

$${\displaystyle I=\frac{(1+e^{-\pi})}{2}\left(1+\sum_{k=1}^{\infty}e^{-k\pi}\right)=\frac{(1+e^{-\pi})}{2}\left(1+\frac{-e^{-\pi}}{e^{-\pi}-1}\right)}$$

式を整えると、

$${\displaystyle I=\frac{(1+e^{-\pi})}{2}\left(1+\frac{e^{\pi}}{1-e^{-\pi}}\right)=\frac{(1+e^{-\pi})}{2}\left(\frac{1}{1-e^{-\pi}}\right)=\frac{1}{2}\cdot\frac{1+e^{-\pi}}{1-e^{-\pi}}}$$

となって求まるね!

この問題は正直例題として出すには難しすぎたかな(笑)でもこういう解法があるんだなぁって頭に入れるだけで全然違うからね。みんなも解くときに頭の片隅に入れておくといいかもね!

演習問題

じゃあ毎度おなじみ演習問題を解いてみよう!今回は上級問題はないよ!

―基本問題ー

$${\displaystyle [1]\int \sin^{-1}xdx\quad [2]\int_0^{2\pi}|\sin x|dx\quad[3]\int x\tan^{-1}xdx\quad[4]\int_0^\infty e^{-x}{\rm sign}(x-a)dx\quad(a>0)}$$

ー上級問題ー

なし

解答

[1]$${\displaystyle \int \sin^{-1}xdx=x\sin^{-1}x-\int\frac{x}{\sqrt{1-x^2}}dx=x\sin^{-1}x+\sqrt{1-x^2}+C}$$

例題と同じように解けばいいんだね!

[2]区間を$${[0,\pi],[\pi,2\pi]}$$に分ける。

$${\displaystyle \int_0^{2\pi}|\sin x|dx=\int_0^\pi\sin xdx+\int_\pi^{2\pi}-\sin xdx=1+1=2}$$

[3]これは6.の応用だね。逆関数とxの積も同様に部分積分してあげよう。

$${\displaystyle \int x\tan^{-1}xdx=\frac{x^2}{2}\tan^{-1}x-\frac{1}{2}\int\frac{x^2}{1+x^2}dx=\frac{x^2}{2}\tan^{-1}x-\frac{1}{2}\int1-\frac{1}{1+x^2}dx=\frac{x^2+1}{2}\tan^{-1}x-\frac{1}{2}x+C}$$

[4]被積分関数に符号関数が入っているんだね。これも$${[0,a),(a,\infty)}$$で分けてあげよう。

$${\displaystyle \int_0^\infty e^{-x}{\rm sign}(x-a)dx=\int_0^a e^{-x}{\rm sign}(x-a)dx+\int_a^\infty e^{-x}{\rm sign}(x-a)dx=\int_0^a -e^{-x}dx+\int_a^\infty e^{-x}dx=e^{-a}-1+e^{-a}=2e^{-a}-1}$$

と求まるね!


終わりに

窓を見るとすっかり暗くなっています。もう夜のようです。

ミケ:ふぅ~。久しぶりに積分した気がするよ。

マロ:おつかれさま~。なんかいろいろな解き方があるんだね。

ミケ:うん!個人的には7.の例題がお気に入りかな。

マロ:てか、そろそろ飼い主さん帰ってきそうだね。

ミケ:もうそんな時間?早いねー。確かにおなかすいてきたかも(笑)

マロ:確かに!早く帰ってきてほしいな~~。

二匹はそう言いながら、飼い主さんの帰りを待っているのでした。


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                              ーミケ


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