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いろいろなキョリ

6月も中盤に突入し、道端ではあじさいがよくみられるようになった今日この頃。久しぶりに二匹の猫がおしゃべりしています。

ミケ:いやー久しぶりだね~。

マロ:だねー。一か月ぶりとか?(笑)

ミケ:かもしれない…。別にさぼってたわけではないんだけどね!

マロ:とかいいつつ先週はYoutube見てごろごろしてたよね。

ミケ:それはちょっとあれですよ…。そう!ネタ探し!

マロ:へえー。じゃあ今日はブログ書けるよね?

ミケ:もちろん!期待して待っててよ!

マロ:うん、楽しみにしてる。ちなみに今日は何するの?

ミケ:今日はいろいろなキョリについて考えてみようと思って。

マロ:キョリ?キョリってあの距離のこと?

ミケ:そうそう。僕たちが普段使っている距離以外にもいろいろな距離が考えられるからそれ紹介しようと思って!

マロ:なんだかおもしろそうかも!

ミケ:でしょでしょ~。それじゃあさっそく説明していくね!

マロ:うん!

どうやら今日はいろいろなキョリのお話のようです。


Euclid距離

じゃあまず最初にEuclid距離について説明するね!

なんか名前がついてるからどんな距離なんだ?ってなるけど実は僕たちが普段使っている距離なんだ!

とりあえず僕たちが住んでる三次元の空間での定義を書いてみるね。空間上の点$${x=(x_1,x_2,x_3),\quad y=(y_1,y_2,y_3)}$$に対するEuclid距離は

$${d^{(3)}(x,y)=\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2+(x_3-y_3)^2}}$$

で与えられるよ。定義式からもわかるように単に二点間を結んだ直線の長さのことなんだね。

このEuclid距離では次の性質が成り立つよ。

$${d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)}$$

これには三角形のイメージを浮かべればすぐ納得できるよね。三角形の一辺の長さはほかの二辺の長さより短いっていうのは直感的にわかるし、上の式での等号はその三角形がつぶれた状態、つまり三点が同一直線上にあるってことだからね。

ちなみにこの不等式を三角不等式というよ!実は以下に紹介するほかの距離もこの三角不等式を満たすよ!

いままで三次元で考えてきたけど、もちろん二次元平面でもEuclid距離は考えられて

$${d^{(2)}(x,y)=\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2}}$$

で与えられるよ!こっちのほうがわかりやすいかな。

じゃあ最後に$${d^{(2)}(0,x)=1}$$をみたす点$${x}$$が表す図形について考えてみよう!とはいってもこれは明らかに円だよね(笑)

つまり、Euclid距離で考えたときに原点からの距離が1で一定の点全体はになるってことだね!

距離一定の図形


チェビシェフ距離

次にチェビシェフ距離について説明するね。

まずは三次元空間上での定義から示すね。

三次元空間上の二点$${x=(x_1,x_2,x_3),\quad y=(y_1,y_2,y_3)}$$に対してチェビシェフ距離は

$${d_{\infty}^{(3)}(x,y)=\max(|x_1-y_1|,|x_2-y_2|,|x_3-y_3|)}$$

で定義されるよ!ここで$${\max(a,b)}$$は

$${\max(a,b)= \left \{\begin{array}{l}a (a\geq b) \\b (a< b)\end{array}\right.}$$

で与えられるよ!今回の場合は、$${|x_1-y_1|,|x_2-y_2|,|x_3-y_3|}$$のうち一番大きい値を取るって感じだね。

図形的なイメージでいうと、二点$${x,y}$$が直方体の対角となるように直方体を考えたときに、その直方体の最も長い辺が二点間の(チェビシェフ)距離になるってことだね。

この場合は紫の辺が一番長いので、距離は8

このチェビシェフ距離も三角不等式は成り立つんだよね。ためしに証明してみよう!

チェビシェフ距離の定義からわかるように、この距離の値は必ず$${|x_i-y_i|}$$で表せるはずだから

$${d_\infty(x,y)=|x_i-y_i|,\quad d_\infty(y,z)=|y_j-z_j|,\quad d_\infty(x,z)=|x_l-y_l|}$$

と置けば、

$${d(x,y)+d(y,z)=|x_i-y_i|+|y_j-z_j|\geq |x_l-y_l|+|y_l-z_l|\geq |x_l-y_l|\\=d(x,z)}$$

と出来るね!ここで$${d_\infty (x,y)\geq |x_n-y_n|}$$を用いたよ。

じゃあつぎにEuclid距離のときのように二次元平面でチェビシェフ距離を考えてみよう。これは簡単で

$${d_\infty^{(2)}(x,y)=\max(|x_1-y_1|,|x_2-y_2|)}$$

となるよ。

さっきの証明を見ればわかるように、チェビシェフ距離が三次元空間じゃなくても三角不等式は成り立つよ。むしろそれを意識して$${d_\infty^{(3)}}$$ではなく$${d_\infty}$$って書いたんだよね。

じゃあこれも最後に$${d_\infty^{(2)}(0,x)=1}$$をみたす点$${x}$$が表す図形について考えてみよう!Euclid距離の場合は円だったけど、チェビシェフ距離の場合はどうなるかな?

先に答えだしちゃうとした図のようになるよ!

距離一定の図形

チェビシェフ距離での距離一定の図形は正方形になるんだね!!距離が一定で円以外の図形が出てくるのはなんだが変な気分だけど、これも僕たちがEuclid距離に慣れすぎたからなんだろうね。


Manhattan距離

最後にManhattan距離について紹介するね。さっそく定義を見てみよう!

三次元空間上の二点$${x=(x_1,x_2,x_3),\quad y=(y_1,y_2,y_3)}$$に対してManhattan距離は

$${d_{1}^{(3)}(x,y)=|x_1-y_1|+|x_2-y_2|+|x_3-y_3|}$$

で定義されるよ!Manhattan距離はよくプログラミング関連の話題で出てくるから知ってる人も多いんじゃないかな?

ちなみにManhattanっていうのはアメリカの都市のマンハッタン(Manhattan)のことだと思うよ!なんか数学の話題なのに都市名が入ってくるの面白いよね。

チェビシェフ距離のときと同様にManhattan距離も図形的なイメージをつかんでおこう!

以下の使いまわしの図を見てみて!

楽するために使いまわされた図

チェビシェフ距離の場合はこの直方体のうち、最も長い辺の長さがその距離の値となったわけだけど、Manhattan距離の場合はこの辺の長さすべてを足し合わせたものが距離の値となるんだね。

つまり、この図の場合の$${x,y}$$のManhattan距離は20となるね。

気づいた人もいると思うけど、一般に二点のチェビシェフ距離よりもManhattan距離のほうが長くなるよ!まあ前者が一番長い辺の長さだけなのに対して、後者はその長い辺も含めたすべての辺の長さの和になるから当然といえば当然だね!

じゃあ次にこのManhattan距離でも三角不等式が成り立つことを示してみよう!

まず見通しをよくするために

$${\displaystyle d_1^{(3)}(a,b)=|a_1-b_1|+|a_2-b_2|+|a_3-b_3|=\sum_{i=1}^3|a_i-b_i|}$$

と書くことにしよう。そうすれば、

$${\displaystyle d_1^{(3)}(x,y)+d_1^{(3)}(y,z)=\sum_{i=1}^3|x_i-y_i|+\sum_{i=1}^3|y_i-z_i|=\sum_{i=1}^3|x_i-y_i|+|y_i-z_i|\geq \sum_{i=1}^3|x_i-z_i|=d_1^{(3)}(x,z)}$$

となり$${\displaystyle d_1^{(3)}(x,y)+d_1^{(3)}(y,z)\geq d_1^{(3)}(x,z)}$$
が示せた!

これまでと同様、Manhattan距離は二次元平面でも考えることができて

$${d_{1}^{(2)}(x,y)=|x_1-y_1|+|x_2-y_2|}$$

で定義されるよ!もちろんこの場合も三角不等式は成り立つよ!(さっきの証明の$${\displaystyle \sum^3}$$の3を2に変えるだけだからね!)

それじゃあお待ちかねの、$${d_1^{(2)}(0,x)=1}$$をみたす点$${x}$$が表す図形について考えてみよう!

これは単に$${|x|+|y|=1}$$が表す図形のことだから、$${x,y}$$の値を場合分けすればすぐにわかるね!

距離一定の図形

今度はダイヤモンド型になったね。距離の定義を変えればここまで形が変わるのが面白いよね!

最後にこれまでの三つの距離における$${d(0,x)=1}$$をみたす点$${x}$$が表す図形を重ねてみよう!

こう見るとそれぞれの距離の違いがはっきり分かるね!

それぞれの距離における半径1の"円"


距離空間

いままで三つの距離を考えていたけど、それらには共通する三つの性質があることに気づけた?

  1. $${d(x,y)\geq0 \quad (d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y)}$$

  2. $${d(x,y)=d(y,x)}$$

  3. $${d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)}$$

実は上記の三つの性質を満たす関数(写像)$${d:X\times X \to \mathbb{R}}$$のことを集合$${X}$$の距離関数というんだ。

これまで紹介してきた三つの距離はすべてこの距離関数の条件を満たしていたんだよね。

さらにこれらの距離は$${n}$$次元の場合にも拡張できて、$${X=\mathbb{R}^n}$$についても同様に距離関数であるんだ。

一般に集合$${X}$$と距離関数$${d}$$の対$${(X,d)}$$のことを距離空間というよ。今回の場合は$${(\mathbb{R}^n,d)}$$の距離について考えていたんだね。

もちろん$${X=\mathbb{R}^n}$$以外の場合の距離空間も考えることができるよ!例えば、区間$${[a,b]}$$で連続な実数値関数の集合を$${C[a,b]}$$と置くと、$${f,g\in C[a,b]}$$に対して

$${\displaystyle d(f,g)=\int_a^b |f(x)-g(x)|dx}$$

という距離関数が考えられるね!(実際この関数は距離関数の条件三つをすべて満たしている!!)

関数同士の距離といわれてもなんかイメージつきにくいけど、同時にわくわくしてくるよね!新たな可能性が広がってる感じがするっていうか。

これらの概念は集合と位相を学べばより厳密に詳しく学べるから気になった人は学んでみるといいかも!!

終わりに

初めは明るかった空もいつの間にか真っ暗です。二匹の猫は並んで寝転がっていました。どうやら久しぶりにたくさん話して疲れてしまったようです。

マロ:いやー久しぶりに数学したねー。

ミケ:だね~。どうだった?今回の内容?

マロ:なんかいろいろなキョリがあって面白いなーって思った!

ミケ:だよね!最初僕たちの直感となじまなくて困ったけど、慣れてくるといろいろ楽しくなってくるよね~!

マロ:来週は僕の番か…。どうしようかな。

ミケ:なにかいいネタあるの?

マロ:うーん、今は結び目理論があるからなんとかなるけど、そのあとがね。

ミケ:なるほどね。もうそろそろ二年目いきそうだもんね~。

マロ:早いよねー。なんかあっという間って感じ。

ミケ:僕も再来週のネタ見つけなきゃね。一応積分問題とくっていうのがあるっちゃあるけどね。

ミケ:てか、なんだかそろそろ眠くなってきたな~。

マロ:久しぶりに頭使ったもんね。僕もなんだか眠いかも。

ミケ:じゃあ寝ようか~。いつの間にか空暗いし。

マロ:だねー。おやすみー!

ミケ:おやすみ~!

二匹はおやすみの挨拶を交わすとそれぞれの寝床に移動し、久しぶりに数学をした疲れをたっぷりと癒しました。


誤字脱字や間違いの指摘、質問や感想等は遠慮なくどうぞ!

これは余談ですが、最近しったグラフ描画できるDesmosってサイトがすごいです!GeogebraではできなかったこともDesmosなら簡単にできます!
もしよかったら皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。

                              ーミケ


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