お土産はいらない

君と別れて数ヶ月経ったとき、君のSNSのフォローを外した。

君が僕以外の人の隣で笑う写真が増えたから。

他人に戻ってもこんな簡単に近況がわかるのか。

そりゃ、最近のラブソングにやたらとLINEだインスタだ、歌詞が入ってるわけだ。

おじさん、納得。

もらったものを眺めて懐かしめるほどには強くなったし

思い出の曲も聴けるほどには図太くなった。

住んでいた街並みも、喧嘩の内容も、匂いも、程よく忘れてきた今日この頃。

そんな時、君が夢に出てきた。

なんの変哲もない夢。

思い出せるのはすごく幸せな夢だったということだけ。

不思議な感覚で目が覚める。

その日、君が結婚したことを知った。

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虫の知らせってのは本当にある。

人生で何度か経験したけど、毎回フッと笑ってしまう。

共通の知り合いが教えてくれた。

旦那の仕事で遠くに行くんだってね。

冷静を保ったつもりだったが、自分でもわかるほどに目は大きく開き、頭が回らなくなっていた。

いや、でも、まぁ、なんてことはない。

君は結婚をしたがっていたし、子どもも欲しがっていたし、それを叶えてあげられるのは僕じゃなかっただけ。

でも、まぁ、その、なんだ、君の夢を誰よりも叶えたかったのは、他でもない僕だった。

なんて独りよがりをぐっと飲み込む。

慣れない土地で夫婦、二人三脚で頑張って。

美味しいものだらけの街だ、太り過ぎないように。

幸せならよかった。

幸せになったならよかった。

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きっと君のことを書くのはこれが最後。

きっと、だけど。

君が純白のドレスを着て、お父さんの元を離れ、旦那さんの元へ行き、鐘の音の中、沢山の笑顔に囲まれているとき、一瞬でも僕の顔が浮かべば、万々歳だ。

鼻で笑う程度でもちろんいい。

今度は僕にバレないように。

虫の1匹も入る余地がないように。

まぁ、でもあれか、SNSがあったら無理か。

君の花嫁姿を画面越しで見るのは勘弁だよ、ちくしょう。

綺麗なんだろう。

白い肌と綺麗な黒髪が自慢の君だったし。

そういえば最後の時、これから先もあなたが1番好きな人、と言ってくれた。

その言葉が嘘になってますように。

大丈夫。

元カノが、自分のことを一生好きでいてくれているなんて、本気で思うような歳じゃない。

君の1番はとっくに僕じゃない。

だから最後にひとつだけわがままを。

どうかこの言葉たちを、君が見つけませんように。

結婚おめでとう。

また、いつか、どこかで。

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