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けんざいのおと #5-2 包んでくれる空間の中にある、リズム。

皆さまこんにちは。
今回は建材屋の私が、尾道にあるホテル「LOG」を、マテリアルにフォーカスしてご紹介する第二弾です。

前回の記事はこちらからご覧ください。

くつろぎを直感的に感じさせる外観や、ふんわり包んでくれる空間を提供している客室部分についてご紹介しました。
今回は、宿泊されない方も立ち寄ることができるカフェ・バーなど共用部についてご紹介させてください。

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LOGでは、お庭(中庭と南側の庭があります)とカフェ・バー、ショップ部分は宿泊者以外の方も入ることが可能です。その空間だけでも、LOGの世界観の一部を感じることができます。

#5-13 調整済

こちらは、お庭の中に通っている小道。瓦を細かく砕いて敷いてあります。不揃いなところも私にはとてもキュンポイント(笑)。
こういった部分はホテルスタッフと、地域の方も参加してのワークショップで作り上げられており、泊まる人だけでなく、地域の方を含めたみんなのLOG(記録としての意味合いの。)としても機能しているところがまた素敵だな、と感じます。

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2Fにあるカフェ・バーは、外壁のピンクの壁が連続しながらも、腰壁部分は掻き落としという左官の仕上げです。これは、壁面材を一度塗りつけたところで、針のような道具を使って掻き落とし、表面に細かい凹凸を作る仕上げ方です。
この掻き落としの表情は客室の一部にも見られ、表面の凹凸のおかげで光が柔らかく反射するようになり、全体が柔らかい表情に見えます。

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ただ、客室ほどふんわりし過ぎないのは、扉に巻かれた銅板や、朱色の漆で塗られたテーブル、スツール、バーカウンターがあるからではないでしょうか。
銅板が巻かれたドアは、できた当初こそピカピカなものであったと思われますが、使われていく内に酸化して十円玉のように鈍く光るようになるでしょう。数年後、再び訪れた時にどのように変化したか、経年変化を楽しめるのもLOGのマテリアルの特徴だと思います。
テーブル、スツールは漆を使うことで、塗装よりもピカピカし過ぎず鈍い光り方の朱色が強すぎない主張をして、空間の良いアクセントになっています。バーカウンターは、客室に使用したのと同じ和紙を貼ってから、朱漆を塗ったそう。手間のかけ様がすごいですよね。

#5-8 調整済

このベンチに使われているラグや、宿泊者が入ることのできるライブラリーの床に敷いてあるラグは、手織物にこだわって作られている真木テキスタイルスタジオさんのもの。手で作られた温かみが、やはり空間に柔らかさをもたらしています。

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全体として、柔らかさや優しさのある素材で作られた空間です。だけれども単調にはならずに、少しずつ違うマテリアル、なおかつどれも手仕事でなされたマテリアルを組み合わせながら、リズミカルに作られているところが、LOGのとても魅力的な点だと思います。
ここで気づいたのは、アクセントとして使われているマテリアルは、どれも大量生産品ではない、ということです。瓦でさえも、人の手で割られたことで、同じ形のものはありませんでした。他のホテルでは(コストの関係上だと思われますが)大量生産の建材が大部分の面積で使われています。
スタジオ・ムンバイが建築に必ず人の手の力を取り入れるという姿勢だから、というのが理由ではあるにしても、よくここまでどこもかしこも手仕事のマテリアルを入れることができたなぁと感動してしまいます。
LOGは、日本の「ホテル」とされるジャンルの建物の中で、手仕事のマテリアルをここまで取り入れることができたという、挑戦的な事例なのではないかと思います。

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私としては、こういうホテルを作り上げたいと考えていたので、先にやられてしまったかー(どの立場で物を言うって感じですね。こわっぱが失礼しました。。苦笑)とショックを受けるくらいでした。でも、見えてきたのは、大量生産品ではない建材でもここまで作れるぞ、ということ。
たくさんの、技術を持った面白い方々と出会い、面白い建材を作って、広めていける価値や可能性が充分あると実感し、今日も地道に頑張ろうと思います。

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