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大阪と東京(映画 “Come & Go” を観て)

大阪に来て1年と4ヶ月程度になりました。
その間も西に東にと移動ばかりしていたので、時間がかかりましたが、ようやく身体が大阪に慣れた気がします。コロナ明けが近づいているのか、どこも人通りが多くなり、大阪も東京も混雑が当たり前になった気がします。昔は何ともなかったのですが、東京の人混みを歩きにくくなってしまい、すんなりと歩けなくなってしまいました。
大阪の混雑はすいすい行けるので、なんとなくリズムが違うのだろうなと思っています。
そんなところからも身体が馴染んだことを感じつつ、また東京に戻りそうな危機を感じる今日この頃。風吹けば流れるのが常とはいえ、せめてもう少しいたかったなと感じています。近いうちにトロントあたりに向けて風が吹いてくれることを祈りつつ、身体を任せるのみです。


さて、そんな私のアナザースカイとも言える大阪を舞台にした映画 ”Come & Go”を観ました。システマ大阪でお世話になっている方が出ておられ、初のリム・カーワイ監督との邂逅でした。初対面だったので(もちろん実際に会ったわけではありませんが)詳しくは知らないのですが、リム・カーワイ監督は中華系マレーシア人で、旅する映画監督とも呼ばれており、アジア、ヨーロッパなど世界各国を舞台に撮影をされているそうです。また、今作は大阪3部作の3作目だそうで、旅人の見る大阪を感じられる作品となっています。


”Come & Go”を観る少し前に、“ボクたちはみんな大人になれなかった 森義仁監督”を観ました。こちらはネットフリックス作品でしたが、劇場でしかも上映後には舞台挨拶つき。生で見る森山未來さんは節々からアーティストを感じる方で、一緒にいたいタイプとは言えませんが、素敵な方だなと感じました。
この映画は東京を舞台にした映画です。森山未來さん演じるボクが3つの時代を生きる姿を撮ったもので、3つの時代の東京と3人の女性との出会いによって、紡がれていく人生の物語。

”Come & Go”は群像劇で1つの時代を多くの登場人物の視点で描くもの、“ボクたちはみんな大人になれなかった”は3つの時代を1人の人物から描くもの。群像劇という点では、“スパゲティ・コード・ラブ”(丸山健志監督)の方が近く思えるのですが、どこか対比となっているのは“ボクたちはみんな大人になれなかった”だったように感じます。

(“スパゲティ・コード・ラブ”は“ドライブ・マイ・カー”で助演ワダデミー賞を獲得しそうな激推し中の俳優さんの1人、三浦透子さんが出ております。劇中で歌っておられ、調べてみると、“天気の子”の劇中歌「祝祭」を歌っていたのが、なんと三浦透子さんでした!!こちらもびっくりでしたが、“ドライブ・マイ・カー”からは想像できない三浦透子さんの表情が見られる“スパゲティ・コード・ラブ”も、良かったら是非!)

似ている匂いを感じたのがなぜなのか考えていたのですが、これは“ボクたちはみんな大人になれなかった”が今と90年代の東京を同時に描いているからだと思います。私自身の体験とも共通するからかもしれませんが、江戸っ子として、生まれも育ちも東京であった私が馴染んだ場所としてみる東京と、令和に入ってから短くも濃密な時間を過ごした大阪。東京のような雰囲気を出す部分もありつつ、西独特の雰囲気を色濃く残してくれている大阪。
どちらが肌に合うかというと、迷わず「大阪やろ」と答えてしまいそうになるのは、おそらく人の好さなのかもしれません。ただ映画として一歩引いたところから見ると、少し路地を入るとわからなくなる大阪と、どこを映していてもだいたいわかる東京と。東京にしても同じようなところを行ったり来たりしているはずの私でも、生まれ育った街と、少し住んだ街ではこうも違うものかと寂しさも覚えました。


映画“Come & Go”では、旅する監督としての視点として、多くは語られないものの田舎から出てきた女の子、中国・台湾からの旅行客、マレーシアから仕事で訪れたビジネスマン、ネパールの難民、ミャンマー人留学生、ベトナム人技能実習生、出稼ぎの韓国人など人種のるつぼとしての大阪が描かれます。大阪で生まれ育った警官として、一番まともなことを言うのが千原せいじというおかしさも交えつつ語られる大阪の表と裏。


私の視点はどちらかといえば外者のはずなのに、これだけ大阪という国に親しみを感じるのはシステマのおかげだろうなと、ミカエルやシステマ大阪のみなさん、もちろんその他のグループのみなさんにも感謝しながら、自分の淡いアイデンティティの着地点はどこかなと、今日も今日とて漂い続けております。

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