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初な恋

それは小学3年生のとき

前触れなしに突然やってきた



初恋



同じクラスだった男の子 Yくんが好きだった


小学校2年生の時転校してきた私は
シャイで話しかけるなんて滅相もなかった


初めて彼を廊下で見かけた時に

びびびっときた

つまり一目惚れ


とにかくルックスが最高で
私のストライクゾーンのど真ん中を貫いた


日焼けした健やかな肌


陽に当たるときらっと輝く茶髪


ブラックホールのように私を吸い込む瞳


ラクダも顔負けのふさふさの長いまつげ


きりっと勇ましい目鼻立ち


かっこいい じゃなくて 綺麗な顔 って思った



たった9才の初恋 
ルックスだけで好きになってもいいじゃないか



とにかくあの顔が大好きだった




3年生で同じクラスになり初めて話しかけたのは
たしか彼のほうだったと思う

内向的過ぎた私は遠くから見ているだけで
満足していた


彼が私に話しかけてくる


Yくん「名前なんていうんだっけ」


私「Ördekだよ よろしくね」


これだけかよ!って感じだけど

その日の夜脳内録音したその会話を
ずっとリピートしてたなあ



彼を一言で表そうならば「チーター」がぴったり


チーターの如く颯爽と走って 俊足はピカイチ

肉食動物みたいに前しか見ない 野心丸出し


ズルいにんまり笑顔にはネコ科の片鱗が見えた



チーターはその日から毎日話しかけてきて
私も徐々に心が開いていくのがわかった


Yくん「〇〇体育館で新体操やってんの?
    俺もそこでドッヂボールやってるぜ」


私「やってるよ もしかしたら会えるかもね」


Yくん「そうだね 会ったらよっ!って言うわ」



こんな会話ばかりしていたと思う

この時位から彼の見た目以上に彼の性格に
惹かれていった



が先に言っておく


そいつは好きな人が常に複数人存在し
勝手にランキング付けを行うような
クソほどしょーもない男でした


今思えばそいつは完全に未発達のENTPでした


完全にFeが欠落してる野郎でしたわ



話を戻しましょう


彼は見た目こそバカっぽいものの

賢くて でも勉強ができるわけでもなくて

謎解きとか発表とかが得意なタイプだった

そしてもちろん屁理屈も上手かった

怖いもの知らずでどんどん色々なものに挑戦する彼の姿がかっこよくて

でもちょっと意地悪でよく彼にいじられてたなあ



当時の私はメガネの野暮ったい少女だった 

よく「メガネ猿」といういじめのほかないあだ名で呼ばれていたけど 不思議といやじゃなかった




恋の魔法とは本当に偉大なものである




初めて話してから半年くらい経った頃には

私は70%くらい彼に心を開けるようになっていた

女友達と一緒になって逆にチーターをいじった

結構しつこく ねちねちしていたと思う



校門まで一緒に彼と友達と私で帰っていたけど

彼が言った「もう先生に言うからな!笑」

いつもヘラヘラしてたから今日も冗談だろうと
友達と話しながら帰った




翌日予想に反して先生に呼び出され
困惑の私とその友達


正直にやったこと全部話して謝ったけど
どんないじりをしたか覚えてないってことは
つまりそういうこと


反省なんて全くしていなかったから


それでもそこで
「人には人のキャパシティが存在している 
そして他人は見ることができない 

だから人の気持ちも汲み取ってコミュニケーションを取らなくてはならないんだ」

ということを学習した私は彼に反してFe機能を着々と向上させていった


それからキョリは少し遠のいたものの
仲良くしてくれた お互いいじりをやめた


けれどどこか寂しかった



そして4年生になり 再び私の転校が決まった


最後の学年集会では「哀」を露出させたくない
謎のプライドがあって

一度も彼の方を向けなかった


転校してしまう前にもう一つエピソードを挟もう


実は想いを伝えられなかったわけではなく
「好きバレ」はしていた


友達が彼に「Ördekがあんたのこと好きだって」
ってバラした ふつうに最悪だった


結構屈辱的だった私は

「全く関係のない第三者に自分の恋愛を台無しにされるなんてこと以上に最悪なことなんてない」


と鳥のフンがランドセルに落ちてきた事件も忘れ

勝手に身の上に起きた最悪だったことランキング
の頂点に君臨させてしまった


そして読者の皆様の殆どが経験するであろうこの
「好きな人を友達にバラされた事件」

の反省点として

「片想いは1人で楽しむもの他人と共有しない」
ということを学んだ

でも好きバレのあのなんとなく気まずい雰囲気
の沼にハマって

中毒になったかのように利用するようになるのは

小学校高学年に上がってからのおはなし




これ以上に屈辱的だったのは

友達の密告に対するチーターの返答のほかない


「え、まじ? 俺も好きだよ」


胸が高鳴る


(え?うそ?私たち両想いだったの、、)


「3番目に!!!!」



初恋クラッシャーとは彼のことだったのだろう


今の私ならこの時点で激萎えだが

当時の私は妙に喜んでいた(気がする)


好きな人の「好きな人ランキング」
に入っていただけで最高に嬉しかったんだろう



この時期に複数人の男の子から告白を受けたけど(リアルにここまでの人生最大のモテ期だった)


彼への気持ちは揺らぐことなく


加えて妄想大好き少女だった私は
手を繋ぐこと 一緒に帰ることとかを想像してる

THE一途な女の子だったな
※このTHEの読み方は「ジ」ですよ!!


彼に告白しよう!と企んでいたけれど
その爆弾発言でやる気を完全に失った


それでも冷めなかったのは恋をしていたのが本当に自分だったとしても信じがたい


このようにしていじられ 振り回されながら

彼に惹かれた いや正確には轢かれた私だったが

運命というものは変えられず転校することになる

最後に交わした言葉は覚えていない



あれから5年たった中学3年生の夏

奇跡が起きた


彼と偶然再会を果たしたのだ



テニスの中体連 現役最後の大会


トイレへのまっすぐな道のまんなかで


前から見覚えのある人間が近づいてくる


全身でアンテナを向けた


黒いユニフォーム 頭にはYONEXのキャップ

肉食動物の目 焼けた肌 シュッとした輪郭

右手には彼が好きだった青色のラケット



目は疑わなかった 間違いなく彼だったから

思わず立ち止まった 声をかけようと思って


でも出来なかった



ドラマの主人公になったようで


演技とかではなく喉が発声を拒んでいた


無意識的に話しかけてはいけないと察知したのか
彼が通り過ぎるのを見ることしか出来なかった


今でも思い出すだけで後悔と切なさで一杯になる

どうして話しかけられなかったんだろう と


彼の周りだけ空気が冷たそうに見えて

ドラマでよくある演出みたいに

すれ違う瞬間スローモーションになった


その表情に笑顔はなく 
冷酷な2つの黒い瞳が5年前よりも黒い黒で
黒曜石のように私の高鳴る心臓に傷をつけた


目を合わせてもいないのに
あの攻撃力を繰り出すとは

目を合わせていたら呪われていたのかも

それは多分一生彼を忘れられない呪い



思わず後ろを振り返る


やはり彼は背中に思った通りの苗字を抱えていた



本当にあなただ と確信を持って認識するには
その字は迫力がありすぎた



もう昔の俺じゃないんだ



そう言われたような気持ちになった



あれからどうしたのか記憶がない

彼の試合を観たはずなのに

その映像はぼんやりとしか思い出せない


試合で負けたことより初恋の人と話せなかった自分を責めた


今でもその思いは消えない


このnoteを見返すたび
彼に似た男の子を見るたび
ドッヂボールの試合を観るたび
何かしらでチーターを目撃するたび
小学生の男女が仲良く帰る姿を見るたび


思い出すんだろう


知り合いに話すようなたいした初恋ではないけど

また自分の言葉で綴ると哀愁が
口の中で溶ける砂糖みたいに広がる


私の大切な思い出


今もタイプかと訊かれれば そうではないけれど


今会いたいかと訊かれれば そうではないけれど


性格いい奴かと訊かれれば そうではないけれど



初恋の相手があなたでよかったです



もう会わなくていいけど 

もう一回だけ話しをしてみたい

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