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【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #22.0

翌日、彼女はまた学校を休んだ。ただ、昨日との違いは今朝僕のケータイにメッセージが届いていたことだ。

「キネン君、ごめん、今日も学校休むね。昨日みたいに家の前で待ってるなんてしないから安心して。いや、待ってて欲しかった?」

という内容だった。なんだか距離が近づいた気がしたし、昨日と違い安心もしたので、僕は了解の返信をした(最後の部分は恥ずかしいので無視した)。会えないのは寂しかったけれど、学校では穏やかに過ごすことができた。

の、はずだった。様子が変わったのは昼休みからだった。

昼休み、いつものように飲み物を買いに行こうとしたときに、弁当を家に忘れてきたことに気づいた。今日は珍しく、妹が弁当を作っていて、ついでにということで僕の分も作ってくれていたのだ。妹いわく「作ってあげたわけじゃなくて、余って捨てるのももったいないから」だそうで、いらない悪態とともに渡されたものだった。にも関わらず家に忘れてしまった。これは帰ってから何言われるかわからないなと恐怖に襲われたが、時すでに遅し。とり敢えず妹には平謝りするしかない。夕飯の代わりに食べるのもありかもしれない。

そんなことを考えながら、パンでも買おうかと1階にある購買に向かった。購買は人気商品の争奪戦はあらかた終了していて、残り物がちらほらあるような状態だった。僕はカレーパンとフルーツサンド(どちらもいつも売れ残ってる気がする)を選び、コーヒー牛乳とともに購入した。

教室に戻る途中、いつかのドレラと同じように屋上に続く階段から僕は呼び止められた。僕はもしかしたら屋上に続く階段から呼び止められやすいタイプの人間なのかもしれない。ただ、今回は男子だったけれども。

「星野君、ちょっといいですか?」

さらにドレラの時と違っていたのは、全く面識のない人間ということだ。僕は知らない人間にも呼び止められやすいのだろうか、それはわからない。

「何です?」

「ちょっとだけ時間をくれませんか?お話したいことがあるんです」

身長はあまり高くなく、物腰も柔らかで、そもそもとても優しそうな顔をしている。僕に敬語で話しかけてくるあたり、もしかしたら1年生かもしれない。いや、でも初対面だからかもしれない。でもとり敢えず呼び出して暴力を振るとかそういう危険なタイプでは全然なさそうなので、ついていくことにした。ドレラのおかげで免疫ができていたのかもしれない。

階段を上り、ドレラの時と同じように大きな扉を開け屋上に出た。そもそもこの屋上は、今の時代に珍しいのかもしれないけれど、立ち入り禁止になっていない。けれど大々的に開放しているわけでもなく、なんとなく開放されているといった感じで、そこにあった。周囲は高いフェンスで囲まれているけれど、安全面とかそういうのをこっちが心配になるくらいだった。

彼は「ミキオ」と名乗った。1年生らしい。太陽の光の下で新ためて対峙しても、見たことはなかった。といってもクラスメイトの顔と名前だって怪しいので、ましてや一年生などわかるわけがない。怒っている様子はないけど、彼に何か恨まれることでもしたのだろうか。心当たりは全くない。僕は普段から他人に迷惑にならないよう一応は気をつけて生きているつもりなので、もし彼に何か恨まれてるとか迷惑をかけているとしたら、無意識か間接的かそのあたりなんじゃないかと思う。呼ばれただけでネガティヴな要素ばかり考えてるのもどうかと思うが、それも僕の性格といえた。

「すみません急に。お呼びしたのは他でもない、ドレラのことです」

(続く)


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