見出し画像

ケニアのサバンナで「コミュニティ」の力を感じた私が、教育ベンチャーHLABに戻ってきた理由。

水上 友理恵 プロフィール
教育系スタートアップHLABで広報・渉外担当ディレクターを務める。慶大法学部を卒業、ロンドン大学大学院社会学部人権学科修了。国際人権NGOや国連にてインターンをし、JICAで南部アフリカのインフラ開発・援助政策策定を担当。WeWorkのコミュニティマネジメントチームを経て、現職。

1 : 20歳の時に渡航したケニアで訪れた「挑戦する若者を支えるコミュニティ」が原点

画像2

――「コミュニティの力」を信じるきっかけは何ですか?

 20歳の時のケニア訪問が、私の原体験であり原動力です。当時、エディンバラ大学でジェンダーや開発について学んでいた私は、マサイ族のあいだでは、女子割礼という伝統的通過儀礼が行われており、結婚の準備ができた女性は学校に行かずに家庭に入ることが求められていることを知りました。その事実を自分の肌で理解したいと、現地で受け入れてくださった日本人ホストファミリーに伝えたところ、サバンナへと連れて行ってくれたのです。


 周りを見渡しても、遠くに生い茂る木々と地平線しか見えない場所で、「もっと勉強を続けたい」という理由で伝統的な慣習から逃げてきた女の子を保護しているコミュニティがありました。割礼の儀式の数日前に、村から命からがら逃げてきた女の子たち。見つかると殺されてしまうのを覚悟で夜通し裸足で逃げる辛さは想像もつきませんでしたが、逃げ場となる「コミュニティ」があるからこそ、女の子たちは決断できたと実感しました。「今すぐ結婚せずに勉強したい」という伝統的コミュニティでの「異端児」も、逃げ場となるコミュニティさえあれば生き延びられる。コミュニティというアプローチには、法律やキャンペーンでは変えられないことを変えうる力があり、「コミュニティの力」が世界を大きく変えられるのではと思った瞬間でした。


 そこから国際協力に興味を持ち、国際人権NGOや国連でインターンを行いました。またコミュニティにも興味があった私は、友人に誘われたことをきっかけに大学4年生の時にHLAB TOKYOの実行委員を務め、次の年には、委員長としてHLAB TOKUSHIMAを立ち上げました。


 それまで、国際協力に関連する活動にどっぷりと浸かっていた私が、2年にわたりHLABの活動に没頭した理由は、HLABが持つ「コミュニティの力」に引き込まれたからでした。HLABに集まる人たちは、高い熱量で自分の好きなものに打ち込んでいて、それぞれの興味や関心、専門性の違いを認めあい、お互いから学んでいます。ーー自分のありのままを認めてくれる安心感と、「将来的に何か一緒にやれたらいいね」と話しながら切磋琢磨できる緊張感のバランスが絶妙に存在するーーそんなHLABが持つ「コミュニティの力」は、私にとって衝撃でした。

2 : 国際協力を志しJICAに就職するも、コミュニティを主体的に創るWeWorkに飛び込む

画像2


――学生時代の憧れだった国際協力業界で働いていた友理恵さんが、全く異なる業種であるグローバルなコワーキングスペース運営企業に転職したことは驚きでした。

 私も、JICAから転職するかは一年くらい悩みました(笑)国際協力業界への就職、国連での勤務が20歳からの夢だったので、せっかく就職できたJICAを辞めることが良いことなのか考えました。


大きな組織だからこそ研修も充実しており、マラウイでの駐在中は、滞在した村でコミュニティのパワーを感じる経験をさせてもらうなど、貴重な機会をたくさんいただきました。数百億円のインフラ融資案件を担当したほか、「2050年の世界、日本、JICAを考える」というテーマの理事長直下のリサーチグループにも所属しており、パブリックセクターだからこそ扱える規模や期間の案件にやりがいも感じていました。ただ、自分の原体験から来る「もう少し直接的にコミュニティに関わりたい」という気持ちが抑えられず、思い切ってJICAを辞めることにしました。


――コワーキングスペースで学んだコミュニティマネジメントとは何ですか?

 転職後のコミュニティづくりに関する学びは全てが新鮮でした。コミュニティマネジメントはユーザーである「メンバー」に直接触れ合う仕事なので、彼らが抱える課題を先回りして解決したり、コミュニティへの貢献を引き出すコミュニケーションを取ることが求められます。日本オフィスが立ち上がったばかりの外資系ベンチャーならではの「一からコミュニティを創っていく楽しさ」「年齢や立場を越えたフラットなチームの信頼感」「公用語は英語」「Slack上で驚くほど速く行われる意思決定」なども、私にとって最高の経験でした。


 私が学んだコミュニティマネジメントの真髄は、「お客様」から「ファン」、そして「支援者」になってもらうような場づくりだと感じています。メンバー一人ひとりのコミュニティに対するエンゲージメントを高めていくことが重要です。そのためには、例えばイベントでも運営企業がお客様のために全て準備するのではなく、メンバーが好きなものを持ち寄れる会にする。クリスマスツリーを飾るのであれば、骨組みだけ手作りして、メンバーの顔写真をオーナメントとしてツリーに飾る。一人ひとりのコミュニティへの貢献が可視化される空間を創ることで、自然とコミュニティに参加する意識を持ってもらうように工夫していました。

3. 「レジデンシャル・カレッジという何か面白いことがスタートしそう」というワクワク感で戻ったHLAB

画像3


――新天地で楽しそうに働かれていた友理恵さんが、さらにHLABにてチャレンジする、そのきっかけは何だったのでしょうか?

 「HLABは素敵なコミュニティであり私のホーム。いつか実力をつけて帰れるといいな」と、JICAに就職した時から、ずっと思っていました。だからこそ、毎年のサマースクールには自腹で航空券を買っては徳島に飛んだり、夜中に東京のサマースクールに差し入れをしたり、機会があればHLABに行くようにしていました。


 「何か面白そうなことが始まりそう」と直感的に思ったきっかけは、去年の秋頃に行われた、経産省の「未来の教室」実証事業です。その一環で、「レジデンシャル・カレッジは、心理的安全性を育む――コミュニティマネジメントから考える「未来のキャンパス」とは?」というテーマでお話をさせてもらう機会があり、「HLABが都内でレジデンシャル・カレッジを本格的に設立する」という機運の高まりを感じていました。


 ただし、実際に「ジョインしないか?」と声をかけてもらったときには、「コミュニティマネジメントを学び始めた段階での転職でよいのか」と半年以上悩みました。最終的には、「最高のタイミングで自分に合った場所にいることが能力」「Act first, Apologize later」という私のポリシーと、「面白そうなことが始まる」というワクワク感、この二点を信じてHLABに戻ることを決めました。学生時代から知っている先輩たちと一緒に働けるということ、そして自分のコミュニティづくりに対する熱意がそのまま活かせそうと思ったことも、決断の一助となったことは間違いありません。


――実際に転職してみて、想像していた HLAB Lifeを送れていますか?

画像4

 現在は、HLABコミュニティの発展を目的とした資金をスポンサーから集めるファンドレイジング業務と、コミュニティデザイン業務を担当しています。自分が心の底から信じられるビジョン、ミッション、アプローチを語ることでいろんな人を巻き込んでいく。そのプロセスが、HLABらしくて好きです。また、HLABのような若者のための素晴らしいコミュニティを、さらに活性化させていくために何ができるか、自分の頭で考えて実際に動かせるのは知的に興奮する仕事だと感じています。


 また、高校生の成長や変化に心が揺さぶられる瞬間があるのもHLABらしさですよね。5年ぶりに帯同したサマースクールで、一番話し込んだ高校生から最終日に感謝の手紙をもらった時は、思わず感涙してしまいました。自分が何のために働いているのかを再確認できる機会が毎年あるのは、恵まれたことだと思います。


 大学の同級生から「転職の相談をした誰よりもキラキラしている」と言ったときに、「HLABに転職してよかった」と実感しました。自分が意義を感じられる事業に打ち込むことができ、大企業では避けられない「会社を存続させるために必要な、あまりやりたくないこと」を無理にやらされることもなく、同世代と良いチームワークで働くことができる環境は、なかなか無いと思います。これまでHLABを続けてきてくれた様々な方に感謝する気持ちで、HLABの10年先を見据えて、新たな取り組みにチャレンジできるのは嬉しいことです。


――これからのHLABに対する「ワクワク感」について、具体的に教えてください。

 2021年4月に都内にて開校予定の、日本初の居住型教育機関「レジデンシャル・カレッジ」の設立準備を進めています。ついに「暮らして学ぶ場」が実現できるということで、HLABは社運をかけたチャレンジをしていきますよ! 実は、私自身も20代のほとんどで共同生活をしてきているので、暮らしながら学ぶことの重要性は骨身に染みています。留学中、様々な国籍の学生との共同生活を通じて自らのステレオタイプに気づいたり、日本に帰国してからもHLABの先輩たちと数年間暮らすことで、結婚や転職といった自分の数年先の姿をイメージできました。実体験を持って、「レジデンシャル・カレッジ」のとてつもないパワーと可能性を強く信じています。


 リベラルアーツ大学における寮生活のプロトタイプとして2011年に設立・運営してきたサマースクール、2016年にオープンした中目黒の「The HOUSE by HLAB」、そして2018年オープンの「NODE GROWTH 湘南台」 での経験を通じて、HLABが9年間蓄積してきた「レジデンシャル教育」に関するナレッジの集大成としての一大プロジェクトが、この「レジデンシャル・カレッジ」です。法人スタッフとして戻ってきた仲間や、HLABアラムナイ、インターン達と一緒に ”team HLAB”として、様々な企業・関係者の方々とこのプロジェクトを共創(Co-Creation)できることが、ワクワク感の根源です。


 また、コミュニティづくりの観点からは、「レジデンシャル・カレッジ」を、HLABアラムナイが安心して帰ってこれる「ホーム」であり、新しい学びがある刺激のある場所にできたら、と思っています。食堂で「同じ釜の飯を食う」中で生まれる偶発的な会話を楽しめるような暖かな場を作れたらと思いますし、「レジデンシャル・カレッジ」に住んでいる人はもちろん、HLABアラムナイ全体のそれぞれの興味・関心、専門性、経験が可視化される仕組みをつくり、それらの違いを活かして、HLABアラムナイと企業や専門家とのコラボレーションがたくさん生まれる場をつくれたら、と想像しワクワクしています。HLABコミュニティは、もっと創造的なコミュニティになれる可能性があると信じているからかもしれません。ケニアで出会った少女のような「異端児」を受け入れるような優しい包容力があり、コワーキングスペースで学んだ「ユーザーを支援者に育てる工夫」が凝らされたコミュニティにしていければ嬉しいですね。


 このように、HLABのみんなが帰ってこられる「学びの体験・空間・コミュニティ」を提供できるように頑張っているので、ぜひHLABで働くこと、手伝うことに興味がある方はメッセージをくれると嬉しいです! HLABへの関わり方は人によって様々あると思います。「久しぶりだから」「能力・経験が足りないから」「どう貢献できるかわからないから」といって敷居を高く感じる必要は全くありません。このエントリを読んで、HLABに関わりたいと思った方は、ぜひ気軽にお問い合わせくださいね、待ってます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?