「俺はお前の技術を買ったんじゃない、お前の度胸を買ったんだ」

中学生の頃、学年合唱の指揮者に選出され、ド緊張の本番当日を迎えた日。
体育館に向かう途中で、音楽の先生に言われた言葉だ。

先生は厳しいことで知られていて、確かに分かりやすく優しくはなかったけど、指導に愛情はあったと思う。
だからだろうか、疑うこともなく、その言葉をすんなり受け入れ「先生がそう言うなら大丈夫」と、心強く感じ、胸を張れたことを覚えている。

この言葉は、その後も魔法のように私の中で残り続けていて、大人になった今も、自分的ピンチを迎え立ちすくむ時に思い出す。

何が無くても、私には度胸がある。

そう思うだけで、変な肩の力が抜けて、目の前の壁に向かってみようと思えてくる。とりあえず、ぶつかってから考えようじゃないかと。

多分、当の先生は、私がその一言を大事にし続けているなんてこと、想像もしなかっただろう。でも、私は本当に励まされ続けていて、いくら感謝しても足りないぐらいだ。

残念なのは、この気持ちを、どうあっても直接伝えることができなくなってしまったこと。でも、だから、今ここに文章という形にして残しておこうと思う。

あの一言に、いまだに私は何度も救われています。
私の人生に関わっていただけたことを、心から、深く感謝しています。
多分、これからも感謝し続けます。
本当にありがとうございました、ありがとうございます。