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産科出血の考え方の筋道 2017年3月27日の書きかけだがほぼ書き終わり

はじめに。

2017年3月21日に見た山形新聞のニュースによると、山形県で、子宮筋腫のための単純子宮全摘出術の術後に、出血で患者が死亡する事故が起こった。

前著「放射線科のレポートはなぜ無視されるのか?」を書いた後だけに、心に引っかかった。

一定確率のヒューマンエラー=技術ミスおよび判断ミス、難症例での生体組織の破綻などによるものは正直言って仕方ない部分もある。

ただ、この画像診断や遠隔診断のインフラ自体が整っている中で、少しばかり残念なニュースだ。
(政治的な理由により遠隔診断は都会の田舎以外ではあまり進んでいないし、当分進まないだろうが。)

地域のインフラ上、輸血やその他の薬剤の不足も一因かもしれないが、手術後一定時間で、バイタルサイン(血圧や呼吸数など)が崩れたときに出血性ショックやその他の異常を疑い、造影CTや血管造影を行い、そこから外科的対応や放射線科的対応を行えば救命しえた可能性も高い

しかし、それはあらゆるインフラやスタッフなどの問題が整っていればの条件付きである。

都会の都会、都会の田舎でさえ、しばしば問題になっているのに、田舎の分院であらゆる条件を期待するのはコスト的にも不可能であろう。

この事故において、産科および手術部の医師やスタッフの問題、周辺地域も含むインフラや症例の分担の問題などは僕も知らない。

また、産婦人科を含む外科系の新人の生育背景や教育体制の問題も見聞きしているし、僕自身煮え湯を飲まされたのでそちらの問題がメインの可能性も高いとも思っている。

ただ、僕自身が研修医の2か月を除き、産婦人科に直接従事していないので、直接不利益をくれた人格も能力も下劣な産婦人科医の方々以外を恨むのは筋違いであり、放射線科的な判断と建設的な意見=希望的観測を書くにとどめたいと思う。

なお、僕の本の欠点として、イラストや映像がないので、医療関係者であれば教科書を参考にしていただく方が良いし、そうでない人もインターネットで用語を検索される方が望ましい。

子宮筋腫による単純子宮全摘出術。

女性の過半数は大なり小なり子宮筋腫を持っている。
子宮の構造の中の筋肉が一部正常機能と関係のないところで塊を作る疾患。

統計学的な諸々は専門家や専門書に任せるとして、医学生や研修医にとって、正常出産よりもポピュラーである。

他の疾患も含めて、患者と医療者サイドの温度差になる頻度の問題。
産婦人科でなくては処置できなくて、かつ、定期の予定手術で行われるものだからである。
(稀に緊急手術の場合もあるが。)

妊娠可能年齢の場合、小さいものであれば経過観察、部位や出血量などによってはホルモン療法や薬物療法、小手術(筋腫核出術など)の適応になる。
小さな治療によるコントロールの範疇を超えれば、子宮摘出も視野に入る。
この手術の前後で、血管造影下に栄養血管塞栓術(UAE)を行うかどうかは施設次第だろうか?

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