書評 #学生を戦地に送るには # 田辺元 #悪魔の京大講義を読む #佐藤優 #洗脳

書評 #学生を戦地に送るには  # 田辺元 #悪魔の京大講義を読む #佐藤優 #洗脳

表題の思想や洗脳の問題だけでなく戦争を形成した条件や状況の描写が素晴らしい。

2017年7月30日出版なので、あとがきとまえがきが少し懐かしい。
イスラム国家=ISの話題が沢山。
しかし、既に、ローマ教皇は第三次世界大戦は始まっていると宣言を出していたと思う。
2014年のロシアのクリミア併合があるいは2022年2月24日よりも、第三次世界大戦を構成する要素としては大きかったかもしれない。
メディアでどれだけ話題になって死んだかが共通理解の問題では大きいが、実行上の意味合いはそうとは限らない。
サッカーでも、ゴールやアシストばかり評価されるが、その何人か前のプレーや、あるいは一見関与してないように見えるおとりの動きなんかが決定打ということもしばしばある。

それはともかく、自分を潰した京都大学とその分校の関西医大への何らかのヒントがあるかと思ってみてみたが、流石は佐藤優先生。
内容は360ページを3時間半といつもよりはるかに速く拾い読みしたし、難解な論理や宗教なんかはスキップしたので、それは後日読まないといけないが、むしろ、田辺元の仕業よりも、戦争全体について丁寧に記載している。
国策映画でのリアルな描写と意見誘導。
戦場の設定まで含めてよく準備されていたと分かる。
本書にそれが載る意味は、多分そういう諜報工作の一環として京都大学が利用されたという事だ。
そして、京都帝国大学の学生さえもが死兵になって天皇陛下のために戦ったという記録が欲しかったのだろう。
講和条約に向けて。

今と違って富裕層の多かった京都大学からも兵隊と死者を出し平民に一体感を持たせる。
また、226事件からの流れはP318あたりにくわしくあるけど、大雑把に見れば戦争自体が産業革命に伴う(権力者から見た)余剰人口の口減らし、富の集約などを用いてクーデター阻止の意味合いがある。
だから、世界各国の権力者のもたれ合いとしての戦争がある。
それを遂行するために、宗教に酔わせる、美談に酔わせる、自分に酔わせる。
ある意味で、社会実験でもあったのだろう。

たかが高校生向けのペーパーテストを潜り抜けた程度の秀才がほとんど。
それを、哲学と宗教を研究する本場の理屈を乗りこなした田辺と言う男を使って、扇動させる。
理屈としては、論理の飛躍、論理のすり替えなどを使って、思想を誘導する。
それだけでなく、実行フェーズで日本人の得意な同調圧力を利用する。
これは、ナチスの方策を田辺が使っただけではなく、その後も各国で似たようなことはあるようだ。
ある意味で、キリスト教の一部の学校の教育も似ている。
六甲学院も何年か前に、バカなイベントをやったようだ。
命を救える医師や弁護士になろう。
後輩をだまして潰して企業に媚びる奴がそれをやると説得力ないよって感じ。
ましてや、昔と違って情報統制は難しい。
そして、関西の大学病院や病院の不祥事の山。
いくつかの医大はいつのまにか留年ビジネスのシノギの道具。
しかし、まあ、それを仕掛ける人たちの頭の中はまっさらな人間を洗脳すること。
リベラルアーツの達人を用いて自由なアタマを不自由に追い込んでいく。
確かに、医者や弁護士は能力と意思によって一部の人間を救いうるが、現実を見れば他の職業と大差なく、多くは庶民の足を救って金を貰う仕事。

それはともかく、思想や洗脳の方策まで普通の民衆は学んでいる時間はない。
また、洗脳するのに邪魔だから、思想や哲学などの文系学生から戦場に送られやすい。
実際、今の理系の就職有利なんかそんなものだろう。
文系を潰すより理系を儲かるようにすれば、自分たちの好きなように文系の人材をコントロールできる。

文中にあるナチスの健康オタク。
この発想の源は、自分の体は自分のものではない。
どこかで聞いたかと思えば、カトリックの一部と北朝鮮の主体思想。
六甲学院の社是もManForOthers。
確かにいわゆるエゴイズムはそれはそれで醜悪で迷惑だが、どこまでも自分がないとそれはそれでバランスが悪い。
なのだけど、教育をやりやすくするには、極端なくらい後者の方がいい。
結果は個人責任に押し付けるけど。
関係ないようで、論理の飛躍は本書に重なる。

それはともかく、仙石原というエヴァの第3新東京市を舞台にすることにも、この本との縁を作る佐藤優の流石の設定。
そういう雑談も含めて全部本書に繋がる。
それで、軽井沢から戦後出なかった田辺元の話にも繋がる。
戦争を契機にできた富裕層の町に、個人的怨恨を晴らしに来るのはハードルが高い。
逆に言えば、富裕層や金融業者が裏で手を引いて爆撃の場所を決めて地上げやってたんじゃないのって感じ。

こうやって読んでいくと、311が310の東京大空襲と数字の連続性を持つことも考えてしまうし、ISがイスラエルが監修していていたという噂や、ISには覚醒剤利権も噛んでいるというあとがきの記載事が、色々想起させる。
満州国と覚醒剤利権が北朝鮮に引き継がれたという陰謀論も重なって見える。

本書は途中の小ネタの数々も凄く勉強になる。
しかしながら、途中まで正しいことを教えておいて最後の話のすり替えで戦争反対が戦争礼賛になる構図を最後の方に記載している。
最後に嘘を教えた田辺元との対比だろうか?

どこのページか忘れたが、何もしないことは罪悪という思想が根底らしい。
それを、どうすれば、戦争賛成になるか、組織の思想と行動を積み上げていく。
数学で考えればわかるが、戦争反対は戦争に興味があって否定的なわけで、無関心よりはコントロールしやすい。
まさに、田辺元はそういう作業をやったのだと思うけど、実はそこに来た学生に対するそれまで思想や学問を積み上げさせた共犯者がいることになる。
そういう意味で、教育の重たさを感じる。

最近増えたように思う救急車のサイレン。
戦場はウクライナの各都市のはずなのに何故?
一方で、動物的感覚としては正しい。
新型コロナもコロナワクチンその他のコロナ行政も陰謀論であろうとなかろうと社会の変革を要求する。
まるで戦争の準備が進んでいるようにも見える。
というか、この本の内容の裏返しの政策もあり、改めて、歴史を知らないものは歴史に泣くのだと考えさせられる。

じゃあ、お前は戦争反対のために奔走するのか?
そんな元気もないしね。
戦争なんかあってもなくても、自分を迫害した個人や組織が壊れたらいい。
元気があって、希望があって、人間は建設的に、平和的でいられる。
二つの条件がそろっても、そうならないこともあるけど。
こういう自分が形成されたのも戦争賛成派のプロパガンダの影響だろうか?

急いで流したせいもあるけど、思想的な部分は本当に難しい。
しかし、結構丁寧なので、こういう部分を感覚的にでも読み解いて、本当の意味で、戦争の要素を潰していく作業を多くの人が経験するが大事なのではないかと思う。
おそらく、そうはならずに、また戦争は始まるのであるが、日本の被害を減らすにはこういう思想と実行の掛け算や様々な意味での国家や地域の強さが大事になると思う。
また、読み返すとするか。
アメリカに仕掛けられるのはせいぜいテロとか経済的な揺さぶりくらいで、直接戦争を仕掛ける国家がないのはアメリカが強大だから。
2023年1月22日 15時22分

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