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北海道の廃線跡探訪 第52回 美幸線(2/2)辺渓~仁宇布間


1.ごあいさつ

ご訪問ありがとうございます。

北海道の廃線跡探訪第52回 美幸びこう美深びふか仁宇布にうぷその2 辺渓ぺんけ~仁宇布間です。

第1仁宇布川橋梁から仁宇布までは、コンクリート橋ながら、残っている橋が多くなります

道道の高広パーキング附近から終点仁宇布までは、「トロッコ王国美深」が美幸線の線路をそのまま使い、エンジンつき軌道自転車を走らせています

なお、これからの投稿予定路線などは、初回記事にありますので、そちらをご覧ください。

2.辺渓~第4仁宇布川橋梁

1/5万地形図「名寄」 昭和52年修正に加筆

美幸線は辺渓を過ぎたあたりから、ペンケニウプ川の谷へ道道49号美深雄武線とともに入っていく。次駅の終点仁宇布までは14.9㎞もある。

やがて道道とクロスするが、道路は直線化され、踏切や路盤の痕跡はない。

南側に移った路盤は、水力発電所の裏手を通っていた。ここには美幸線では珍しいコンクリートアーチ橋の発電所放水路橋梁があり、放水路には殖民軌道仁宇布線の橋脚も残っている。ただ、放水路は鉄網で厳重に囲われているので、鉄網ごしに撮影するしかない。

①鉄網のなかの発電所放水路橋梁 右手前は殖民軌道の橋脚 2024年5月撮影

つづいて、コンクリート桁を連ねた第1仁宇布川橋梁で、はじめてペンケニウプ川を渡る。
2013年9月には樹木に覆われ、全体が見えないほどだったが、先月訪れたときは、工事のためまわりが開けており、格好の撮影ポイントとなっていた。

ヤブに覆われていた殖民軌道の橋脚もよく見えるようになっている。

②全体が見渡せるようになった第1仁宇布川橋梁 右手前は殖民軌道の橋脚 2024年5月撮影

第1仁宇布川橋梁を渡った先は農地化され、路盤は消失している。

やがて道路に沿った路盤は、樹林のなかのヤブとなり、第1と同じようなコンクリート桁の第2仁宇布川橋梁は道路からもよく見える。
この橋にも並行して殖民軌道の橋脚がある。

③第2仁宇布川橋梁 ここにも殖民軌道の橋脚がある 2024年5月撮影

第3仁宇布川橋梁も道路から確認でき、ここには殖民軌道の橋脚の基礎らしいものが川中に見える。

④第3仁宇布川橋梁 右の川中に殖民軌道の橋脚の基礎?がある 2013年9月撮影

七線沢川の橋はちょうど新しい道路橋のあたりだったため撤去され、辺渓方の橋台だけが残っている

⑤七線沢川に残る辺渓方橋台 2013年9月撮影
1/5万地形図「恩根内」「仁宇布」ともに昭和45年編集に加筆

この先も道路と並行する林のなかに、高広川橋梁などコンクリート橋が散見されるが、第4仁宇布川橋梁は撤去されていた

⑥高広川橋梁 2024年5月撮影
⑦小コンクリート橋 2013年9月撮影

3.「トロッコ王国美深」転用区間

1/5万地形図「仁宇布」 昭和45年編集に加筆

道道の高広パーキング附近から線路が現れる。

ここは「トロッコ王国美深」が運行するトロッコ(エンジンつき軌道自転車)の終点となっており、線路は折り返しために、ループ状に曲げられている。

⑧トロッコ終点のループ線 2024年5月撮影

ここから仁宇布までの線路は営業当時のままだから、なにかを見つけるという妙味は少し薄れる。

⑨トロッコ終点からすぐ仁宇布方にある右の沢川に架かるコンクリート橋 2024年5月撮影

線路には草もほとんど生えておらず、へたな現役ローカル線よりもよほど手入れがよくみえる。
2013年9月には日曜日とあって、8台も続行していた。

⑩手入れのよい線路 2013年9月撮影
⑪第5仁宇布川橋梁 ちょうど軌道自転車が来た(営業前の試運転) 2024年5月撮影
⑫沼岳沢川に架かるコンクリート橋 2013年9月撮影
⑬二十四線川に架かるコンクリート橋 2024年5月撮影
⑭二十五線川に架かるコンクリート橋 2024年5月撮影

4.仁宇布

仁宇布は下川方面への道道が分かれるところにあった。

元の駅構内は「トロッコ王国美深」拠点となり、休日には乗車を待っている人やその家族など、観光客のクルマが何台も停まっている。
美幸線営業時より数十倍(数百倍?)の人出はありそうにみえる。

⑮未開業区間の跨線橋から仁宇布駅構内を望む 2022年10月撮影
(タイトル写真は、同所から線路終端=北見枝幸方を望む)

駅構内には、将来の延長に備えていた島式ホームと駅名標(移設されている)が残り、線路もそのままと思われる。

⑯仁宇布駅のホーム 2013年9月撮影

駅舎は撤去されているが、宗谷本線智東駅舎だったヨ3500(5000)形が置かれている。

⑯元智東駅舎だった車掌車の車体 2022年10月撮影

元駅前には貨車用の長軸車輪をあしらった美幸線記念碑があり、「トロッコ王国美深」の看板にも旧仁宇布駅と書かれ、美幸線の終点だったことがわかる。

⑯仁宇布駅跡にある美幸線記念碑 2013年9月撮影

ホームに隣接してひときわ立派なトロッコの車庫・整備場があり、その後にはサハネ581-19が置かれている
近くには、スノープラウつき(ラッセル)貨車移動機もあり、こちらは塗装も真新しいようだった。

⑯トロッコ王国美深の車庫と美幸線のホーム 右端にサハネ581が見える 2022年10月撮影

以前は事務所(入国受付所)に美幸線資料室があったが、現在は事務所は新しくなり、旧事務所は閉鎖されている。

辺渓方の踏切近くには場内信号機がそのまま立っていた。
線路は路盤が緩んだのか曲がっており、もはや列車は走れそうもない。

⑰辺渓方の踏切から仁宇布方を望む 2022年10月撮影

トロッコは高広まで往復10㎞、約40分とある。乗りたかったが、中年男が一人で乗っているのはサマにならないし、時間もないので断念。乗車していた人たちは、すべて親子連れかカップルだった。

乗りもしないのに、写真を撮らせてもらうのは気がひけるので、許可を得るついでにトロッコのチョロQを購入。軌道自転車までチョロQになっているとは驚く。

トロッコ王国美深の事務所で購入したチョロQ 1000円也!

「トロッコ王国美深」は廃線跡利用としては出色の施設であり、開業から20年以上経った今では、美深町の主要な観光名所のひとつとなっている。

林道・農道クラスの道路としか交叉していないことや、すべての橋が、鉄橋に比べれば保守の楽なコンクリート橋だったことも幸いしたのだろうが、実現するまでは関係者の苦労は並大抵ではなかったろう。

森のなかを行く本物の線路を、自分で運転する(普通自動車免許が必要)軌道自転車で走るのは、さぞかし気持ちよいことだろう。いつか、実際に乗れる日を楽しみにしています。

今回はここまでです。

おしまいまで読んでくださり、ありがとうございました。

次回は胆振線を予定しています。


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