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書評『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法 』

 Webマーケティングの本は多岐にわたるが、今回紹介するタイトルの本ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法  は特に優れたWebマーケティング本である。


 リアルマーケティングとWebマーケティングにおいては、次の3点が異なる。

 ➀競合との物理的な距離があったためNo.1でなくてもよかったが、Webにおいては状況が異なる(世界中で最も高品質・安価・早いスピードという競合がある)。また、➁以前の売り場のスペースには限界があるという前提から、ブランドが威力を発揮していたが、ユーザーは商品やサービスを「ブランド」、「ショップ」といった類の「群れ」ではなく、それぞれの商品・サービスの「単品」で勝負することになった。さらに、➂コミュニケーションコストが高額であるという前提が変化し、コミュニケーションコストが劇的に下がったと著者は主張する。

 今では広く行われているWebマーケティング論の多くは、不十分であり、特に頻繁に起きている事象が「データの誤った解釈」である。

 そもそもマーケティングとは、なぜAが最も良いのか、A,B,Cという選択肢の他にも、X,Y,Zという選択肢はないかというあらゆる可能性を検討・分析して手を打つことである。しかし、A,B,Cの選択しでABテストを行い、最も良かった選択肢を選ぶというやり方は、ただのデジタルオペレーションに過ぎないと著者は批判する。


第1部 ファンダメンタルズマーケティング

 著者はファンダメンタルズクリエイティブとテクニカルクリエイティブに分けて説明する。なお、テクニカルマーケティングはファンダメンタルズマーケティングにより包含されるものである。

 ファンダメンタルズマーケティングについて第1部でみていくことにしよう。

 クリエイティブ(広告として制作されたコンテンツ)は3つの要素で構成されている。それは、➀「誰(どんな人)に」×「何(どんなこと)を」×「どう(どのように)」伝えるかということである。

 まず、「誰に」に関してだが、ターゲットユーザーを複数指定して、そのターゲットユーザーに商品の「何(どんなこと)を」伝えるかを考える必要がある。例えば、性別によっても大きく変わる。

 次に、「何を」に関してだが、どの訴求要素をメインに選ぶべきかは、ターゲットユーザーを誰にするかということとどんな競合がいるかによって変わるので、戦略的に考察すべきである。「何(どんなこと)を」の部分は必ず「その商品でしか言えない強み」でなければならない。

 ターゲットと商品特徴は車の両輪のようなものである。「誰に」、「何を」が明確に決まっていれば、ストレートな表現でもユーザーの心にきっちり刺さると著者は主張する。

 それから、「どう」に関してだが、適切な表現方法が求められるが、「誰に」、「何を」の方が重要である。マーケティングについて言えることは、「認知度」と「好感度」に対して「売上」はそこまで連動しない。さらに言うと「認知度」と「好感度」に対して「利益」はほぼ「無関係」だ。

 では、「誰に」「何を」「どう」伝えるかを実際にどのような手順で行うかをみていこう。

・その商品全体

・ユーザー

・競合情報

の3つを知ることから始まる。

 その商品の広告を作るためには、世の中に何万アイテムもある化粧品の中で、この商品”のみ”でいえることを調べて見つけ出さなければならない。


 そのためには事前リサーチが必要になるが、販売員のつもりで少なくとも消費者が疑問に思おうであろうことを想像し、自分でちゃんと理解して伝えられる知識を持ち合わせていなければならない。

 その手法の1つとして、インタビューがある。インタビューでは最低限吸収すべきものは、「キーワード」と「インサイト」である。インサイトを理解しながら、キーワードを理解することが重要である。他にも、SNS、ヤフー知恵袋、レビューサイト、アンケートデータの調査や専門家の意見を適切に聞く等がある。

 では、競合を知るためにはどうすればいいだろうか。4段階のドリルダウンで考える。競合を選択しと考えることがポイントだ。

 育毛剤の例をあげ、第1段階としてどこかに通うか自宅でケアするかという選択肢が考えられるが、競合のデメリットと商品のメリットの両方を考慮する必要がある。

 第2段階としては、➀サプリメント➁育毛剤。第3段階としては育毛剤の中の分類を、第4段階では売る育毛剤を選択するように組み立てていく。


 誰に伝えるかを考慮するうえで、ユーザーニーズの9段階分類を行う。

➀対策の必要性に気づいていない

➁対策の必要性に気付いているが「悩みや痛みは一時的なもの」だと思っている。

➂対策の必要性を自覚しているし、悩みや痛みは一時的ではないと思っているが、何も手を打っていない(探してもいない)。

➃対策を色々検討し始めている。

⑤対策を色々検討してかなり詳しい状態。

⑥対策の手を打ち始めた(何らかの商品を買った)。

⑦既にお気に入りの対策のための商品があり、満足している。

⑧お気に入りの商品はあるが、「他にもっと良いものはないか」と思っている。

⑨色々使ったが結局満足するものはなかった。


 次に、商品起点の10段階分類を示す。


➀(そのジャンルの商品自体を)知らない。

➁知っているが、そこまで興味はわかず、使ったことはない。

➂知っているが、使いたくないと思っている。

➃いつかは使いたいと思っているが、使ったことはない。

⑤以前は使っていたが、今は使っていない(また使うかもしれない)。

⑥以前は使っていたが、今はやめており、今後も使う気はない。

⑦今も使っているが、良いものがあれば乗り換えてもよい。

⑧今も使っているが、可もなく不可もなく、今のところ替える気もない。

⑨今も使っており、満足しているので替える気がない。

⑩そのジャンルの商品が好きで、色々試したい。


 ペルソナ設定を行うがプロダクトにおいては、条件が多ければ多いほどターゲットは狭くなるのであり、プロダクトのペルソナのUSP(特有の強み)やベネフィットを起点に最大公約数的に設定すべきである。


 「誰に」が決まれば、「何を」を伝えるか考える。USPからメインメッセージを導き出す方法がある。このUSPは大きく4種類に分けられる。


➀「他社製品にはない便益を与えられる」or「今までになかった便益を与えられる」

➁「他社商品よりも高い便益を与えられる」

➂「実績、権威性などの付加価値がある」

➃「金銭的お得感がある」


 USPとは「世の中でうちの商品でしか提供できない価値」のことである。


 男女別の訴求軸の違いからメインメッセージを導き出す方法もある。例えば、男性は勝ち負け、女性は共感で動く等がある。


 あとは、「どう」伝えるかだ。ユーザー起点で「伝”わ”る」広告を作ことが必要で、ユーザー起点で、相手がメッセージを受け取るための仕組みを設計して作られていることが重要だ。広告は「情報伝達手段」ではなく、「コミュニケーション手段」である。


 メディアの特性を見極めて伝えることが重要で、どこで伝えるかが大切なケースもある。


 LPやメールは次の構成で伝える。

➀結論

➁否定(会話文)

➂肯定

➃自分の意見

⑤煽り(アクションを伝える)


 広告から、LPをみて、購入ボタンを押すまで、各ステップ間を違和感なく進めていく流れが切れてはいけない。


クリックボタンを

「注文する」→「試してみる」→「試してみる→」

      ×1.2      ×1.2

とする工夫で大きく売上は変わる。


 セグメントの設定においては、次のターゲットの種類があげられる。

➀性別➁年齢➂地域➃デバイス⑤曜日・時間帯⑥インタレストカテゴリー⑦サイトカテゴリー⑧サーチターゲッティング⑨サイトリターゲティング


第2部 テクニカルマーケティング

 テクニカルクリエイティブには「着眼法」と「苦情法」がある。着眼法とは他社のうまくいった方法を自社に取り入れるやり方である。一方で、苦情法はお客様からの苦情に対応するという観点の発想で、自分に足りていないところを改善するという考えに基づいた方法である。


 着眼法の分析ポイントは3つある。

➀なぜこの広告に目が留まったのか

➁なぜこの広告を読もうと思ったのか

➂なぜこの広告をクリックしようと思ったのか


クリエイティブをデータから逆算して調整する際の手順は次の通りである。


➀先にクリエイティブを見る

➁仮説を立てる

➂データで仮説の答え合わせをする

➃仮説には出てこなかった課題をデータから見つける


 次に、見るべき広告投資バランス指標は、「実績獲得単価」を「上限(最適)獲得単価」で割ることである。これが、1であれば適切。1以上採算割れ。1未満(本書では以下の表記だが、誤記と思われる)機会ロス。


 利益体質のマーケティングを行う際に5段階利益管理が重要になる。

➀粗利:売上ー原価

➁純粗利:粗利ー注文連動費

➂販売利益:純粗利ー広告費

➃ABC利益:販売利益ーABC(活動基準原価計算:商品ごとに振り分けた人件費)

⑤営業利益:ABC利益ー運営費(家賃光熱費等)


 テクニカル運用の本質で重要なのは、最も多い顧客獲得件数を最も安い広告費で獲得できるように調整していくことである。


 そこで、広告の3つの入札方式が重要になる。


➀広告の表示に対して広告費を支払う入札方式

➁広告のクリックに対して広告費を支払う入札方式

➂CV(購入や成約)に対して広告費を支払う入札方式


 ここで、➀広告を配信する➁広告をクリックさせる➂広告から購入させることをしなければならない。「広告枠の入札競争」に勝つために4つの努力が必要である。

➀入札の金額を上げる

➁広告のクリック率をあげる

➂広告をクリックしたユーザーの購入率を上げる

➃ユーザーに嫌われない”良い感じ”の広告や販売ページにする


 そして、広告配信においてクリック率とクリックしたあとの購入率の高い広告を作成したり、広告をクリックして訪れた人の購入率が高いページを作成したりするという目標を達成するために重要なポイントが4ある。

➀ターゲットのことをどれだけ理解しているか

➁広告ととび先のページはマッチしているか

➂広告・ページの純粋な質

➃広告を配信する人や、そのメディアと広告・ページがマッチしているか


 テクニカル運用分析で必要な鉄板公式が3つある。

➀獲得単価(顧客一人を獲得するのにかかった費用)の増減要因

クリック単価orCVRの増減

➁ROAS(広告の費用対効果)の増減要因

獲得単価or客単価の増減

➂獲得件数の増減要因

クリック数orCVRの増減


 ほかにも有益な情報が多数あるので、ぜひ手に取ってほしい。


紹介の書籍

ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法


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