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マティスと遠距離現在

国立新美術館にて、マティス 自由なフォルム遠距離現在 Universal / Remoteの二つの展示を見てきた。二つ以上の展示を見るのはエネルギーを奪われるのであまりしたくなかったのだけれど、抗えなかった。どっちも見たい!と言う本能に押された。

マティス 自由なフォルム

マティスは後半の人生の大半をフランスのニースで過ごしたそう。元々病弱で、大病を患い手術をした後はベッド上で過ごすことも多かったようだ。不自由な体で作品を作る中で「切り紙絵」に取り組むようになったマティス。
正直、マティスの作品を過去に見たときも思ったのだが、個人的には初期〜中期の作品が好み。しかし、マティスの病気とともにありながらも、自身のやりたいことを貪欲に続ける後期の彼の姿勢が大好きだ。
今回はそれに触れてきた。


シンプルで大胆な切り紙絵。波。好きだった。しばらく眺めた。
これも素敵だった。
全部はカメラに入り切らず。明るい気持ちになる。
照らされているような。

4×8メートル。ニース市にあるマティス美術館メインホールにある「花と果実」。今回の展示のため修復されてお目見え。

海の中のよう。

晩年のマティスが精力的に取り組んだ礼拝堂の室内建築と司祭服のデザイン。
ラストにどどーんと再現されているので、ぜひ直接見に行っていただきたい。マティスは冬の礼拝堂を一番おすすめしていたのが、なんとなくわかる気がした。
司祭服は一つのパターンではなく色々あって、自分が着るならどれかなあと選んでみた。

胸元の十字が黒なのが好き。
これはかなり好きだった。
私はこれを着ます(断言)。

身長高くなくてバランスも良くないので、私はこれを着ます!黒!
そして上にデザインが集まっているものにして、視線を上に持って行かせる作戦。十字架が主張して爆発している感じなのも好き。

これが今回の写真撮影可能な展示の中ではかなり好きだった。

この構図と赤の色味に単純で潔い黒の線、魅惑的な表情。好きだった。
写真撮影不可作品に好みの作品がとても多かった!
中でも「マティス夫人の肖像」が色も含めて心を奪われた。圧倒的な「好き」がそこにあった。

潔くて穏やか。
生命力。


ちょっと怖さも感じるマティスの作品が私は好みです。

キース・ヘリングの展示を鑑賞した時にも感じたが、命の限りを悟ってからの精力的なエネルギーはなんなのだろう。音声ガイドから流れる彼らの言葉に「わかる」と同じくらい「すごいなあ」が湧き上がる。
今回、音声ガイドは安藤サクラさん。聞き取りやすくよかったです。


素朴な美味しさ

グッズは特に購入しなくていいかなあと思ったけれど、この可愛いパッケージと美味しそうな見た目に吸い寄せられビスケットを購入。これが美味しかった!
マティスはお菓子のパッケージもデザインしていたようだけど、これがそうなのかしら?特に商品に案内書きはなく、わからないけれど、美味しかったから満足です。
私が一枚を大事に食べている向いで、一気に三枚食べ進める夫。我が家のクッキーモンスターに残りを全部食べられないようにしなくては。

マティスは法律を学んでいたが、20歳頃から芸術の道へ方向転換しているそうな。割と遅い。いや、とても遅い方だと思う。そしてそこから60年以上芸術作品を作ってきた。そう思うと芸術家としての人生の方が長い。
私にも、何かできるのではないか。残せるような評価されるようなものでなくたってもちろん良くて、自分が好きなものを続けることはみんなにできるのではないか。
マティスが絵筆からハサミに変えたように、手法を変える必要が出てきても「好き」を続けることはできるのだろう。私なんて、とか、出来るか不安、とか、そういうものは投げ捨てて私も進もうと思った。

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遠距離現在 Universal / Remote

同じく企画展のこちらも鑑賞してきた。
現代美術のアーティスト8名と1組による展示は、世界の個人と社会との距離感について考えていく展示。コロナという国境のないパンデミックを経験した社会は、人の移動は制限されても情報と資本の移動は止まることを知らなかった。「Pan- の規模で拡大し続ける社会」、「リモート化する個人」の2つを軸に、今世紀の社会の在り方に取り組んだ作品。

ティナ・エングホフ
(1957年デンマーク生まれ、コペンハーゲンに住んで活動)
「心当たりあるご親族へー」

社会保障が充実している社会では、幸せになれるのか?
デンマークでは孤独死を遂げた人で親族が見つからない時、新聞に「心当たりああるご家族へー」と死亡記事を載せ親族を探すそう。
ティナ・エングホフさんはそんな人たちの写真を撮り始め、作品として発表。
写真それぞれが洒落ている。一番最初にこの空間が好きだと感じた。孤独だったり人の気配を僅かに漂わせている写真が確かにそこにある。

社会福祉士として面白いテーマだなあと思った。社会保障の充実が幸せになれるかどうかにどのくらい影響するのか、私も考えたことがある。土台はしっかり整っているに越したことはない。でも、だからと言って一人暮らしで孤独に死んでいくことが不幸とは思わない。私は、一人で死んでいくことを迷惑とか思いたくないな。

好きな展示でした。


エヴァン・ロス
(1978年アメリカミシガン州生まれ、ドイツベルリンをベースに活動)
「あなたが生まれてから」

エヴァン・ロスさん自身のコンピュータのキャッシュに蓄積される画像データを抽出して創られたインスタレーション。
これすごかった!!圧倒される。

天井以外全部!!
上下左右見ていると、くらくらしてくる。
ビル・カニンガムを見つけて思わずパチリ。

大好きなフォトグラファーのビルを見つけて嬉しくなる。珍しくあのブルーのジャケットじゃないビル。こんなとこで会えるとは。

インターネットで見た画像や文字データが自動的に残っている。あまりにも普段たくさんのものを見ているので、きっと私も自分が見たものを覚えてないだろうな。それはある意味でどんどん流れていく水のような存在なのかな。
結局、パソコンに残っていても記憶に残っていないなんてなんだか寂しい。


ヒト・シュタイエル 
(1966年ドイツミュンヘン生まれ、ベルリンに住んで活動)
ミッション完了:べランシージ

これ、楽しみにしていた作品。映えるなあと思って写真をパシャリとした後に、その行為も含めてこの作品を完成させているのかもと思った。
ファッションの流行を作っているのは誰か、私たちは本当に自分が好きなものを自分で感じて選び取っているのか、気付かぬうちに誘導されて思い込んでいないか。そんなことを思った。
SNSで四六時中のようにファッションセレブや有名人が注目ブランドやおすすめ商品を発信している。気づくとおんなじブランドや商品を同時期に発信していることに気づく。スタイルの良いカッコ良い人たちが発信していると、なんだかよく見えてくる。魅力的に思えてくる。
でも本当にそれって欲しいもの?カッコよいの?
普段、楽しみながらも疑問に思っていることが目の前に作品として登場している気がした。


ヘッドフォンが用意されていて、映像のやり取りを聞くことができる。

私もじっくり映像を見たかったけれど、マティスの後にこの展示(8人+1組!)はボリュームが膨大すぎてこの展示ですでに疲労困憊。泣く泣く断念。

ファッションはみんなのもの。別にSNSでたくさん発信されているものが全てじゃない。街中で流行っているものが全てじゃない。でも、それらを買ったり着用して楽しむことだってアリ!
私はニヤニヤしながら、「これ本当に良いと思って発信してる〜?」と思いながら楽しんでいます。

「BELANCIEGE(ベランシージ)」かあ。くくく。面白い。よく考えたなあ。
この空間、かっこいいのでぜひ実際に見てほしい。

徐・水(シュ・ビン)
(1955年中国重慶生まれ、北京とニューヨークをベースに活動)
「とんぼの眼」

これも面白い作品だった。発想が面白い。
防犯カメラやライブカメラ、車のドライブレコーダーなどの映像をインターネットから集めて繋ぎ合わせ、若い男女が中心の映画を作成。完成するまでの過程を想像するだけでくたびれる。執念のようなものを感じる!
車の事故シーンや暴力シーンなど、これ実際に起きた出来事の映像なんだよなと思いながら見た。
30分くらい見たところで、やはりグロッキーになり退出してしまった。
悔しい。
この映画の主人公の男女は、役者ではなくてどこかの誰か。一般人。
そう思うと面白さが倍増して余計に見続けていたくなった。

他にも作品の展示は4つあり、どれも興味深い。ただ結構、いやなかなかのボリューム作品がいくつか存在するのでその辺を考慮して鑑賞することをおすすめします。
面白かった!頭の中が「面白い!」で埋め尽くされ暴走している。
「遠距離現在」という展示タイトルが洒落ている。「洒落ていること」は私にとってめちゃくちゃ重要。良い展示でした。

美術館を出た後、ミッドタウンへ駆け込みアイスアメリカーノとエクレアで休憩。
カフェインと糖分が染みた。夫としばらく無言。エクレアを食べて「美味しい」と呟き合う私たちだった。

もはや蓋はつけない。

ANTICO CAFFEが好きで見かけると入るのだけれど、もっと増えてほしい。
エクレアはチョコクリームがぎっしりで重量感あった。一口もらって満足。


ミッドタウンの敷地って広いなあ。
お花が綺麗だった。癒し。
うひょー!!!

美術館へ行く前に食べたランチ。シェイクシャックのハンバーガー!大好物のやつ。何度食べても食べ飽きない。ゴールデンブラウンバーガーか、シェイクシャックが私の中でのハンバーガーの頂点を争っている。
写真を見ていたらまた食べたくなってきた。

長々とまとまりのない文章で失礼しました。
インプットしたものを消化してアウトプットすること。
インプットは得意だけれどアウトプットが大分乱暴というか適当で勢いがすぎるのが私のクセなので、今年はそこを修正したい。
誤字脱字が多いのも、その中の一つ。あわわわわ。

さて。今日の夕飯はゴマ鯖を焼いたのと、キャロットラペ、ケールサラダ、ブロッコリーにツナを和風に和えたやつです。白ワインと鉄分プラスチーズで一杯やりながらのんびり作ります。


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