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毎日エッセイ日記・6月27日「壁あて」

ストレス発散のため、久しぶりに「壁あて」をやった。

玄関に潜む、古びた野球ボールとボロボロのグローブは、相変わらず独特な匂いを発する。

公園のデッカい壁に目掛けて、ボールを叩きつける。
「バンッ!」という音が、静かな公園とストレスの溜まった心に響き渡る。
球技は苦手だったが、9年ほど水泳をやっていたので、肩の力だけはあった。
「かい、かん」とは、まさにこのこと。

しばらくして、近くにいた三人の高校生たちが、自分を同い年だと思ったのか、声をかけてきた。
「マジ、すげーです」
そんなフランクな感じで声をかけられ、緊張してしまった自分が情けない。
年上なのに。トホホ・・・。

そんな彼らはスケボーで遊んでいた。自分もスケボーをやっていた時期があったが、一人しか持っていなかったので、すぐに飽きてしまった。
以前、高校の文化祭で昔の自分に悲しんだが、今回は少し「羨ましさ」と、自分の「年」を感じた。
童貞なのに。トホホ・・・。

結局、ストレスがいい感じに消えかけたのは、1時間以上投げ続けた頃だった。
近くの自販機で買ったアクエリアスを飲みながら、梅雨入りのジメジメし始めた空気の中、小学生時代の自分を思い出した。

友人たちがゲームしている中、ゲームを持っていない私は、公園で一人、壁あてをしていた。
今思うと、あの時の自分は「1人でいること」を「楽しい」と無理矢理思い込んでいたのかもしれない。
「寂しい」
その一言が言えないから、ずっと1人だった。だから、悩みも困難も自分1人で向き合ってきたし、運悪く、それで解決できてしまった。

最近のストレスもそうだ。
大量の荷物を、1人で運び込もうとする、引越し業者みたいだ。
しかも、1人でできてしまうと、仲間から「大丈夫でしょ」と無責任な安心を持たれるから、何かトラブルがあると、私に怒りをぶつける。

「マジ、すげーです」
あの青年くらい、フランクに声を出せたなら、筋肉痛になるまでボールを投げなくても済んだのかもしれない。

今日はもう、寝るとしよう。
そして明日は、少しだけ、「助けて」って言えるようになろう。
またストレスになったら、壁あてをしに行けばいい。

また「マジ、すげーです」がもらえたら、いいな。

END








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