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長崎の郵便配達 映画感想

つくづく映画ってやつは繊細で、深いなと感心します。新しく見たのは、「長崎の郵便配達」というドキュメンタリー映画です。長崎の原爆を取材したピーター・タウンゼントの軌跡を、ピーターの娘、イザベラが実際に日本に来て追いかける内容です。

ピーターとスミテル


ピーター・タウンゼントは元イギリス軍の軍人で、第二次世界大戦くらいの頃イギリスのマーガレット王女と恋人同士でした。しかしピーターに離婚歴があったことと、二人の年の差が16歳もあったことで、メディアの格好の餌となります。英国国教会によって二人の結婚は認められず、別れることに。周囲からのバッシングに傷ついたピーターは自分を見失いました。傷心の彼は1年以上をかけ、世界一周の旅に出ます。その時に、原爆のことを知りたいという考えがすでにあったそうで、旅の後、日本へ行き長崎で被爆をした谷口稜曄さんに取材をします。

ピーターとスミテル(映画の字幕はすべてスミテル表記でした)は取材を通して親交を深めたといいます。その取材内容をまとめたのが、「The Postman of Nagasaki」という本です。イギリス人が英語で原爆の被害を詳細に書いたので、海外の人にその恐ろしさが強く伝わった作品だと思います。買って読みます。

イザベラは父親が執筆した本を片手に、二人にゆかりのある人や場所を訪れたり、本を朗読したりします。

映画の構成


前半1時間
・ピーターの過去
・ピーターとスミテルの交流
・スミテルの原爆の記憶
・長崎の原爆の様子

後半1時間
・スミテルの原爆後の人生
・ピーターとスミテルの核兵器廃絶運動
・これからの未来のために、子孫がすること

監督は川瀬美香さん。
ドキュメンタリー映画を作成しています。
映画の中でも名前が何度か出ます。

感想


本編で、赤い自転車を漕ぐ少年がたびたび出てきます。
スミテルは原爆投下時に14歳で郵便配達員をしていました。長崎の街並みにスミテルを模した少年が出てくるたびに、胸が締め付けられる思いになります。背中の大やけどのせいで、スミテルは2~3年うつ伏せで生活していたのですが、逆に胸が床ずれでえぐれるという・・・。体の表裏がえらいことに。家族で海に行ったときに、スミテルの娘と息子はびっくりして泣き出すエピソードで涙腺が崩壊します。

被爆者の結婚事情って、あまり聞かない話題ですが、やはり難しいようで。
あの時代に結婚できないのは、社会的に後ろ指刺されやすいですよね。被爆への差別や偏見は傷が癒えても続きます。
スミテルも結婚はできないと思っていたのですが、結婚します。スミテル妻は養母に「あなたは勇気がある」と、感謝されます。被爆者と結婚する人は変と思われているのか。罰ゲームみたいな感じを、そのシーンで思いました。

スミテルはまだ苦しみます。結婚して、妻が妊娠しても被曝の影響が子供に出るのではないかと不安に陥ります。長女が少し出てきますが、健康そうです。被曝の影響って、遺伝するんですかね?汚染された土地の食べ物を食べたら体に影響はあるけれど。やはりよく分からないものは、いつの世も偏見の対象です。

今年観た映画の中で、一番深い。

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