黒髪は、医療職への第一歩
髪を染めた日、と聞くと、一番に思い出すのは大学の入学前。
人生で初めて、髪を茶色に染めたのだ。
だけど、それ以上に印象に残っている「髪を染めた日」がある。
それは、実習前に「髪を染めた日」
医療系の学生は、病院実習や施設実習の前に、髪を黒色に染める子が多い。
それも、日本人形のような真っ黒に染めたのだ。
なぜ、茶色に染めた髪をわざわざ黒に戻したのかというと、当時はそれが学校からのお達しだったから(今はどうなんだろう?)
少しでも真面目な学生、意欲のある学生、に見える髪色が、日本では黒色なのかもしれない。
当時、周りの同級生たちが「嫌だな~。」と言いながら、黒に髪を染めていた光景が忘れられない。
この出来事に名前をつけるとしたら、「黒髪騒動」がピッタリだと思う。
自分の元の髪色に戻すだけなのに、何でこんなに悲しいんだろう。
何で、茶髪のままじゃダメなんだろう。
当時の心境は、苦々しいものだった。
実習から就活まで、ほぼ1年以上黒髪で過ごした大学4年生。
卒業式の写真を見返しても、ほとんどの同級生が黒髪なのである。
だけど、就職後は変化が起きた。
4月、新卒で働き始めて、数か月間は実習前と同様黒色の髪で仕事をしていたのに、変化が起きたのは6月頃。
周りの反応(主に上司)を伺いながら、茶髪に染める新入社員が増え始めたのである。
私も、そのうちの1人だった。
他部署からクレームが来ないか、上司から目をつけられないか、ドキドキしながら茶髪にした記憶がある。
あれから、もう10年が経とうとしている。
医療職として働き始めて、暗い茶髪にしたり、明るい茶髪にしたり、茶髪の間をさまよってはいるものの、黒色の髪に染め直した事は一度もない。
一度も。
そう考えると、同級生みんなが一斉に黒髪になった、あの苦々しい思い出が、今では愛おしく思えてくるから不思議だ。
あの「黒髪騒動」は、医療職への第一歩だったんじゃないかな、と今では思う。
看護師さんが実習に出る前に、戴帽式をする。
リハビリ職を目指す学生には戴帽式は無いけれど、私たちにとっての戴帽式、医療職への第一歩は、「髪を黒色に染める事」だったように感じる。
これからは、実習前に髪を黒に染めるなんてこと、無くなるかもしれない。
元々の髪色が茶髪、という人も、納得のいかない理由で黒色に染めないといけない(そして費用は自己負担)のは、おかしいとも思う。
ただ、今、過去の私と同じように、髪を黒色に染める学生さんがいたら伝えたい。
「今は嫌だと思うけど、これから黒に染める事なんてほぼ無いし、周りも黒髪なんてこと、ほぼない。だから、その黒髪を楽しんだら良いよ。」
と。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?