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「誰よりも減点法にしばられていた」私が人を褒めるようになった理由

人と仲良くなりたいけれど、うまく付き合えない。人間関係を構築していくなかで、このように悩む方もいると思います。

今回お話を伺ったなのはなさんの趣味は、人を褒めること。なぜ、人を褒めることが好きなのでしょうか?その背景には、特別支援学校の先生として働く姿がありました。

人の嫌な部分が目に入ってしまうと悩む方は、ぜひご覧ください!

なのはなさん
1994年生まれ。愛知県の特別支援学校教諭。休職をきっかけに女性向けキャリアスクールSHElikesへ入会する。現在は職場へ復帰。Instagramでは、学校教育について発信中。(X:@kananohanashe)(Instagram:@nanohanakn

自信がないことをきっかけに人を褒めようと思った

なのはなさんとの待ち合わせは、名古屋駅の金時計

ーーなのはなさんのXを見て、気になるポストがありました。「リプをくれた人を褒めちぎる会」。これを開催しようと思ったきっかけを教えてください。

天気が悪い日が続いていて、気分が沈んでいたんです。元気を出したいけれど、誰かに元気づけてもらうより、自分が行動しながら元気になりたいと思って。アウトプットでもやもやした気持ちを発散できないかなと考えたときに、思いついたのが人を褒めることでした。

実際にやってみたら、しばらくスマホも触れないくらい疲れましたね(笑)。でも、嫌な疲れではありませんでした。適当に褒めてるんじゃなくて、全身全霊でやってたんだってわかって......。そのかわり、ぐっすり眠れました。

ーー私が元気になりたいと思ったら、推しを見たり美味しいものを食べたりします。自分で行動しながら元気になるのは、初めて聞きました。

自信がないんだと思います。たとえば「私を褒めてください」ってお願いをして、誰も集まらなかったら「やらなければよかった」と後悔するじゃないですか。でも「私がみなさんを褒めます」だったら、集まってくれるかなって思ったんです。

誰かが自分に何かをしてくれる自信がないから、自分から行動しようって考えますね。

相手を褒めることは自分を許すこと。大学時代の経験から、褒めることを意識するように

なのはなさんは、お母さんのようにひつまぶしをよそってくれた

ーー「人を褒めることが趣味」というなのはなさん。なぜ、人を褒めることが好きなのでしょうか?

ずっと、減点方式だったからです。

ーー減点方式?

私たちが学生時代に受けてきたテストって、100点満点から減点していくじゃないですか?それって、常に100点の状態じゃないってことなんですよ。自分の足りないところを探して、埋めていく。この行動を学校生活でやってきたからこそ、普段の生活にも染みついているような気がして......。

減点方式の毎日を過ごしていると、できないことを見つけるのは簡単だけど、できることを見つけるのが難しいんですよね。だからこそ、相手のできることや褒められるポイントを見つけられる人になれたら、私ってすごいんじゃないかなと思うようになりました。

ーー褒めることで、相手を加点させてあげたいんですね!

相手のためというよりも、自分のためかもしれないです。

ーーそうなんですか!?

相手を褒めることは、自分に欠けているものを許すことだと思っています。人の嫌なところやよくないところが目に入るのは、それが自分が気にしているコンプレックスだから。人のできていない部分が気になるのは、自分もできていないからなんですよね。

だから、相手のできていない部分を攻撃するのは、自分で自分を攻撃し続けることになります。それって、すごく苦しいことだと気づきました。

相手の良い部分を見つけようと意識したら、自分のことも良く捉えられるようになって。相手も自分も幸せだなと感じたので、人を褒めることが好きになりました。

ーーなのはなさんが、人を褒めることが好きになったきっかけを教えてください。

きっかけは、大学時代に学んだ動作法です。動作法とは、脳性まひ等の障害や病気によって体が動かしづらくなった方の、動かしやすい体づくりをサポートするリハビリテーション法。たとえば、抱えないと立てなかった子どもが、動作法によって支えるだけで立てるような変化があります。

私は大学から特別支援を学ぶようになり、1年生のときには動作法を勉強するために、研修へ行きました。研修をしていくなかで、「この成長には何の意味があるんだろう」と思った経験があります。

脳性まひの方々がどれだけ頑張ってリハビリをしても、世間一般の「できる」には入りにくいと感じてしまって。世の中に通じるようになるかもしれない期待を抱きながらも、これ以上は難しいんじゃないかと考えたりもしました。

でもこのときに、私が誰よりも世の中の減点法にしばられていると気がついたんです。

ーー......!

100点に近づくために頑張るのは、素敵なこと。だけど100点満点にしばられて、過程での成長を見逃すのはもったいないなと思いました。まっすぐの道を直進したら1しか進んでないけれど、曲がりくねりながら進んだら、120も進んでいるかもしれないじゃないですか。

人によって得意不得意は違うし、目指すゴールも違う。1つ1つの課題をクリアしていくことは素晴らしいと気づいたので、相手を褒めるようになりましたね。褒めることで、自分も嬉しくなるし。

ーー相手を褒めることを意識するようになって、自分自身が変わったなと思うことはありますか?

自分で自分を許せるようになりました。もともとは、「隙がない」ってよく言われていたんです。「これができない自分はダメだ」と、首を絞めることもありましたね。

自分を許すことで心に余裕ができて、やわらかくなったと思います。できないことにぶつかっても、「しょうがない」と受け入れるようになりました。

ーー自分を許すって、大事なことですね。

でも、まだまだできていないなと思っていて......。だから人を好きになることで、自分を許す練習をさせてもらっています。

ーーお話を聞いているとなのはなさんは、人への愛や感謝が強い方だと感じます。

私が感謝を言葉に出すようになった、明確な日があるんです。先ほどお話した、動作法の研修を卒業するときでした。

当時の私は大学4年生で、4年間動作法の研修を続けました。そこでサポートをしていた方の保護者のみなさんが、卒業する4年生に花束をくれる会があったんです。花束を受け取った4年生は、前に出てメッセージを伝えることになって。

私は3番目くらいに、「ここで学んだことを活かして就職先で頑張ります」と話しました。とにかく「頑張るぞ」という気持ちしかなかったので、感謝の言葉を伝えられなかったんです。

でも、隣の子が「まずはこのような会を開いていただいて、素敵な花束もありがとうございます」って話していて......。そのときに、格の違いを感じました。

自分の頑張りたい気持ちを伝えることも大切だけど、何においてもまず一言目には、感謝を伝えるべきだと学びましたね。このことをきっかけに、感謝を言葉に出そうと決めました。だから、気づかせてくれた子にはとても感謝しています。

ーー感謝の大切さに気づかせてくれた子には、感謝を伝えましたか?

実は、その子には感謝を伝えられてなくて......。

ーーそうなんですか!?

はい......(笑)。今日、連絡してみようと思います!

正直、相手を褒めるメリットはない。自分と相手がハッピーならそれでいい

なのはなさんイチオシ、矢場とんの味噌カツ

ーー世の中には、「相手の嫌なところが目に入ってしまう」と悩んでいる方が多くいると思います。そんな方が、どうすれば相手の良いところを見つけて生きていけるのでしょうか?コツがあれば、教えてください。

相手の嫌なところは自分の嫌なところでもあるので、完全に見ないで生活するのは難しいと思います。私が実践しているのは、ピントをぼかして相手を見ることですね。

ーーピントをぼかす?

相手の良いところも嫌なところも、あんまり見ないようにするんです。もはや、相手自体をぼやんと見てみる。そうすると、ちょっとだけ相手を許せるようになってくるんですよね。

あとは、自分の都合のいいように解釈します。社会に出ると、怒られて自分がつらくなったりするじゃないですか。そんなときは、私を怒った相手に対して、「お腹が痛いのかな?」「嫌なことでもあったのかな?」なんて考えます。

私が完全に悪いときもあるので、毎回ではないです。本当にどうにもならないときに、解釈の変換をしますね。

ーーでは最後に、人の良いところを見つけて褒めることに対しての、最大のメリットはなんでしょうか?

メリットという、明確なものはないと思っています。素敵な人たちに囲まれて、「なんて私はハッピーなんだ」と思える。これがいちばんですよ。

目的のためにやっているわけではないし、褒めるのに理由はいりません。相手を褒めてハッピーになり、私もその姿を見てハッピーになれる。生きていて楽しくなるので、メリットがなくてもいいと思います!


過去の経験から、相手を褒めることで幸せを感じているなのはなさん。その背景には、教師という職業も大きく関わっているのではと感じられました。

インタビューの途中では、筆者である私を褒めてくださる場面も。自分では気付けない一面を引き出してくださり、とても嬉しかったです。

相手を褒めることで、自分を許すことができる。これは、これからの人間関係にも活かしていけそうですね。相手を褒めるのは、悪いことではありません。あなたもぜひ、相手の良いところを探してみてください。


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