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「悔しさと勘違いのおかげで今がある」売れっ子ライターが15年間“向いていない”と思っていたことを仕事にするまで

「自分には向いていないから、挑戦しても無駄だ」

そう考えることはありませんか? 子どものころは怖いもの知らずで飛び込めたのに、大人になるとなぜか一歩踏み出すことをためらってしまいますよね。

今回お話を聞いたのは、フリーランスライターの仲奈々さん。

現在多くの著名人に取材を行う仲さんですが、「自分はライターに向いていない」とずっと思っていたのだそう。

そんな彼女に、「向いていないと思ったことを、仕事にできた理由」というテーマでお話を伺いました。

新しいことに挑戦したいと思いながらも、一歩踏み出せないと悩んでいる方は必見です!

【プロフィール】
仲奈々(なか・なな)さん
早稲田大学教育学部国語国文学科卒。生命保険会社、人材派遣会社、アプリ制作会社を経て、2021年にフリーランスの取材ライターとして独立。現在は著名人への取材から採用インタビュー、導入事例など幅広く活動している。2022年には自身の執筆した記事が、文春オンラインの上半期BEST記事のYouTuber部門で1位に選ばれた。(Twitter:@nanapan0728

大学で出会った“ガチ勢”に圧倒。「書く仕事」へ憧れた自分は、浅はかだったと気づく

ーー本日はよろしくお願いします。まず、仲さんがライターを目指したきっかけを教えてください。

仲さん:
きっかけは2つあります。1つ目は憧れの気持ち。どうしてかは分からないのですが、幼い頃から小説家や記者などの文章を書いている人に対する憧れがありました。

2つ目は国語の成績がすごくよかったこと。他の科目はさっぱりなのですが、国語だけは全国模試で10番以内に入るくらい得意で。これだけ成績がいいなら、憧れの書く仕事に就けるのではないかと思っていました。

それもあって、大学では国文学科を選んだのですが…新卒では、書く仕事に就かなかったんですよ

ーーせっかく入ったのに! どうしてですか?

仲さん:
学科のなかには、言葉や文章が好きな人が集まっているだけあって、新聞社でアルバイトをしていたり、自費出版で小説を書いていたり、いわゆる“ガチ”な人がたくさんいたんですよ。

そんな人たちを見ていたら、「書くことを仕事にするために、私はここまでの努力ができるのだろうか」とか、「もし努力できたとしても、なれなかったらどうしよう」と後ろ向きになってしまったんです。

ーーたしかに、早い人たちは学生時代から何かしら書いている印象がありますね。仲さんも何か書かれていたんですか?

仲さん:
全然! 好きなアーティストのファンサイトを作って、掲示板に集まってくれた人たちと話したり、日記を書いたりしていたぐらいで…。学生時代は、「誰かに何かを届けよう」と思って書いたことは一度もありませんでした。

あと、大学生活がとにかく楽しかったから、今を優先させたかったんです。大学2・3年生からインターンに参加する人もいましたけど、私は「この時期にインターンなんか参加したら遊べないじゃん!」と思っていました(笑)。

まわりと比べて私はそこまで本気じゃなかったし、考えが浅はかだったんです。

当時は書く仕事に就きたかったら「正社員で新聞社や出版社に入る」という選択肢しかないと思っていました。私が就職活動をしていた当時、出版社や新聞社はどこも人気で競争倍率も高くて。「こんな私が受けていい場所・行っていい場所じゃない」と、選考を受ける前から諦めていました。

挑戦して結果が出るのが怖かった。15年間「向いていない」を逃げ道に

ーー大学卒業後、仲さんは書くこととは関係のない会社へ就職されていますが、ライターへの想いはいかかでしたか?

仲さん:
社会人になってからは、自分が本当にやりたいことがよくわからなくなっていて…。それでもどこかに、やりたいことがあるはずだと思って、生命保険会社、人材派遣会社、アプリ制作会社…といろいろな仕事を転々としていました。

でも、本当は自分でもわかっていたはずなんです。本当にやりたいことは、やっぱり書く仕事なんだって。

ーー!!

仲さん:
…だけど、大学時代に一度諦めてしまったこともあって、ちゃんと向き合ったときに失敗して後悔するのが嫌で。まわりの人は努力して掴み取っていくけれど、私にはその努力ができるかわからなかったんです。

本当に挑戦する意味があるのか、もしライターになれなかったら時間の無駄ではないか、別のやるべきことがあるのではないか…と、かれこれ15年も引きずっていましたね

ーー15年もですか!?

仲さん:
そうなんです。今思えば、「向いてる・向いていない」以前の問題だったな、と思います。大事なのは「やるか・やらないか」のはずなのに、「向いてない」って思えばラクかもって...。

ーーあ…もしかして、「向いていない」を逃げ道の1つにしていたとか…?

仲さん:
そうそう! 「自分には向いていないから、やっても意味がない」という言い訳にしていましたね。あとは、結果が出てしまうことを無意識に怖がっていました。

挑戦したら結果が出ちゃうじゃないですか。

頑張って書いたのに全然見てもらえなかった、仕事に繋がらなかった、ってなるのをどこかで怖がってて。

そうやって蓋をして閉じ込めていたけど、それって裏を返せば、ライターのことをずっと気になってるってことだよね、と15年経ってやっと気づきました。

「悔しさ」と「勘違い」が一歩を踏み出す勇気になった

ーーそこから、改めて書く仕事に向き合おうと思ったきっかけは何でしたか?

仲さん:
悔しさと勘違い
ですね。

ーー悔しさと勘違い?

仲さん:
そうです。2020年ごろ、「何もスキルを身に着けず転職を繰り返しているだけじゃだめだ!」と思い、「SHElikes」という女性向けのキャリアスクールに入会しました。

当時はライターではなく、Webデザイナーになるつもりで勉強をしていたのですが、想像以上に難しくて、「やりたい」「変わりたい」よりも「面倒臭い」と思うようになってしまったんです。

SHElikesではほかにも広報やマーケティングなど、さまざまなことが学べるので、他のコースをザーッと見てみたりもしました。だけど、やりたい感情がそこまで強くわかなくて...。

そんなとき、無意識のうちにライターコースを最後まで残していたことに気がついたんです。

ーーついに向き合うタイミングが来たんですね…!

仲さん:
そうみたいです(笑)。それで、「どうせやるなら、ちゃんとライティングスキルを身に着けたい」と思って、課題を提出してみたら…講師が私の文章をすごく褒めてくれたんですよ。

その結果…調子に乗っちゃったんですよね。

「私、意外といける?」と感じて、そこから課題をガンガン提出していきました。そのなかで、「本筋がずれている」「ゴールが明確じゃない」といった指摘を受けることが多々ありました。それが、めっちゃ悔しかったんです。

ーー悔しい?

仲さん:
Webデザインを学んでいるときも、何度か課題を提出して指摘を受けていました。でも、そのときは特に何も感じなくて。むしろ、「修正するのが面倒臭いな」と思っていたんですよね。

でも、ライティングでは、なぜか指摘されるのが悔しかった。そして、試行錯誤しながら改善していくことが面白いと感じている自分にも気付きました。

そして、卒業課題では「ここまで書けたら、メディアでライターとして活躍できますよ」という言葉とともに合格をもらって。

「プロのライターさんがこんなにも背中を押してくれてるんだからできるでしょ!」と、最初から最後まで勘違いをさせてくれたことが、一歩踏み出せるようになった理由なんじゃないかなって思ってます

だからみんな、勘違いしてどんどん挑戦していけばいいと思いますね!

向いてないけど“好き”だから頑張れる。思い描くゴールに辿り着くために

ーーもともと「向いていない」と感じていたライターの仕事ですが、実際に仕事をされてみて、その気持ちを払拭できた瞬間はありますか?

仲さん:
えー…今でも全然払拭できていないですよ。

ーー本当ですか!?

仲さん:
「もう書きたくない!」って3日に2日は思うし、私より文章がうまい人はたくさんいるし。「なんでこんなに向いていないことを仕事にしちゃったんだろう」って思うことも…(笑)。

ーー仲さんは著名人にインタビューしたり、大きなメディアでPV数1位になったりなど、ライターとして評価されてるのに、なぜ未だに向いていないと思ってるのでしょうか?

仲さん:
ずっと自信がないんだと思います。
私、自分の素の文章を目に見える形で評価された経験が少ないんですよ。

学生時代に読書感想文で表彰を受けた経験もないし、ブログやTweetがバズった経験もない。noteの注目記事に選ばれたこともないですからね。

仕事で書いたものは評価されているかもしれないけど、それは私だけの力じゃない。取材相手がすごくいい話をしてくれたとか、編集さんが丁寧に編集してくれたとか、あとはメディアのネームバリューの力とか、いろんな人たちのおかげで評価されているんです。そこに貢献している私自身の力は、ほんのちょっとだと思っていて。

ーーそんな…!

仲さん:
でも…私は、インタビューがすごく好きなんです。

インタビューでは、自分の知らなかった世界や価値観を知ることができる。YouTubeを見るよりも、本を読むよりも、リアルな声が聞けるんです!

インタビューをすればするほど自分の視野が広がっていく感覚が本当に楽しい。そして、この情報を必要としている人にしっかり届けなきゃって思うんですよね。

だから、ちょっと向いてないなと思っても、部分的に好きなところを洗い出してから、そのために頑張るのがいいと思います。「話を聞くのが楽しいから、書くことも頑張っちゃおうかな」みたいに。

ーーなるほど。すべてが好きじゃなくても、好きなポイントを見つけていくんですね。

仲さん:
あと、見たい景色があるから、向いてなくても頑張れると思っていて。私は、Mr.Childrenの大ファンなので、Mr.Childrenのメンバーに取材するまでは、ライターを辞められないと本気で思ってます。

だから、「マジ向いてないわ」って落ち込むこともありますけど、そんなときは「ここでライターを諦めたら、私は一生Mr.Childrenと仕事することができないんだ!」という想いが真っ先に頭をよぎります。これが1番のモチベーションですね。

社会課題の解決とか、私利私欲のものでも、なんでもいいと思います。

自分が純粋に成し遂げたいと思えるものが見つかると、しんどいことがあっても「今諦めると、もうあのゴールにはもう一生たどり着けないんだ」と、奮い立たせてくれます。

ーー向いてなくても、叶えたい夢の存在がパワーの源になるんですね。では最後に、ライターは仲さんにとって天職だと思いますか?

仲さん:
書くことはすごく得意なわけでもないし、すごく上手いわけでもありません。これが本当に向いているかと言われたら、正直まだわからないです。

でも、自分の好きなものや興味のあるもの、を全部仕事にできるのがライターの魅力。他にこんな仕事ないんじゃないかな? 天職かどうかはわかりませんが、一生飽きずにできる仕事だろうなと思っています!


悔しい気持ちを大事にする、勘違いでもいいから挑戦する、自分のパワーの源となるゴールを思い描く。

「向いていないかもしれない」と諦めそうになる私たちの背中をやさしく押してくれた仲さん。

「結局やってみないとわからないし、やりつづけないとどうにもならない」という仲さんの言葉には、ライターという仕事に真剣に向き合ってきたからこその説得力がありました。

「私なんて」とマイナスにならずに、まずは行動することから始めてみませんか?

〈取材・文=鈴木敦美(@atsumin_ribon)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉

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