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第五十一話「御指南役」数馬と三の姫⑨

 うーん、よく解らないが、「ご指南役」って。桐藤キリトと柚葉からは、そんなこと、聞いたことがなかったんだけど・・・。何かが違う、のは、なんとなく、解る気がするんだけど・・・。

 あくまでも、水面下での噂で、桐藤が次代の皇帝候補だということだから、一の姫様とは、いずれ、正式に婚儀を経て、ご夫婦になるのだろうけど。柚葉は、・・・うーん、個人的なことが大変だけど、それを考えないとすると、素国に帰参した時に、王子の一人として、二の姫を、奥方として迎えるということだ、と聞いたことがある。

 でも、俺は、皇帝にもならないし、東国の皇族でもないから、そうなのか。そういう、何もない奴が、「ご指南役」とか、ちょっと、持ち上げて貰うのかな、ぐらいに思ったんだが。

「数馬、蜜餅、美味しかったね♡」

 ん?・・・まあ、いいか。無邪気なもんだ。そう、三の姫様は、何ら、変わっていない。

「あれね、頼んでも作って貰えないんだよ。その時しか、食べれないの」
「そうなんだ。東国に似たようなお菓子があったよ」
「えー、それ、儀式用?」
「ううん、粉があって、それを鍋に入れて、水と一緒に、火にかけながら、混ぜる。そうすると、ああいう、トロトロのお餅みたいになって、それに、蜜をかけて食うんだ」
「同じみたいだね」
「どこの家でも、粉を買ってくれば、作れるよ」
「いいなあ、もう、終わっちゃったから、食べられない。ああ、あと、赤ちゃんができた時と、赤ちゃんを産んだ時も食べられる。まだ、食べられるよ♡」

 うーん、微妙に、この期に及んで、すごい話題のようだが、多分、三の姫様の頭の中では、恐らく、リンクせずなんだろうけど・・・、蜜餅が食べたいだけの話だろう。・・・こんな感じで、何事もなかったように、俺たちは、今、三の姫様の私室に戻って、話をしている。

 その後、暁が、ワゴンで、雑穀スープの昼食を持ってきてくれた。最近は、こうやって、姫様の部屋で食事したりして過ごすことが多くなってきた。まあ、こんなことがあったら、ますます、一緒にいるように仕向けられることになる。実は、この一週間は、私室に帰れないらしい。

 その後は、いつも通り、姫様の興味の話、美味しいものや、流行りの歌い手のことや、皇宮の人達の話をしていた。ただ、珍しく、自分の気持を、ずっと、喋り続けるような発言が少なかった。我儘の小出しのような、それがなくて、ちょっと、姫様らしくなかった。要は、当り障りない話をしている。大概、普通なら、遠慮なく、「数馬はどう思う?」と聞いたり、やたら、褒めちぎってきたり、大好きの大安売りだったりと、もう、それが普段なので、馴れっこだったが、今日の話し方は、ちょっと、普通の日常会話っぽくて、却って、不自然だった。

 解るんだ。俺もそうだから。今、二人の話は、とても、しづらいんだ。姫様が、意識的に、話題を外してるのも、わかってる。

 その内、御相伴衆の三人が、学校から帰宅したのが解った。部屋の窓から、車を降りる三人の姿が見えた。

「数馬、皆と会いたいみたい・・・」
「え?」
「そんなお顔してる。・・・多分、すぐ暁が、今日のこと、言うから、桐藤たちに」
「ああ、そうかもな、そうなるとね、会いたくないな」
「恥ずかしいから?」
「まあ、そうだな。冷やかされるのが嫌だ」
「じゃあ、静かに、ここにいよう」
「それがいいかもね」

 窓から、そのまま見てると、案の定、暁が走り寄って、今日の顛末を話しているらしい。

「あ、やべ」

 三人が、こちらに、この部屋の窓を凝視し始めた、柚葉と慈朗がニコニコとしている。突然、桐藤が走って、建物に入ったのが見えた。一の姫様に何か、あったのかな?

コンコン

「失礼します。桐藤です。三の姫様、よろしいでしょうか?」

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