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第四十四話 憧れの君②「姫と二人の御付、図書室の待ち合わせ」

 皇宮の車が出た後に、慌てて、車に乗り込んだ。

「お嬢様、どうかされましたか?」

 なんか、ドキドキしてきちゃった。まあ、いいや。ピアノ、行かなくちゃ。

🌺🌺🌺

 お教室に着くと、ギリギリの時間で、レッスンに間に合ってよかったと、胸を撫で下ろした。今週の分を、頑張って熟せたので、次は、新しい楽章を弾けることになった。ピアノを弾いてる時が、自分のペースというか、居心地がいいんだよね。

「ああ、皇華の制服組が続くね」
「え?」
「はい、どうぞ、すぐ、入ってください、時間がないのでしょうから」
「わかりました。ご無理言って、すみません。先生」
「柚葉君、でしたね・・・えーと、まず、じゃあ、これ・・・ああ、椿君、また、来週ね」

 え?さっきの子だ。・・・ピアノに来てたんだ。じゃあ、お茶なんか、できないよね・・・。っていうか、さっき、あんな・・・。お姫様は・・・いないみたいだけど・・・。

「また、お会いしましたね」
「あ、先程は、ありがとうございました」
「ああ、クラスメートですか、成程ね。椿君、見てるなら、外から、硝子越しにね」
「ああ、すみません、そんな」
「見てても、いいですよ。僕が、何を弾くか、見たいんじゃないですか?」
「え、・・・そんな」
「できる人は、人の事が、気になるものです」
「・・・それは、言えてるね、椿君は、とても、優秀なんだよ、今、この辺りをやっているから」
「ああ、僕と同じぐらいですね」
「あ、外に出ます。すみません」

 つい、見てしまった、やっぱり。・・・わあ、なんか、似合う。ピアノ、手の動きが優雅で、私と同じ曲・・・だけど、なんだろう、やっぱり、雰囲気があるっていうのか、大人っぽい・・・。何か、私のと、全然、違うや。

「ふふふふ、いいですね。同じ曲でも、人に寄って違うとは、まさに、この事だね」
「・・・彼女は、きちんと、弾いてますよね。真面目なんですね」
「君の表現はね、大人が好む感じではあるね。機微の様な感じを含んで、繊細な感じがする・・・」

🌺🌺🌺

 「恋物」は、まあ、一応、紫辺りになると、ちょっと、買いにくい形で、市井の本屋でも売ってない。まあ、大概、家の大人の女の人が持ってて、適正年齢が来た時に、娘とか、若い子に、お古を渡すみたい。それで、それでも、読めない子は、友達に借りるんだよね。私は、そこまで見たい、とは、思わないから。紅色は、ストーリー性が強いから、内容がなかなかの割には、結構、手に入れやすい。持ってる子も多いから。私は、水色ぐらいがいいかな。ハイスクール等身大、って、言われてるけど。

 なんか、美加璃様の感じだと、もう、紫も読んでらっしゃるんだろうなあ。って、思った。雰囲気も大人っぽいし、あの御付の彼とも、あんな感じなんだな、って。これ、黙っとこう。きっと、大騒ぎになるから。

🌺🌺🌺

「ねえ、ちょっと、柚葉に聞いたんだけどさ・・・」

 その翌日、教室で、休み時間、美加璃様が、私の所に来られた。

「暗幕、椿さんに、一人でやらせた男子たちって、どの子?」
「ああ、えーと」
「そういうの、大嫌いなんだよね」

「えー、あー、あの・・・」
「ねえ、教えて、仕返ししてあげるから」

 えー、そんなこと、望んでないから。大丈夫なんだけど・・・。

「カメリアは、私の競技を助けてくれてるから。衣装の印象も、大事なんだよ。フィギュアは。動きやすさとか、あと、私の場合は、良い服、着てると、超テンション上がるから。椿さんが、困ってたら、私が護ってあげるから、遠慮なく、言ってね。で、どいつ?」
「えっと、でも、もう、大丈夫だし」
「・・・荒立てたくないって、やつね?カメリアには、迷惑かけないから。解った。今度、何かあったら、言ってね」

 あ、あの子、黒髪で、金の瞳の・・・下級生だよね。ドアの所で、誰か探してるみたいだけど・・・。

「あの、美加璃様、いらっしゃいますか?」
「あ、何、桐藤?」
「あの、一言、お伝え申し上げたいのですが・・・廊下にお出になられてください」
「・・・やだあ、また、お説教?」

 あ、あの子も、そうなの?ピアノの彼と違う子だ。あの黒髪に金の瞳の子、確か、すごい真面目で、頭が良い子って噂の。入学式の時に、新入生代表の挨拶していた子だ。美加璃様が、あの子に、なんか、言われてる。あ、教室の皆も、覗いているんだけど・・・

「桐藤、ダメだわ。特別室じゃないと、皆の前で、お小言なんて、嫌だわ」
「そんな、大きな話ではありませんよ。小声でお伝えしますから、貴女が、きちんとしてくだされば、こんなこと、わざわざ、言いに来ません。何度も同じことを、僕に言わせないでください」
「ああ、これね、だって、似合わないじゃない、こんなの、カッチリ、着た所で」
「それは、不良の着方ですから、丈が短すぎです。仕立て直しましたね。・・・カメリアにも困ったものです」
「そんなことないわよ。だって、学校からは、お咎めなしだもん。他の軍族の男子だって、ベスト脱いで、前ボタン、開けてる」
「ルールを護るということも、品格の一つです」
「んもう、面倒臭い。ランサムの方が、気楽だなあ」
「ここは、スメラギです。貴女のお父様の治める国ですから、皇帝一族として、しっかりとなさって頂かないと・・・」
「将来が云々って、言うんでしょう?でも、残念でしたー。私、柚葉とお許し出たんだから、もう、決まったようなもんだから・・・」
「・・・学校でする、お話ではありませんよ」
「そうよねえ、お姉様も、お元気だったら、ご一緒できたのにね、桐藤」
「挑発には乗りませんよ。きちんとされないと、柚葉にも、見限られてしまいますよ」
「・・・桐藤に、そんなこと言われてもね、あ、柚葉・・・」

 あの柚葉って子も、来た。お付の人って、こういう風に、お姫様のとこ、しょっちゅう、見に来るのかな?学年違うクラスなのに、わざわざ・・・。

柚「どうしました?桐藤も」
美「制服の件・・・いいよね、こんなの」
桐「柚葉、姫様を、甘やかしてはいけない」
柚「お勉強を、きちんと、やって頂いて居るのであれば、二の次では、ないでしょうか?」
桐「・・・それが、本当に、御出来になってれば、のお話です」

 あれ?なんか、やっぱり、あの柚葉って子に、お姫様、寄りかかるみたいにしてる・・・。

美「柚葉―、もう・・・」
柚「学校が難しければ、家庭教師でもいいのでは、と思いますよ、いかがですか?」
美「柚葉たちは?」
柚「勿論、学校に通いますよ」
美「うーん、・・・勉強しなくたって、もう、いいじゃない。私にはアスリートの道と、柚葉がいるんだから・・・」
桐「だから、学校でするお話ではない・・・あああ、特別室に行きましょう」
柚「いいよ、桐藤、任せて・・・」

 何、喋ってんだろう。あれ、黒髪の子から、少し離れた。二人で、廊下の端に行って。なんか、また、距離近い。

「あの二人、できてるんだろう?」
「なんか、そんな感じ」
「なんか、流石、お姫様と、お付の感じだよね」
「普通の関係じゃないに決まってるよね・・・?」

 教室から覗いている子たちも、興味津々って感じだけど・・・。

柚「成績を学年で十番以内に修める、という条件で、ということです。桐藤」
桐「・・・妥協点が低いですね。しかも、裏の、条件つけましたね?」
柚「まあ、仕方ないです」
桐「甘いな、柚葉、・・・付き合いきれない、やはり、二の姫様は、お前に任せる」
美「じゃあ、今日から、一緒にお勉強ね。お部屋で」
柚「おかしいですね。僕の方が一年なのに、お勉強を見るなんて・・・」
美「うふふ・・・」

 なんだったんだろう?とにかく、なんか、あの方達のいる空間って、特別な感じがするんだけど。

🌺🌺🌺

「おーい、椿」
「何?」
「あのさ、ちょっと、話があるんだけど」
「何?」
「後でさ、図書室に来てよ。授業終わったらさ。今日、ピアノない日だろ?」
「なんで、それを、知ってるの?」

 そういう話、あんまり、クラスでも、しないんだよね。変に、お嬢様ぶってるとか、言われるから。この子、名来ならいっていう子だっけ。確か、親は、海軍だったよね。

「つけた」
「え?」
「車でつけた」
「・・・なんで?」
「なんでも」
「・・・」
「後で、図書室で話す」

🌺🌺🌺

 帰ろうかな。男子と二人で話すなんて、なんかなあ・・・。全然、気が進まない。

「あれー、カメリア、どうしたの?」
「あ、あの、店の名前って、ちょっと・・・」
「いいじゃん、可愛いくて、あだ名だよ」

 美加璃様だ。うーん、相談してみようかなあ。

「なんか、男子に、図書室に呼び出されて」
「あー、私と同じじゃん」
「え?」
「だったら、一緒に行こう」
「・・・呼び出されたんですか?」
「うん、うふふ・・・」

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