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#5 Oblivion.

それは不意に訪れた。
何十年も待ち望んでいたかのように。
夢の中にある高揚、
喝采にも似た振動。
楽園を描いた泉に
飛び込む無重力。

景色は燦々として美しいのに、
また何か別の、
消えない光がどこまでも、
見えぬ世界の果てまで包んでいる。

何千年も待ち望んでいたかのように。

それは確かに、
躰の中枢から波紋のように広がり、
第4の表皮となり、
古えの心に灯り、
あなたを見えなくした。

イチョウ並木の陽だまり
その黄金色に気づかぬ君の
少し後ろに舞う、幸福論。

おそらく、
私は思い出したのだろう。
あなたが誰であるのかを。

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