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魚とハゲタカとトンボ

 曇り空の下、海辺を走る列車。雷鳴が聞こえてくる。姉からメールが届いた。異国で暮らしている姉、今いる街の様子について書いている。僕は旅の空。そろそろ今日の目的地に着く。
 海岸でたくさんの魚が跳ねている。漁師がそれを獲っている。この地方名産の水色の魚。名前は知らない。今日、食べられるだろうか。などと考えていると、突然魚がピタッと動かなくなる。漁師も動かない。まるで時が止まったかのようだ。しばらくするとまた動き出した。この街では時々あることらしい。旅では不思議なことも起きる。
 旅館で今日獲れた魚を食べながらテレビを見る。この街には火山があるらしい。火山ねえ……。明日行ってみようか。

 火山のてっぺんまで来たが殺風景だ。おまけに売店で買った団子を食べようとしたらハゲタカみたいな鳥に取られてしまった。日差しも強いし今日はもう帰ろう。旅館で眠っていると、夢を見た。知らない老人が、「清流へ行け」と言っていた。

 調べたら近くに川があったので行ってみた。緑豊かな川辺。トンボも飛んでいる。そこでいきなり啓示のようにある言葉が降りてきた。

「絵を描こう」

 なぜ降りてきたかわからない。でもそれ以降、僕は毎日、絵を描いている。

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