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脳卒中リハ5日間の真剣勝負!斜面に立つリーチの効果

▼ 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後遺症の初期段階における傾斜面での非麻痺側への体重移動を伴う運動の効果;無作為化比較試験

Inoue, Masahide, et al. "Effect of Exercise Involving Standing Weight Shifting to the Nonparetic Side on an Inclined Surface in the Early Phase After a Stroke: A Randomized Controlled Trial." Physical Therapy (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 本研究では,脳卒中後遺症の初期段階において,傾斜面に立った状態で非麻痺側に体重を移動させる運動が,立位バランスを改善するかどうかを明らかにすることを目的とした。

[方法] 本研究は,大学病院で入院リハビリテーションを受けている人を対象とした評価者盲検の無作為化対照試験である。脳卒中による片麻痺のある参加者(N=52)を,実験群(N=26)と対照群(N=26)に無作為に割り付けた。参加者は、実験群では非麻痺側に5度上昇した傾斜面、対照群では平坦面に立った状態で、目標指向型の到達戦略を用いて非麻痺側に体重を移動させる運動を行った。リーチングエクササイズは、1日30回、5日間実施した。主要評価項目は,Berg Balance Scaleであった。副次評価項目は,姿勢検査(静的立位,非麻痺側と麻痺側への横方向の体重移動),体幹制御テスト,体幹障害スケール,機能的歩行カテゴリー,機能的自立測定の運動項目スコアとした。

<具体的な介入内容(SuperHumanによる図)>
開始姿勢:両群とも参加者の背中を壁につけ、肩関節を非麻痺側で外転90度に設定した立位。安全性を考慮して,参加者が壁にわずかに接触することを許可
目標点の確立:まず,参加者は目標点を確認するために,非麻痺側に最大のリーチを行った。参加者は転倒しないようにできるだけ遠くまで手を伸ばすように指示され、到達した点を目標点とした。
セラピストの手を目標点としてリーチング:理学療法士は自分の手のひらを目標点に合わせる。最後に,参加者は再び理学療法士の手を目標に非麻痺側に手を伸ばし,スタートポジションに戻りました。
実験群と対照群の違い:実験群では非麻痺側に5度上昇した傾斜面で,対照群では平坦面で行った。
回数・期間:リーチングエクササイズは1日30回、5日間行いました。

図1

[結果] intention-to-treat解析により、Berg Balance Scaleでは群間に有意な介入効果は認められなかった。しかし、実験群では、横方向の体重移動について、体重の平均割合値と圧迫中心移動距離では非麻痺側に、圧迫中心移動距離とFunctional Ambulation Categoryでは麻痺側に、それぞれ有意な介入効果が認められた。その他の結果については、有意な交互作用は見られなかった。

[結論] これらの結果から、傾斜面に立った状態で非麻痺側へのリーチングエクササイズを行うことで、脳卒中後早期の参加者の横方向への体重移動能力と歩行能力を改善できることが示唆された。影響この介入は、脳卒中初期のリハビリテーションにおいて、麻痺側に焦点を当てた標準的な治療プログラムに組み込まれるべきである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

介入期間をみてぶっ飛んだ!、たったの5日間である。
そして行った介入内容としても非常にシンプルでわかりやすい。

Less is More(より少ないことは、より豊かなこと)
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ

この言葉を体現したRCTといえよう。
自分自身を恥じた。

「お前は5日間をノウノウと受け入れるようにして過ごしていないか!?、たとえば季節のように」

著者らは、時間を勝手に過ぎ去っていくものにしていない、その手で鷲掴みにして、その手でコマ送りにしている。
この論文で得た最大の果実は、「たった5日間で、これだけの効果」という参照点を得たことである。
これが、世界戦!その舞台に立つには、当たり前をそこまで引き上げる必要がある。

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