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筋痙攣を予防する経口補水液

▼ 文献情報 と 抄録和訳

暑さの中での運動時の経口補水液と湧水の摂取が若年男性の筋痙攣感受性に及ぼす影響

Lau, Wing Yin, Haruyasu Kato, and Kazunori Nosaka. "Effect of oral rehydration solution versus spring water intake during exercise in the heat on muscle cramp susceptibility of young men." Journal of the International Society of Sports Nutrition 18.1 (2021): 1-9.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 筋痙攣は、痛みを伴う不随意の筋収縮であり、運動中または運動後に起こるものを運動関連筋痙攣(EAMC)といいます。EAMCの原因は多因子性であると考えられているが、脱水や電解質の欠乏がその要因と考えられている。本研究では,運動後の筋痙攣の起こりやすさは,運動中に湧水を摂取すると増加し,経口補水液(ORS)を摂取すると減少するという仮説を検証した。

[方法] 10名の男性が、暑さ(35~36℃)の中で40~60分間のダウンヒルランニング(DHR)を行い、2つの条件(湧水 vs ORS)でクロスオーバーデザインで体の質量を1.5~2%減少させた。体積は,DHR中の20分およびその後の10分ごと,DHR後の30分に測定した。参加者は,各期間の体重減少に対して,湧水またはORSのいずれかを摂取した。2つの条件は参加者の間で逆にバランスを取り、1週間ずつ区切った。ふくらはぎの筋肉の痙攣感受性は,DHR前,直後,30分後,65分後に痙攣を誘発するための電気刺激の閾値周波数(TF)で評価した。また,DHR前,DHR直後,DHR65分後に採血を行い,血清ナトリウム,カリウム,マグネシウム,クロライド濃度,ヘマトクリット(Hct),ヘモグロビン(Hb),血清浸透圧を測定した。これらの変数の経時的変化を、二元配置反復測定分散分析により条件間で比較した。

[結果] ベースラインのTF(25.6±0.7Hz)の平均値(±SD)は条件間で同じであった。湧水条件では、DHR直後から65分後までの間に、TFはベースライン値から3.8±2.7~4.5±1.7Hz減少したが、ORS条件では同時間帯に6.5±4.9~13.6±6.0Hz増加した(P < 0.05)。HctとHbは両条件で有意な変化はなかったが(P>0.05),浸透圧は湧水条件でのみ低下した(P<0.05)。血清ナトリウムおよび塩化物濃度は、湧水条件でのみDHR直後に減少(2%未満)した(P < 0.05)。

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ベースライン(事前)、ダウンヒルランニング(DHR)直後(0)、30分後、65分後における、筋肉の痙攣を誘発するための電気トレーニングシミュレーションの閾値周波数(TF)の絶対値の変化を、湧水とOS-1の摂取条件で調べた。有意な(P < 0.01)相互作用効果が見られた。*は、ベースライン(前)の値からの有意な差(P < 0.05)を示す。#は条件間での有意差(P < 0.05)を示す

[結論] これらの結果は、運動中のORS摂取が筋痙攣感受性を低下させることを示唆している。以上より,ORSの摂取はEAMCの予防に有効であると考えられた。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

SuperHumanは、高校野球チームのトレーナーとして活動しており、最近、夏の大会がはじまった。大会当日より急激に気温が上がり猛暑、「やばいかな」と思ったら、両チームで5人の筋痙攣が起きるというハプニングになった。「筋痙攣予防の指導で、もっとできることはないか?」と探すと、「塩分濃度にこだわる」ということがあった。調べてみると経口補水液(OS-1)は、一般的なスポーツドリンクと比較して塩分濃度が3倍高い!!!今回の研究の結果、湧水では逆効果となっているため、氷で薄まったスポーツドリンクは筋痙攣のリスクを高めている可能性すらあると感じた。今回は2条件だが、濃度別の条件設定がされた研究が望まれる。